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「料理は科学」を体感したケーキ試作~【あれもこれも使わない】ふわふわしっとりなケーキを求めて~
ーこれは、【卵・乳・小麦・ベーキングパウダー・砂糖・オイル不使用】の条件の元、私史上初めて”ふわふわ&しっとり”の仕上がりのケーキを生み出すまでの記録と感動のエピソードですー
食べ応えがない=罪悪感
今まで、どっしり・しっとり・もっちりした食感のケーキばかりを生み出してきた私。
それは、食べたら少量でも満足感を得られるから。
ケーキ屋さんで売っているようなケーキは、ふわふわスポンジのようなケーキが一般的には多い印象で、
確かにふわふわしている方がボリューミーで見栄えがいいし、
食べた瞬間のふわっと感は贅沢な感じがする。
でも、私にとっては食べ応えがなくて、食べれば食べるほどお腹が空いてしまうような感じがして、
普段家で小腹満たしに食べるには、罪悪感の塊に感じてしまうんです。
そういう理由で、使う素材が体想いなだけでなくて、”少量でも満足感の高いもの=安心して食べられるもの”という位置づけで、完全に私好みの”どっしり・しっとり・もっちり”ケーキを作っていました。
食べ応えを求めていた私がついに
ありがたいことに、私の周りでは販売のために料理の腕をあげたり、
趣味で自分の高い理想に近づけるために試作を重ねる友人や知り合いが多く、
日々、とても良い刺激を受けていました。
そういう環境にいたり、レシピを生み出す立場を続けていたりするうちに、
「わたしが安心して食べられる素材だけで、ふわふわ&しっとりのケーキも一から作ってみたい」
と思い立って、今回ふわふわケーキ作りに挑む決断をしました。
食べたい欲よりも、作りたい欲が完全に勝ったんです(笑)
試作スタート
第1:元になるレシピを用意
いつも通り、私好みのどっしりした食べ応えのあるケーキを作り、そのレシピの配合をちょっとずつ変えていくことにしました。
第2:ピーナッツバターを増やすVer.
他の条件は同じで、ピーナッツバターだけ小さじ1多めに。
焼き上がりは元のレシピのより膨らんで、もっちり感が出現。
ピーナッツバターは小さじ1でいいかも、と予測しました。
第3:玄米粉を減らす・アーモンドフラワーを増やすVer.
玄米粉-大さじ1、アーモンドフラワー+大さじ1でお試し。
仕上がりはかなりしっとりめでねちょねちょし始めてしまい、もちもちよりよくない結果に・・・。
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味はどれも同じく美味しいけれど、食感は元レシピが一番マシ。
(しっとりどっしりで、理想のふわふわではない)
第4:きな粉を減らすVer.
きな粉を大さじ1➡小さじ1に大幅に減らしてテスト。なんとここでベーキングパウダーを切らしてしまい、しばらく眠っていた重曹で代用。
するとなんととってもふっかふかになって、思わず声が出るほどびっくりしました(笑)
食感は理想のふわふわ&しっとり(ぼろぼろにならない)!
ただ、すこし焦げ気味で、重曹独特の苦味が若干出てる感じが課題となりました。
ベーキングパウダーから重曹へ
この後試作を進めるにあたって、ベーキングパウダーを買ってやり直すか、重曹に変更するか検討するために、両者を調べて比較した結果、重曹でしていこうという結論になりました。
理由は大きく4つ。
重曹は、
原材料がシンプル(⇔ベーキングパウダーは、重曹(炭酸水素ナトリウム)の他に体に有害なアルミニウムや、小麦アレルギー対応でない小麦由来のデンプンを含むものがある。もちろんよりナチュラルなベーキングパウダーもあるけれど、よりシンプルな素材を選びたい。)
少しの量で膨らむので、コスパがいい。
焼き色がつきやすい。
重曹を使うデメリットに対する私なりの対処:
やや苦みがある➡使う量を減らす、他の材料でカバー
参考論文・記事:
齊藤 紅,簑島良一,椎葉 究. "ミョウバンとその代替化合物の添加がパンケーキの膨張と構成タンパク質に与える影響". Japanese Society for FoodScience andTechnology. 2016. https://www.jstage.jst.go.jp/article/nskkk/63/4/63_170/_pdf
(2023.1.15)
※追記:
重曹は化学合成によってつくられるものだと思っていましたが、色々な商品を見ていくうちに、天然の鉱物から作られる【天然重曹】というものがあることが分かってきました。
例:
味と食感 どちらもよくするのに苦戦
第5:きな粉を増やす・重曹を減らすVer.
重曹の苦みを消すために、きな粉を第4より+小さじ1にして重曹を減らすことに。25分焼いて焦げ気味だったので、焼き時間も17分と減らしてみました。
焼きあがると、重曹を減らしても同じようにふっくら!
焼き時間は17分でちょうどよかったので、これで行くことに決定しました。
ただ、若干重曹の苦みが残り、味の改善が課題に。
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第4は入れ物が狭くて保管している間に潰れてしまったけれど、第5とふくらみ具合は同じ。
どちらも食感はよくても重曹の苦みがあって味が△
第6:きな粉を増やすVer.
重曹の苦みを消すためにきな粉を増やすことに。
きな粉の風味が強くなったからか、狙い通り重曹の苦みはほとんどない感じになりました!
ただ、今までで一番ふくらみ、逆に膨らみすぎてぼろぼろ崩れてしまい、食感改善が課題に。
第7:ピーナッツバターを増やす Ver.
ふわふわすぎるのを抑えるべく、ピーナッツバターを+小さじ1して試作。
重曹の苦みが更になくなり、きな粉の香ばしさが引き立って味は今までで一番いい感じになりました!
ただ、ふわふわすぎて形が崩れるところは修正できず、、、
きな粉は少な目の方がいいかも?と予測を立てました。
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きな粉感・ピーナッツバター感が強くなって味はよくなった!
ただどちらもふわふわしすぎて切ると型崩れしてしまう。
最後まで踏ん張ってついに・・・!!
第8:ピーナッツバターはそのままで、きな粉を減らすVer.
ふわふわを抑えるためにきな粉を-小さじ1にして、苦みを抑えるためにピーナッツバターはそのまま。
17分だと少し生っぽかったので2分追加で焼くと、崩れない程度のふっくら&しっとりさが回復しました!
ただ、重曹感が若干あるのが残念で、、きな粉の味があまり分からないという結果に。
やはりきな粉は大さじ1で、ふわふわになりすぎないようにアーモンドフラワーを少し減らすという方向性に変えました。
第9:アーモンドフラワーを減らして、きな粉を増やすVer.
きな粉の風味を最大限出すために、きな粉は大さじ1、ピーナッツバターは小さじ2に固定して、代わりにアーモンドフラワーを-小さじ1で勝負(笑)
すると、ふっくらいい感じに焦げずに焼け、ふんわりでも、ぼろぼろ崩れずにしっとり程よく弾力があっていい感じになりました!
味も苦みはなく、きな粉とピーナッツバターの香ばしさがあって、おいしい。
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第8は食感がかなりいいけれど、重曹の苦みがあってきな粉か何なのか分からない味。
第9は第8よりふわっとしているものの、崩れないしっとり感で、味がよくなった。
完成…!!
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最後の最後まで妥協せずに試作を重ねて、
【砂糖・オイル・ベーキングパウダー・卵・乳製品・小麦不使用】のきな粉ミニパウンド が完成...!!!
ふわふわでも程よいしっとりさがあって、ぼろぼろ崩れず、口の乾燥もそこまで気にならない。
香ばしいきな粉味で、とてもほっこりできる仕上がりになりました。
まさに「料理は科学」
私が安心して食べられる素材だけで、今まで作ったことのなかった【ふわふわ&しっとり】のケーキが作れたことは、とても貴重な経験となりました。
カフェや友人作の焼き菓子を今まで食べてきて、
これはいい感じ!これはちょっとな...というのをいろいろと試してきた経験が、このレシピ作成に活かせたなと実感しています。
そして、小~高校で習った科学の知識(特に重曹(炭酸水素ナトリウム)と酸の反応)が、何年も経ってから料理という形で活かせて、なんだか嬉しくなりました(笑)
今までレシピ作成は、自分の勘だけで進めてきましたが、
今回は、味と食感を理想のものにするために、重曹やアーモンドフラワーなどの素材の特徴を調べて、配合を考えて、、、という過程を初めて踏みました。
まさに料理は科学だなと、ようやく腑に落ちた感覚があります。
※追記:
試作などを進めるうちに、
アーモンドフラワー→ココナッツフラワーに変更することに。
詳細は⇩
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