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世界農業遺産の国内認定の父!武内和彦先生に聞くGIAHSの意味と背景


世界農業遺産の日本地域認定の父!武内先生に、カレンダーをお届けして、忘年会でした。


能登の里山里海は、世界農業遺産の国内認定第1号。
その背景には、武内先生が上級副学長を務めておられた国連大学のOUIKという石川金沢ユニットが
石川県にあり、能登での活動があったことも要因です。


武内先生は、現在、地球環境戦略研究機関(IGES)という公益財団法人の理事長をされています。

2024年12月末、新橋のとある和食やさんにて

以下の記事は1年前、日本農業新聞の新年号で、
世界農業遺産の特集をしたときにインタビューしたものです。

サスティナビリティ学の第一人者で、国連食糧農業機関(FAO)が認定する「世界農業遺産(GIAHS)」を、先進国で初となる日本にもたらした武内和彦先生に、ジアスの意義や持続可能な農業について聞きました。


1年前の日本農業新聞2024,1,1掲載

小谷)
国内ではみどりの食料システム戦略が始動するなど、環境と農業の両立が重要になっています。
持続可能な農業とジアスの関係は。
武内)
「持続可能」という言葉は農林水産業から生まれました。資源を枯渇させず次の世代につなげる収穫の仕方です。
その考え方が、2012年のリオ宣言で掲げた「持続可能な開発目標(SDGs)」といった
昨今の環境と開発を考える下敷きになっている。GIAHSはその食糧・農業分野の位置づけとしてできた経緯がある。
小谷)
農業人口が減る中で、国内では大規模化を進めていますが、GIAHSジアスの認定地域は、これとは真逆の考え方で、
伝統的な農業システムを評価しているのですね。

武内)
 化学農薬・肥料の多投入による大規模化・大量生産は、砂漠化などの土地の劣化を引き起こし、地球規模で問題視されている。
 一方、GIAHSの価値観は目先の効率や経済性ではなく、家族農業中心の伝統的なシステムが、土地を守り農業を持続可能なものとしていることを重視している。
 ただ、守るだけがジアスの主旨ではない。「遺産」といえど、伝統に固執する必要はなく、スマート農業の先進技術こそ、伝統農業に活用して、細やかに土地を利用し続けることが重要だ。
 圃場整備による画一的な大規模化ではなく、コミュニティの維持と拡大が地域の維持に有効になる。
「ニューコモンズ」と呼ばれる、開かれた社会が農村を支える考え方です。
熊本の阿蘇が良い例で、畜産農家だけでなく多数のボランティアが広大な草地の野焼きをサポートしています。

小谷) 
 農業はどうしても経済性が優先され、環境は後回しにされがちです。
これからの農業・農村の目指すべき方向はどういうものでしょう?

武内)
「環境を大事にした農業は儲からない」という社会構造は変えなくてはいけない。
トキと共生する新潟・佐渡の認証米のように、生きものを育む農法に変えて環境を守ることで、経済にメリットが生まれる仕組みが必要です。
環境に配慮した農産物のブランド化は、輸出にも有利に働きます。
 環境を守ることから、グリーンツーリズムにつながり、そこから地域の応援者が生まれるきっかけにもなる。
その場合は、従来のマスツーリズムではなく、少人数が持続的に長期滞在してくれる旅が望ましい。

小谷)
 昨年は兵庫や埼玉で新たにジアスの認定があり、国内の認定地域は15地域になりました。認定がもたらす効果とは?

世界農業遺産カレンダーを持つ武内和彦先生

武内)
 日本には、細やかな自然のひだのもとに、農林水産業が成り立ってる。これは世界的に見ても珍しい。
私は、生産者の皆さんには誇りを持ってもらいたいと考えている。
ジアスの認定がその地で農業を営む励みになれば喜ばしい。
 認定によって、地域を守る意識や愛着や誇りが生まれ、コミュニティが広がり、
専業農家も兼業農家も、多様な参加者も、みんなが地域を守る一員であり続けてほしい。
(敬称略)
武内和彦 たけうち・かずひこ
【プロフィル】
公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)理事長。東京大学未来ビジョン研究センター特任教授。
専門は、緑地環境学、地域生態学、サステイナビリティ学。

短いインタビューでしたが、いかがでしょう!?
フェアで、地球にも社会にも、すてきな考え方が、国連が認める世界農業遺産なのです。


永田明さんと筆者

永田明さんは農水省から国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)で
世界農業遺産の研究等にあたり、現在は、
東アジア農業遺産学会(ERAHS)日本事務局」のアドバイザーを務め、
国内外の農業遺産の応援や普及をされています。

オーストリア、インドネシア、サントメ・プリンシペの3地域が世界農業遺産に認定 | 食べる | 連載コラム「エコレポ」|| EICネット『エコナビ』EICネット エコライフ「エコナビ」は、エコ生活に取り組みたい人のための情報案内・交流サイトです。連載コラム、検定、エコライフQ&A、ニュース、イベントなど

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オーストリア、インドネシア、サントメ・プリンシペの3地域が世界農業遺産に認定
サントメって、武蔵野の三富新田と同じ響き!
これは何か運命を感じますねー!


武内先生、イヴォンさん、永田さんと筆者

武内先生、イヴォンさん、永田さんと世界農業遺産パーティーでした。
イヴォンさんは、もと国連大学研究員から現在は民間で生物多様性などの評価をし、
農水省の専門家会議の委員も務めています。

いま、国ではようやく「みどりの食料システム戦略」ができて、
オーガニックを進めようという動きが増していますが、
国連、FAOが推奨する世界農業遺産の考え方は、地球規模で
食料問題、環境問題を包摂した考えで、世界中の科学者や国際会議の合意で進んでいるものです。
世界農業遺産に認定されている地域は、中山間地の険しい地形や
小規模な農家が多いですが、じつは国連が認める、最先端の農業システムがそこにあるということです。

ベジアナあゆみ

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