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01_3M. 第一の扉 「会社が期待すること」 相手の期待値


「キャリアアップの概念図、次の要素は、「会社が期待すること」。期待値の「高さ調整」は、お笑いでも「ハードル上げすぎ」などとよく耳にするほか、皆さんもノウハウがあるはずなので割愛します。ここでは、もう一つの要素「時間軸」、特に「相手からの信頼は最初が肝」という点について説明します。

相手からの信頼は最初が肝

「5万円をもらったとき」と「5万円をなくしたとき」を想像してみてください。どちらが心理的なインパクトが大きいですか? 殆どの方は「得をした嬉しさよりも、損をしたガッカリ感を強く感じる」でしょう。数値化すると、5万円もらった嬉しさを「+100」とするなら、5万円なくしたガッカリ感は約2倍「-200」程度です。

この分野は行動経済学で扱われており、「プロスペクト理論の価値関数」とも呼ばれ、下図のようにグラフ化されています。特徴は、左右の傾きは対象ではなく、左側の損をした傾きが、右側の得をした場合の約2倍あること。

プロスペクト理論の価値関数

次に、時間軸の要素を加えます。下記のaとbをイメージしてください。最終的にはいずれも1,000円です。皆さんはどちらが嫌ですか? 殆どの方は、aが嫌でしょう。もし価値関数が左右対称なら、aのように200円値下げして200円値上げすれば、行って来いで元に戻ります。しかし、実際には値上げした際に生じるガッカリ感が大きいため、aの価値は低下します。

a. 1,000円の商品を200円値下げして、しばらくして200円値上げして1,000円
b. 1,000円のまま

会社の期待値も同じです。最初の成果が期待値を下回ると、信頼回復に時間がかかります。特に気の短い上司の場合は、さらに時間がかかり、信頼を取り戻すためには数倍の労力が必要になります。そのため、最初の業務やプロジェクトは、期待値をうまく調整しつつ慎重に進めることが重要です。

スピードと質の最適解は?

平たくいうと上司の期待値は、スピード (作業時間)と質のかけ合わせです。2つの要素の関連性について、私の経験では、ある閾値までは作業時間と質は比例するものの、それ以降は時間をかけても質の向上幅は小さくなり、イメージ図のように頭打ちの形になります。満足度が次第に減少すると言う意味で、経済学では、「限界効用逓減げんかい こうよう ていげんの法則」と呼ばれています。

では、どのあたりの完成度を目指すかというと、私の場合は7割程度、ピンポイントでいえば 2/3 (67%)です。変化の激しい業界なら、陳腐化する速度も早いので、5割前後でしょう。この7割という数値、実践編2 第四の扉 「「七」 確実に勝てる7割、損失は最大でも3割」でふれますが、私が重要視している数値です。

もう一つのポイントは、アウトプットを早めに確認・修正すること。最初に、アウトプットの大枠を具体的に作って確認し、その後で中身を詰めていく。そのほうが結果的には、早くそして作業工数も少なくすみます。

ビジネスの基本は相手の期待を超え続けること

「相手の期待値を超え続けること」、これがキャリアアップの要諦です。自分のキャパを大幅に超える場合は、期待値を調整しつつ、受け取ったからには少なくとも100%は満たす。そして優先度の高い依頼は、100%を少し超えるように努力する。このあたりをバランス良く最適化する能力を高めると、ワークライフバランスもとれるでしょう。

信頼と表裏一体の「ブランド」、その視点から補足します。相手からの期待値を自分への信頼、自分のブランドと置き換えます。信頼やブランドの特徴、積み上げるには時間がかかるが、壊れるのは一瞬。それをうまく表現したのが、帝国ホテルの「10・10・10の法則」。帝国ホテルというブランドを築くには10年かかるが、失うのは10秒。そして、失った信頼を取り戻すには10年。

この法則も頭に入れて、多くの方々に「この人と一緒に働きたい」と思ってもらえるよう、信頼を積み重ねていきましょう。


第一の扉 まとめ

期待値の「高さ調整」のほか、「最初の業務・プロジェクトは慎重に進める」ということも重要です。ある程度信頼を積み上げるまでは、失点を防ぐようにしましょう。「信頼を築くのは一生、信頼が壊れるのは一瞬」ということを肝に銘じ、信頼を積み重ねていけば、キャリアアップの根幹の一つ、「この人と一緒に働きたい」と思ってもらえるようになります。


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