【長崎ヴェルカ】開幕から14試合を振り返ってみる
早いもので2024-25シーズンが開幕し、第8節までが終了。そして、長崎ヴェルカは6勝8敗で西地区6位でバイウィークを迎えた。
個人的にはもう2、3勝星を重ねてバイウィークを迎えれたらと開幕前に思っていたので、なかなか簡単にはいかなかったというのが感想である。しかし、新しいHCを招聘し、昨シーズンまでのスタイルとは大きく変え、新たなチャレンジの真っ最中ということを考えると、勝負時はこのバイウィーク明けの中盤にあると考える。今回はその中盤を迎える前に序盤14試合の良かった点、改善が必要な点を振り返っておこうと思う。
ディフェンスの構築から入ったシーズン
開幕SR渋谷戦からチームディフェンスの構築にフォーカスしていた。開幕序盤は相手のPnRに対し、ハードショウをみせながら、相手のリズムを崩し、勝星を重ねた。さすがに、BtoBの2試合目はアジャストされる傾向にあったが、初対戦の相手にとっては一定の効果はあったと感じていた。なにより、モーディHCが選手たちに求めるディフェンスのインテンシティを理解させる意図があったのではと思う。
長崎のスタイルを完全に打ち砕いた千葉ジェッツ
私個人的には第5節の千葉との試合が序盤のターニングポイントだったと思う。当然ながら、今年の千葉はタレントだけみても優勝の最有力であることは間違いないのだが、千葉は長崎に対し、横綱相撲で押し切った訳ではなく、長崎の弱点、戦い方を完全に理解し、完璧に遂行してみせた。長崎のハードなディフェンスに対しては、しっかりとスペースとパス角度を保ち、ホグのアイソレーション、富樫とムーニーのツーメン、早いパス回しからの原・田代・金近・スミスが思い切りの良いショットで完全に長崎のディフェンスを翻弄した。長崎のオフェンスに対しても、スイッチを多用し、千葉は1on1で激しく当たり、リムもしっかり固め、長崎が流れを掴みそうな場面でも上手くファールを使いながら終止ゲームをコントロールしていた。
長々と書いたが、千葉は対長崎対策を完全に炙り出してみせたと思っている。勿論、現時点では千葉ほどタレントのポテンシャルが高く、チームとしての総合力、遂行力が高いチームはなかなか多くはないが、長崎へアジャストするキッカケを示したことに違いはない。
千葉ジェッツとの試合から見えた改善点
【ファウル多い問題】
ディフェンスの改善点としては、ハードながらもいかにノーファウルで守りきるかという点が挙げられる。
※FPG(平均ファウル数)全体ワースト6位の20.4
特にJB、スミス、エドゥのスタメン3人のファウル数が多いことは、相手にとって狙われやすく、この3人のファウルトラブルはゲームの勝敗に大きく影響する。
千葉は広くオフェンスのスペースを取り、ホグのアイソレーションや、ムーニーは富樫とのツーメンからこの点を上手く狙っていた。ファウルに関しては決して個人の問題だけでなく、チームとしてディフェンスのローテーションで如何に守るかにかかってくる。ノーファウルで守るディフェンスの精度は中盤を迎えるにあたって注目していきたい。
【3Pシュートアテンプト少ない問題】
これは個人的に序盤14試合全体的に大きな改善点だと感じている。
※3FGAPG(平均3Pシュート試投数)
全体ワースト4位23.4
勿論、単に打てばいいというものではない。打つ前のシチュエーションを如何に作るかが大事である。コーナーへのキックアウトに対しては思い切り狙っていってほしいし、45度へのキックアウトでもフリーであればこれも思い切って狙っていってほしい。スミス、JB、馬場のカットインからのキックアウトに対し、3Pが打てるシチュエーションでもドライブを選択する場面が多いように感じる。コースが空いてるように見えてドライブを選択しても、相手のリムプロテクターがしっかりポジションを取っており、最終的にタフなショットに終わったり、ゲームクロックが苦しくなり、同じくタフなショットになる場面が多い。キックアウトパスの精度も改善の余地が大いにあるとも感じているのだが、ディフェンスのシュートチェックに対してもシューターにはステップバック、POP-UPステップからの3Pシュートを打てる選手には積極的に狙ってもらいたい。
越谷アルファーズとの試合から見えた改善点
越谷との試合に限らないのだが、チェンジングディフェンスに対してのアジャストに課題があることが浮かび上がった。オールコートプレス、ゾーンへの対処に手こずり、ターンオーバーを誘発するシーンが多く、チェンジングディフェンスに対して、なかなかリズムを掴めず、攻略の糸口を見いだせないまま勝ちを逃したのが越谷戦であった。次節の秋田戦でも感じたのだが、相手のリズムを攻略できないまま試合をし、最後に勝ちを逃した。
この要因はボールのシェアにあると思う。ハンドラーとしてスミスがボールを持つ場面が多いのだが、そのボールを持つ時間が長すぎるのは課題である。この点が馬場不在の最も大きな影響であった。ボールを長く持つということは、ディフェンスは的を絞りやすいことになる。ましてや最後のショットまでスミスとなると、さらにディフェンスにとっては守り易いことになる。オフェンスのスタートがスミスであることは問題ないのだが、ズレが生じず、オフェンスをクリエイトできなかった場合の次のオプションへの移行が上手くいってなかった。このボールのシェア問題解決として、スミスとともにハンドラーを担う選手の存在もあるのだが、スミス、JBのアイソレーションが守られた後のオフェンスのオプションの構築が必要である。ラスト3試合の敗戦はこのボールシェア、スミス以外のハンドラー不在、アイソレーションが守られた後のオフェンスオプションが機能しなかったことにより、なかなか得点が取れなかったことが原因であった。この解決のためにも前述したが、外のショットクリエイトが大きなカギを握る。外のオプションが効果的に機能すると、必然と中のスペーシングが改善され、長崎の武器であるスミス、JB、馬場のインサイドアタックがさらに効果的なものになる。中外のオフェンスバランスが構築できれば、相手はなかなか長崎のオフェンスを止めることは難しくものになるだろう。これがモーディHCが言う“ドミノのようなオフェンス”の形なのかはわからないが、近いものはあるのでは感じている。
秋田ノーザンハピネッツとの試合から見えた改善点
この試合はgame1は3P成功数の差、game2はベンチポイントの差で勝ちを逃した。越谷戦で課題であげたボールシェアについては、改善の兆しを感じれたが、この試合で課題だと感じたのは、なかなかオフェンスのランを作れなかった点である。今シーズンは現時点ではハーフコートオフェンスを重視しており、なかなか早い展開に持ち込むことは少なく、オフェンスのリズムが生まれにくいバスケットを行っている。ペースが遅いバスケットが良いとか悪いとかいう問題ではないのだが、秋田のような固いディフェンスをチームのスタイルにする相手に対し、相手の土俵で戦ってしまうのは得策ではなかった。ハーフコートバスケに重きを置きながら、相手のリズムを狂わせるためにも、場面によってはトランジッションバスケに持ち込むことの必要性が感じられた。秋田はハーフコートバスケの中でgame1では的確に3Pを射抜き、game2ではベンチポイントも含め、様々な選手がバランス良く得点を重ねたことにより、2試合ともに試合を優位に進めた。本来なら長崎がやりたかった試合展開を秋田にやらせてしまった印象である。秋田との試合ではハーフコートバスケに必要な3Pの成功数、ボールをシェアしながら得点を重ねるというバスケを見せつけられた。秋田のようなハーフコートの成熟度に加え、相手のリズムを変えるためにも、トランジッションバスケのオプションも必要であると感じた。
まとめ
ここまで書きながら思ったのが、馬場雄大の存在の大きさである。
書きながら、何度、馬場がいれば馬場がいればと頭をよぎった。
かと言って、序盤のように馬場のプレータイムに依存するわけにはいかない。チームとしてステップアップが必要なことは間違いない。ディフェンスの構築に関してはシーズン始まって1か月が経過し、ある程度の成果を感じているのではないかと思っている。
Drtg(100ポゼッションあたりの1試合失点)
長崎103.1点 全体5位
※第8節14試合終了時点
バイウィーク前の連敗に関しては、多くな部分でオフェンスに課題があったと考える。
バイウィーク明けシーズン再開後の注目選手は『山口颯斗』
山口の成長が長崎の成長に直結することは間違いなく、彼の伸びしろは他の選手より大きいだろう。そのことは先日の代表HCである、トム・ホーバスHCのコメントからも証明された。
彼がオフェンスでは中外ともにそのポテンシャルを発揮し、ディフェンスでもがむしゃらに相手に食ら突くことでチームへの貢献度が増していけば、長崎の復調の可能性は高まっていくだろう。
最後に
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