⑥ドル建てがいいって聞くけど?
株式・投資信託・不動産・FX・・・資産運用と聞くとそれだけで難しそう、どこから手を付けるのか入り口すら分からない、貯金していればいいっしょ!そんな意識を持つ方が多くいるかと思います。プロではないこその素人目線でその入り口レベルの知識を共有します。第6回目は「為替リスクとドル建商品の特徴」です。
#6 為替リスクとドル建商品の特徴
ドル建て運用って何かカッコいい
「ドル建の商品で運用している」と聞くと、なんかすげー!詳しそう!って聞こえると思います。今回は、ドル建の商品を買うことで生じるリスク、すなわち為替リスクと、ドル建商品を買うメリットについて説明します。
為替リスクとは?
為替リスクとは、円と外貨の為替レートの変動により、外貨建ての資産価値が減ってしまうリスクを言います。
例えば日本で製造した1個1,000円の商品をアメリカで販売するケースを考えます。売買が掛で行われ、1か月後に入金されることとします。為替レートを1ドル105円とした場合、1個1,000円の商品はアメリカで「1,000円÷105円=$9.52」で購入されます。売買の後円高が進み1か月後に1ドル100円となった場合、売買で得られる金額は「$9.52×100円=952円」となり、48円損をしてしまいます。すなわち、円高によって売掛金という「外貨建て資産」の価値が減ってしまったのです。
円高(ドル安)・円安(ドル高)の概念は、「ドル」を「商品」と見なすとよく理解出来ます。
$1=80円:「$1」という商品を80円で買える=「ドル」という商品が安い=ドル安・円高
$1=110円:「$1」という商品を110円で買える=「ドル」という商品が高い=ドル高・円安
上記の例で言えば、80円で買った「$1」という商品を110円で売ることが出来たら、30円得をします。すなわち、ドル建て商品を円高の時に購入し円安の時に売却することで、得をすることが出来ます。逆に言うと、ドル建て商品を円安の時に購入し円高の時に売却をすると、損をしてしまいます。そして難しい点が、将来が今より円高になるか円安になるか、今が相対的に円高なのか円安なのかは誰にも分からないということです。従って、ドル建て商品を購入する場合は、常に為替リスクの影響を受けることを理解する必要があります。
ドル建運用の特徴
ドル建て運用に為替リスクが存在する点は理解出来たと思います。ただ一方で、日本だけでなくアメリカや欧州、新興国など海外に投資しておければ、万一日本経済が悪化し投資に損失が出ても、それ補ってくれるかもしれないという意味で、外貨資産を保有しておくこと自体がリスク分散にもなります。
また、リスク分散以外の意味でドル建てがいいという声を聞く理由は、通貨が円かドルかという問題ではなく、投資対象が日本か海外かという比較によります。
以下はマネックス証券が作成した1993年~2015年の米国株・日本株の変化率を表しています。20年間日本株はほぼ横ばいである一方、米国株は一時期下落はするものの、一貫して右肩上がりに成長を継続しています。1993年に日本株に投資してい場合は利益がほぼ得られていない一方、1993年に米国株に投資をしていたら、資産は約4.5倍に増えていたことになります。
バブル時代であれば世界の時価総額上位を日本企業が席巻しており、日本企業への投資は非常に魅力的であったと思います。ただし、現在は時価総額上位10社に1社も日本企業は入っておらず、アメリカ企業・中国企業が上位を占めており、投資対象としての魅力の変化はお分かりになるかと思います。
経済成長と為替の関係
海外には一般に日本より経済成長を期待できる国が多くあります。一般的に、投資する国や地域の経済が成長すると、その国の通貨の価値は上昇する、すなわち円安になるといわれています(厳密には、インフレ率が低い状態で経済成長がすると、との条件が付きます。インフレについては第7回で触れます)。もしも仮に今より将来円安になるならば、ドル建て商品を円高の時に購入し円安の時に売却することとなり、得をすることが出来ます。
結論
従って、ドル建て商品を購入するかどうかは、まず為替リスクを正しく理解していることを大前提とし、自分はどれだけのリスクを許容できるか(リスク選好)を考慮し、未来の経済の変化を自分はどう見るかに基づいて決定する必要があります。
次回は、「貯金はインフレに弱い」と言われる理由が何か、インフレ/デフレと資産運用の関係について書いていきます。
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