食物連鎖だから仕方なくない?|veganへの質問シリーズ⑤
今回は「食物連鎖」に関するお話です。
「食物連鎖の頂点にいるのは人間なんだから、お肉(動物)を食べるのは当然!」
そういった声をよく聞きます。果たしてこの主張は正しいのでしょうか。
この点について少し掘り下げていこうと思います。
食物連鎖とは?
まずは辞書で調べてみましょう。
生態系の中で、例えば植物プランクトンを動物プランクトンが食べ、動物プランクトンをイワシが食べ、イワシをブリが食べるというような、食べられる生物と食べる生物の、一つながりの関係。(新明解国語辞典第七版、三省堂、2016年)
絵にするとわかりやすい。
(出典:HITACHI「大切な生態系を守るお話」)
「一つながりの関係」これがポイントだと思います。食べる・食べられるの関係をたどっていくと、ある一定の場所の生物間に、一つの鎖状の関係を見出すことができます。これが一つながりの鎖のようになっていることから英語ではFood chainと呼ばれています。そしてその鎖が成立するためには、関係のある生物は同じ場所に生息している必要があります。
これを前提に考えていくと、人間は食物連鎖の中に入っていません。仮に人間が真正肉食動物でこの連鎖の中に入っているとすると、野ウサギのいる山の中に体一つで暮らし、生き延びるため生きたウサギにかぶりついても誰も驚かないはず。でもそんな人身近にいません。食物連鎖とは、人間が自然界を説明するために作った単なる単語でしかないのです。
そしてこの話題になると必ず出てくる生態系ピラミッドという単語。人間が頂点にくると思っている人が多いのですが、そうではありません。生態系ピラミッドでは下位のものほど生物量が多い傾向にあり、上位の生物になればなるほど数が減ります。仮に人間が食物連鎖に入っているとすると、人間の人口が77億という説明がつきません。(世界人口については「国際連合後方センター」HPへ)
(出典:「みどりの小道」環境日記)
人間は肉食動物?
そもそも、人間は肉食動物なのでしょうか。
まず、動物の解剖学的特徴を確認してみましょう。
【肉食動物/雑食動物】
・大きな口
・蝶番となる顎関節
・短刀のような歯
・鋭い鉤爪
・大きな胃/胃液は強い酸性
・短い腸
【草食動物】
・小さな口
・分厚い筋肉質の舌
・動かしやすい顎関節
・鋭い鉤爪がない
・肉食動物よりも小さな胃/胃液は弱い酸性
・長い腸
このような特徴を考慮すると、解剖学的な観点から人間の身体のつくりは草食動物に近いことがわかります。
「人間の体のつくりは事実上どのように見ても、肉食動物や雑食動物のそれよりゴリラや象のような草食動物のそれに似ている。口は小さく、歯は(「犬歯」でさえ)さして鋭くなく、くちびると舌は筋肉質である。顎はあまり固定されておらず、獲物にかぶり付けば簡単に外れてしまう代わりに、よく動いて横移動もできるので植物を潰したり挽いたりするのに向いている。(中略)胃の酸性はそう強くなく、これは感謝祭の頃に少し焼き足りない七面鳥を食べただけで、胃酸をものともしない病原菌によって大勢が食中毒になることからも分かる。」(シェリー・F・コーブ、『採食への疑問に答える13章』、新評論、p.161)
動物を殺す武器があれば鋭い歯は必要なく、生肉も火を通せば食べることができます。しかし、この事実は人間が動物由来の食物に合わせることができる柔軟性があることを示すだけで、人間が肉食動物であるという正当な理由にはなりません。生肉を食べる文化のある民族もいるかもしれません。けれど、人間の体の作りを分析すると肉食動物に分類することは難しいのです。
結論
「食物連鎖なんだからお肉を食べるのは仕方がない!」という意見は正しくありません。お肉を食べることはできます。しかし、「できる」ことと「本来の性質」は違います。
人間は食物連鎖に入っていません
肉食動物でもありません
したがって
人間が動物を食べるのは本来おかしなこと
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