生物多様性を五感で体験!!ぶどう園の生き物調査ボランティアに参加して、 小さな虫の命に感動したり考えたりした
世界農業遺産に認定されている山梨県、峡東地域へ行ってきました。
9/14〜15、環境NPOアースウォッチジャパンによる果樹園の生き物調査に1泊2日で参加したのです。
JR中央線、山梨の塩山駅に降り立って、車で牛奥みはらしの丘へ。
これが甲府盆地か~!
左側にこんもりと見えるのが塩ノ山、標高556m
世界農業遺産「峡東地域の扇状地に適応した果樹農業システム」、
峡東地域では、ぶどう、桃、スモモなど様々な果樹園があります。
扇状地の地形や条件に合わせてつくる品種も様々、小規模な家族経営によるモザイク景観が特徴です。
画一的なモノカルチャー農業とは違い、多様な適地適作が保たれていることが、農家の収入安定になり、
地域で暮らしを営む強さ(レジリエンス)になっています。
いまはぶどう収穫の最盛期!
牧丘町は巨峰の里として知られます。澤登さんの果樹園では、
先代から続く研究者兼生産者であることから、オリジナル品種を多数栽培しています。
果樹の多様性に加えて、峡東地域が世界農業遺産に認定された大きなポイントが「草生栽培」。
その名の通り、雑草を生かし、管理しながら栽培する地域資源を活用した農業の方法です。
近年、アグロエコロジーの観点から注目されている「草生栽培」が地域の生物多様性の保全と密接に関係していることが明らかになっています。
しかし、果樹園に「どんな生物がすんでいるのか」、「生物たちがどのように関わりあってくらしているのか」については、まだまだよくわかっていません。
アースウォッチ・ジャパンでは、環境問題を誰か任せではなく「自分ゴト」にするため、
研究者の調査と市民をつなぐプログラムを開催しています。
今回は山梨県の地域自然財産研究所代表、生き物調査技術者の篠田授樹先生の調査に同行。
昆虫採集
①網ですくい取るスウィーピング法
《sweeping=掃く》草原などに住む昆虫類を採集するのに、捕虫網を横や縦に払うように使う方法。
②灯りに集まる虫を採集するライトトラップ!
道具はいずれも手作りします。
道具づくり、これが重要らしかった。
クリアファイルをカットしたようなものに電池式の小さなライトを取り付けて、その下にエタノールを入れたコップを吊り下げる。
照明に集まった虫が、揮発性のエタノールによりフラフラとコップの中に集まる仕組み。(かな)
③ベイト(bait=餌)トラップ 餌で誘引する方法
地上を歩き回る昆虫を採集する方法で、
1,合い挽き肉
2,さなぎ粉(釣りに使う餌)
3,何もなし を入れておく。
周りに一味唐辛子をまいておくのは、鳥獣害防止。
昆虫採集するつもりで仕掛けた罠のニオイにまんまと獣たちがやってくるのを防ぐため。
虫を採集すると一口に言っても、いかに効果的に確実に採集するには、
虫の動きを知ることと、自然界の動きを把握しておかないとうまくいかない。
一晩おいて、明日の朝、確認するのが楽しみー!!
が、小さい虫なのでほとんど採集できたように思えない…
ですが、10回ぐらいはいては、エチルアルコールの入った袋の中に網を逆さまにして入れていきます。
見えないけど、いるんだよ。
採集を終えて、
廃校になった牧丘第2小学校の教室を借りて、顕微鏡で同定します。
葉っぱやゴミを取り除いてピンセットでシャーレに並べると、めちゃくちゃいました。
しかも、わたしは、目に見える虫をとることに執心してしまい、バッタを多く集めてしまった…。(反省)
大事なことは数の多さではなくて、目に見えない小さい虫、その種の豊富さなのだ。
これを顕微鏡で見たら、びっくり!
学校時代も特にまじめに見た記憶もないので、
真剣に顕微鏡に向き合うのは初めて!
目ではほとんど認識できない黒い点のような虫を顕微鏡で見るとめちゃくちゃ羽や目や手足、身体、いろんな特徴を持っていることがわかり、感動と驚きと発見いっぱい。
夢中になって、無心になって虫を見た。
触覚、手足の角度、複眼、口ばし、
そういう細部を認識すると、自ずと、ああ生きてるんだな、命があるんだなということに気付かされる。
見えなかったものを自分の目で確めると、
気づかなかったミクロの世界がイキイキと確かに存在している事実に気付かされる。
そしてそのための道具の重要性も知った。
顕微鏡すごい。
自然界の真理を明らかにするツール。
科学的な解明は、明白な事実を目の前に突き付ける。
昨日の先生もおっしゃっていたが、地球上にはわかっているだけで少なくとも150万種の生き物がいる。
そのうち虫が半分~3分の2を占める。
これはわかっているだけの数であり、つまりそこから言えることは、
人は虫から逃れられないということ。
一見どんなに見えなくてもそこには無数に存在すると、レクチャーしてくださった。
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野生生物種の状況をみると、地球上に存在する種の数は500万〜1千数百万種といわれており、3,000万種を越えるという専門家もいる。生物学上種として記録されている種の数は、150万〜170万種であり、多くは同定されていない未知の生物種なのである(第1-1-6表)。環境白書より
顕微鏡で小さな命を認識して改めて考えたのは、
一つ一つ見えない虫を調べて同定(分類)することは重要だが、
だからこそ、同時に人間の想像力の重要性も考えた。
見えないものの存在を認めるという想像力を。
見えぬけれどもあるんだよ、
見えぬものでもあるんだよ。
金子みすゞの世界。
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そのほか感想メモ
先生によると、田んぼの生き物調査は「虫見版」があったり(宇根豊さんの功績か)
全国的に統一されているけれど、
農園、畑の生き物調査はそういう標準がないそう。
確かに、条件が違うから標準化できないのかもしれないが、
生物多様性をはかったり比べるものさしを決めることは今後必要ではと思った。
気になってぐぐると、
市民参加型昆虫調査「緑の国勢調査!みんなで虫(むし)らべ2024」
こんなのが出てきた。
まだ参加は少ないようだけれど~。
いずれにしても市民参加っていいね!
市民参加型昆虫調査「緑の国勢調査!みんなで虫(むし)らべ2024」説明会の開催について
そのほか
無農薬×草生栽培の農場(試験区)の虫の多さを知るには、比較対象が必要というわけで、
慣行農法の果樹園(対照区)でもエサのトラップとライトトラップをしかけたのだが、
コップを土に埋める時、慣行の果樹園の土がカチカチに硬いことを実感した。
夜の懇親会で感想を言い合ったが参加者からも土の違いを感じたという人がいました。
また澤登さんの農園では
オリンピア、ピアレス、サフォークレッド、京秋、ブラックオリンピア、国立シードレス、多種多様なぶどう🍇
農家によって農法もさまざま。
自分とは違うやり方とどう折り合うか。
いろいろ考えたり発見がありました。
澤登ファミリーは
祖父の代から世のため人のために研究、育種改良、生産をしてきたおうちですが、芳秋くんとショウくんの働きぶりにも感動した。
親の仕事の手伝いというやらされ感ではなく、
自分が関心あるから主体的にやっているようだった。
ここに強さがあると思えた。
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ご一緒した美江さんから感想
ミクロの世界に虫たちが生きていて、生態系の仲間として存在していることに感動しました‼︎
イヴォンさんからの感想
すーーーごっく楽しかったです!
出会った皆さんもみんなすごい熱い思いを持つメンバーで、とても感激し、勉強になりました!
そして虫が愛しく思えるようになったのも今回の大きい収穫です!
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まさにミクロの世界!
微生物や生物多様性、言葉では知っていたつもりでもこの目で実感、体感すると俄然、理解が深まり、見方が変わりました。
休憩時間のトークでも少し話題になったのですが、
農園の生態系については、まだまだ知られていないことだらけ。
私たちが良く知っている例では、
野菜にテントウムシがいるとアブラムシを捕食してくれる。
アブラムシは害虫であり、テントウムシは益虫である。
でも無数の虫や生物、さらには微生物の世界になると、その捕食や食物連鎖の関係は
1対1のわかりやすい関係ではない。
もっと複雑にからみあっている(複雑系)。
そういえば、この間アグロエコロジーを題材にした「シン・オーガニック」(農文協)にも書かれえていたが、
創発特性というものがある。
これは、一つの個体では発揮しない特徴が、個体群になると現れるというもの。
・・・
アースウォッチは環境問題を考える国際的なNPOで、アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、インド、日本にあります。
アースウォッチジャパンでは、環境問題を誰かが解決する問題ではなく、地球に生き、社会に関わるわたしたち一人一人が「自分ごと」として当事者意識を持つために、
研究者の調査に、市民が参加するプログラムを提供しています。
研究者の話を聞き、実際に調査に参加すると、どんな環境が人々や自然にとって望ましいのか、人間にとって自然とは何か、など改めて考える場になります。
Earthwatch_Japan自然と共存する社会の実現をめざして
今回は、山梨のぶどう園でしたが、世界農業遺産の静岡の茶草場や湿地の生き物調査など様々なプログラムが目白押しーー^^
どうぞサイトをご覧ください♪
思ったこと記録しておこうと思ってき出したら膨大になってしまったーー。
ベジアナ・ぶどうアナ あゆみ
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