千代弦

チヨヅルと申します。魔妖神仏をこよなく愛するおなごです。文章もイラストもかきます。言葉遊びがだいすきで、定型詩、都々逸、折句がお気に入り。よろしくお願いいたします。

千代弦

チヨヅルと申します。魔妖神仏をこよなく愛するおなごです。文章もイラストもかきます。言葉遊びがだいすきで、定型詩、都々逸、折句がお気に入り。よろしくお願いいたします。

マガジン

  • 食い意地日誌

    行きつけのスーパーは、産地直送の珍しい野菜が並ぶコーナーがあります。 そこで出会った「人生初見」の野菜を中心としたエッセイです。

  • novel「旅」

    小説シリーズ「旅」をまとめています。 列車に乗って永い旅を続ける、彼とわたしの物語。

最近の記事

グッモーニン春眠暁を覚えず 34時のてりたまマフィン

    • しりとり恋歌

      語られないのは はじめての恋 いつかの歌姫 めくるめく夜  ルビーが腫れてく くちづけだから ランプも恥じらい いつしか消える ルシアン・ベアってお酒をひとくち 痴情のもつれもたまには結構  うつむきゃおめめが隠れちゃうから ラストを待たずに此処を出ようか

      • 息するようにあざむく君があざむかるるを忌む不思議

        • 食い意地日誌⑤「バターナッツカボチャ」

          バターナッツカボチャを初めて見た。 全長四〇センチの落花生といった姿に、思わず売り場で吹き出してしまった。 まるでジョークグッズのようだ。気に入った。 お買い上げである。 まずはレシピを検索。 水気が多いので、ポタージュにするのがおすすめとのこと。 皮は、ピーラーで除去できるほど薄いらしい。 それなら、ミキサーにかけたら口に障らないだろう。 むかないことにして、皮ごとぶつ切りにする。 ここでびっくりしたのは、種の在処である。 ひょうたん型のかぼちゃだが、くびれを境にして上

        マガジン

        • 食い意地日誌
          5本
        • novel「旅」
          2本

        記事

          食い意地日誌④「シーアスパラガス」

           シーアスパラガスというものを見つけて身請けした。  イスラエル産らしい。  植木で見るような、ガサガサした葉で、初めて見たとき「なんかえぐみが強そうだな」と思った。完全なる偏見であることは後に判明する。  野菜売り場にある植物はすべて食える、というのが信条なので、ひるみはしなかったが、ちょっと身構えた。  帰宅後、検索したら、和名を厚岸草というらしい。そちらは聞き覚えがあるような。  海藻ではないが、海で育つらしく、潮の味が沁みついているのだという。びっくりして、ひとつふた

          食い意地日誌④「シーアスパラガス」

          秋深し金木犀のご近所に銀杏植えたやつ誰や出てこい

          秋深し金木犀のご近所に銀杏植えたやつ誰や出てこい

          食い意地日誌③「ヘチマ」

          野菜売り場でヘチマを見つけた。 沖縄出身の漫画家さんが、好物だと云っていたので、食べる文化があると知ってはいたが。 もちろん、即購入である。 大きさはズッキーニくらい。 ただ、縦に角が張り出している。 輪切りにしたら星型になるだろう。 正式名称は、十角ヘチマというらしい。 レシピを検索すると、味噌を使うものが多い。 皮をピーラーでむき、作り置きの肉味噌で炒めてみた。 結論からいうと、激美味だった。 タワシにするだけあって、繊維のシャキシャキした歯応えがたまらない。 瓜

          食い意地日誌③「ヘチマ」

          食い意地日誌②「ビーツ」

          野菜売り場でビーツに出逢った。 ボルシチに使うと噂のあれだろうか。 ボルシチとは何だろうか。 ロシアのスープの一種ということしか知らないが、文学作品によく登場する名だ。ああ、ボルシチ。 ビーツとは、それに欠かせない食材の名ではなかったか。元・文学少女(偽)は大興奮である。 さて、人生初ビーツを視覚で描写してみる。 土のなごりを皮にまとった、赤紫の根菜である。一見サツマイモのようだが、賀茂ナスのように丸い。 成人男性の握りこぶしより大きくて圧倒される。 ともあれ、野菜売り場に

          食い意地日誌②「ビーツ」

          食い意地日誌①「生栗」

          生栗の皮むきというのをやってみたくて、お勤め品のを買ってきた。 実家では、「危ないから」とさせてもらえなかったので、どきどきする。 水で3時間ふやかし、まな板の上でざらざらした尻をちょいと落とす。 その傷口に包丁をひっかけて頭の方へむくと、べりべりと簡単に鬼皮は除去できた。 渋皮はむかず、重曹を入れた水に3時間つけてから、4回ほど茹でこぼす。 ラスト、栗と、ようやくかぶるほどの水をはって火にかけ、茹で汁が熱くなったところで黒砂糖を入れる。 栗は12個、投入した黒砂糖は10

          食い意地日誌①「生栗」

          あめのうずめのみこと

          あめのうずめのみこと

          novel【猫鳴き梅酒」

           つまくれの花(鳳仙花)が咲いた。空は、青い。  九月の誕生石はサファイアだというから、わたしは、自分のなかゆびと空とを見くらべて、ふむ、とうなずく。なるほど、おなじね。  わたしのサファイアは、画家の米国土産だ。その頃、サファイアリングの台といえば金かプラチナの二択だったが、画家はわたしと同じく、それを良しとしなかった。いまでは銀台のサファイアの指環はめずらしくなくなったけれど、90年代にこれを贈られた時は、胸が痛くなるほどのサプライズだと感じた。その心の動きは、いまも色あ

          novel【猫鳴き梅酒」

          novel「旅」②

               2. 「お楽しみ(シュープリーズ)」と呼ばれるおまけ入りボンボンの封を、彼は音もさせずに解いてゆく。  菓子箱のふたを開けると、色とりどりのドラジェが現れた。結婚式で花嫁がみんなに配るというこの菓子を、わたしは一度しかたべたことがない。白、淡い青、薄紅、卵色、すみれ色。幸福な色合いの砂糖衣にくるまれたアーモンドは、まるで天使の卵のようだ。  そして、わたしの望む「かんじんの物」は、ハトロン紙に包まれてドラジェの片隅にもぐりこんでいた。彼が箱を差し出す。  わたしはそ

          novel「旅」②

          【折句】かきくけ恋い。

          かなわぬ感情 かわかぬカラダ 切り抜きのキスをきみにした 悔いてるくせにね 食わせもの 決着(けり)つけそこねて 喧嘩腰 ごねてもこわかない子だね

          【折句】かきくけ恋い。

          【詩】お針子

          エプロンドレスのお嬢さん、 ミシン鳴らして日は暮れる。 ヴィオロン奏でるお姉さん、 ワイン揺らして逢いに来る。 色とりどりの糸くずが、 エプロンドレスを飾ってる。 布と針とで遊んでいると、 時がたつのも忘れます。 おさげを解いたお嬢さん、 耳たぶ染めてドレスを渡す。 シニヨン解いたお姉さん、 鏡の前でターンする。 ヴィオロンの箱は壁にもたれて、 ふたりの乙女を見つめてる。 新酒のワインがグラスにつがれ、 ふたりの秘密を酔わせてる。

          【詩】お針子

          Childhood's End

          月が傾く音がして、 ぼくはぽっかり目をあけた。 カーテンごしに見えるのは、 ボタンみたいなお月さま。 瑠璃と茜の縫い糸で、 びろうど夜空にとじてある。 きっとお仕事したひとは、 てさきの器用なめがみさま。 ぼくはぼんやり不思議に思う、 とじてあっては動けない。 だったらあの音なんだろう、 月が傾くような音。 びろうど夜空をしゅるしゅると、 西へひっぱる音だろか。 星がぱらぱら落ちてくる、 パンくずみたいなお星さま。 ぼくは窓から手をだして、 星のかけらを受けてみた。 ひ

          Childhood's End

          novel「旅」①

                1.  長い間、ほんとうに長い間、この列車に乗っている。一〇時間か、それとも一〇〇年間だろうか。  わたしの肩にもたれて眠る彼は、乗車したときは声がまだ高かった。彼の手を引いて、ふたりぶんの切符を買った。コンパートメントに落ち着くなり、この子が甘いココアをねだったのを、昨日のことのように覚えている。マシュマロを浮かべた、幸福な糧を。  あれから、いくつもの昼と夜と夜明けをこの列車で過ごした。曜日の感覚は失われて久しい。   深緑の布が張られた座席に座り、右肩に

          novel「旅」①