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02_4M. 第二の扉 「能力」10要素



成果を出すために必要な「能力」には、細かな要素がたくさんあります。それを大まかにグルーピングして、下表にまとめました。まずは、「右脳、左脳、対人力」について、どのようにそのグループに到達したかを説明します。

オーソドックスに時間軸で切り分けます。成果に至る段階で分けると、1) 状況を把握して、2) 実行する。多くの場合、自分だけで完遂できないので、 3) 人を巻き込むことも追加します。そうすると、能力は大きく「頭の使い方」と「対人力 (ヒューマンスキル)」の2つに分けられます。さらに頭の使い方は、主流となる理詰めの論理的思考「左脳」と、直感的な思考「右脳」に分かれる、という構造です。最終的に、頭の使い方と対人力を、10要素に分けました。

「能力」10要素

左脳

次に、論理的思考「左脳」について説明します。左脳は、複雑な状況を解明するための「分解する力 (統合する力も含む)」と、自分が正しいかどうかを検証するための「検証する力」に分類できます。また、「分解する力」は、why? と要因を横や下方向に掘り下げていく「具体化思考」と、一見異なる事柄でも共通する言葉でグルーピングし、物事の本質に向かって横や上方向にまとめあげていく「抽象化思考」に分類しました。

この分類を書店で見かけるビジネス書のレベルに落とし込むと、以下になります。「具体化思考」、「抽象化思考」、「検証力」はそれぞれが独立しているのではなく、互いに連携しあう関係です。「VEGA's 自己分析」で行った作業でも、この3つを互いに行き来させて作りました。

具体化思考で「なぜ」好きか/嫌いかの理由を掘り下げ、抽象化思考でその理由は結局どういうことなのか簡単にまとめる作業をし、本当にそうなのか、違う理由があるのではないかなど検証力で精度を磨いていく。例えると、具体化思考、抽象化思考、検証の3つの機能を備えた装置に、ある問題を入れて何度も混ぜ合わせると、問題の本質だけが出てくる、そんなイメージです。

  • 具体化思考: フレームワーク思考、ロジックツリー、業務フローなど時間軸で切り分けて問題を整理

  • 抽象化思考: グルーピング、ラテラルシンキング、俯瞰力、応用力(一般化)、本質を捉える力

  • 検証: クリティカルシンキング

左脳の要因

3つの中で最も難しいのが「抽象化思考」です。Katz'sモデルのconceptual skill (概念化能力)に相当し、マネジメントの上位に行くほど比率が高くなることからも裏付けられます。中々身につかない「抽象化思考」に対し、本編では複数の具体例を用いて説明しています。「VEGA's 自己分析」のグルーピングのほか、現在行っているビジネススキルのグルーピングも抽象化思考です。他にもいくつか具体例を使って説明しているので、導入編 テーマ別「抽象化思考を磨きたい方」を参考にしてください。

抽象化思考とは、具体的な事象や情報から共通する特徴や本質を抽出し、より一般的な概念や原則にまとめる思考プロセスのこと。このプロセスを通じて、個別の事例を超えて広く適用可能な理論や概念を構築することが可能になる。

左脳を使う場合の注意点

左脳を使う際、注意すべき点が2つあります。1つ目は自分なりの解釈または行動提案を加えること。例えば、休日を返上して徹夜で調べた分析結果を上司に報告しても、「それで何が言いたいの?」と返される場合があります。重要なのは、単に事実を報告するだけでなく、実際に行動につながる提案をすること。つまり、事実を分析し、その解釈を示し、具体的な行動提案をすることが大切です。

「what -> so what -> now what (何があって、それがどういう意味なのか、これからどうするのか)」という一連の流れを頭に入れて、自分なりの解釈やインサイトを磨くことをお勧めします。若い頃は精緻な分析にとらわれがちですが、その失敗も貴重な経験となるため、積極的に挑戦してください。

2つ目は、事実と意見 (解釈・行動提案) を分けること。よく使われる例が、空・雨・傘。文章を書く場合や、話をする時に、「事実」はこうで、私の「解釈」はこう。だからこういうことをしたほうがよいのではないか「行動提案」など、小見出しをつける訓練をするとよいでしょう。

  • 空: 空が曇っている 「事実」

  • 雨: 雨が降りそうだ 「解釈」

  • 傘: 傘を持っていくべきだ 「行動提案」


右脳

右脳は、理詰めで一歩一歩進んでいくアプローチとは異なり、一気に飛躍して「ワープ」するイメージです。一番分かりやすいのが、将棋棋士 羽生善治さんの説明です。1行でまとめると、若手の棋士は理詰めの左脳タイプに対し、ベテランは右脳タイプです。

若手は、簡単な一手を指すにも数百もの膨大な手を読んで指すが、ベテランは勘でパッと見当をつけて指す。パッパッと指す手には邪念がないから、基本的に悪くない。全体を判断する目、大局観、本質を見抜く力、ばらばらな知識のピースを連結させる知恵といってもいい。逆にいうと、余計な思考を省き、近道を発見するようなもの。その思考の基盤になるのが、勘、つまり直感力や感性。直感の7割は正しい。・・・中学の図形問題では、補助線がひらめかないと解くのが難しいが、将棋もこの補助線のようなひらめきが浮かぶかどうかが、強さの決め手。・・・・将棋を通して、知識を知恵に昇華させるすべを学んだ。

先ほどと同じように、書店で見かけるノウハウ本レベルに落とし込むと、以下のようになります。特に私が習得しなければならないのは、洞察力や先見性の領域なので、第四の扉 「先見性・洞察力」で触れます。

右脳の要素

一方で、「クリエイティブ」と声高に叫ばれますが、その殆どは既存の組み合わせにすぎません。伝説のコピーライターに直接聞いたこともありますが、ポイントは「いかに相反するものを組み合わせるか」とのこと。最近では人間の創造性の壁を越えて行く存在としてAIが脚光をあびていますが、それが何時になるのか、興味津々です。

直感

  • 仮説思考: 仮の結論から逆引きして仮説を立て、検証して「直感」の精度を高める (推理小説や刑事ドラマなどで犯人を特定していく妙技)

  • 洞察力: 複雑に入り組んだ要因から、悪手を除いて数手に絞り込む感覚 (最初からゴール付近にたどり着く一種のワープ、知識を知恵に昇華させる能力)

  • 先見性: かすかな予兆から将来起こりうることを察する

Idea (クリエイティブ)

  • Creative thinking: 人間の創造性は過去の経験のパターン化と組み合わせが殆ど。そのため、東大 松尾 豊 教授いわく、「ChatGPT以後のAIの方が、はるかに創造的」とのこと。

同様に実行の段階では、以下のような実行力と適応力が必要です。

  • 最適化力: 様々な制約条件下で最適解を見つけ出す力、変化に対応できる力

  • 実行力: プロジェクトマネジメント、リスクマネジメント

右脳の留意点

対人力

人を巻き込む段階で必要な「対人力」は、主に以下の3つ、聞く、伝える、調整する力です。この領域でよく受けた質問、「コミュニケーションがうまくいかない場合の解決法」と、「プレゼンする際のコツ」については、第七の扉「ミュニュケーション編」で説明します。

  • 傾聴力: 相手から聞き出す力 (話の内容は相手7:自分3, 共感的理解、無条件の肯定的関心)

  • 伝達力: 自分の言葉で伝える力、相手の心を打つ力 (論理的表現力+相手への感情配慮力)

  • 利害調整力: 交渉力や関係構築力も含む (理屈Gapと感情Gapの最適化)

対人力

お坊さんの傾聴力、その正体とは・・・「無条件の肯定的関心」

相手の話を聞く達人にお坊さんがいます。直接話したことはありませんが、テレビの対談などを見ると相手が自然と吸い込まれ、何でも話してしまうブラックホールのような吸引力があります。その吸引力の正体は、どうやら「慈悲」。その土台が、「相手のことは分からない」ということ。だから分かろうとする、想像する、全部分からなくても何かは分かるだろう、分かりたいと思うこと。そこに慈悲の核心がある、とのこと。

自分がすべてを理解しているという態度では、愛情があるとしてもあつかましさが残ります。相手に教えようとする姿勢では、相手はなかなか心を開いてくれません。しかし、分からないことを教えてもらおうとする受動的な姿勢であれば、相手は心を開いてくれる。禅僧 南直哉いわく、「『分からない』ということが、理解しようとする基本でしょ。」

この考え方は、私の子供にも有効で、会社の関係者や部下との信頼を築く上でも重要です。表面的にはマネできるけど、すぐにボロが出てしまう。やはり血となり肉となり、内面から出てくるまでに高めないとダメ、私にとってはそんな妙技です。

伝達力とは・・・相手の求めているものを「読み取る力」、「感じ取る力」

グロービズの堀 義人 学長に、リーダーシップで最も難しいことを直接尋ねたところ、答えは「コミュニケーション」で、克服法は場数を踏むしかないとのこと。コミュニケーションは相手に伝えるだけでなく、共有されなければ意味がありません。

英語には、受け手が納得し、行動することを目的とした例えがあります。つまり、主語は送り手ではなく「受け手」で、相手がどのように受け止めるかが重要です。また、相手が求めるものを読み取り、感じ取る力も必要です。

  • Said ≠ Heard

  • Heard ≠ Listened

  • Listened ≠ Understood

  • Understood ≠ Agreed

  • Agreed ≠ Convinced


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