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素寒貧(すかんぴん)の私
先月の5日の未明に私の勤め先の社長が急逝したんですね。社員三人にまで減っていたんで「レームダック」状態だったことも手伝って、後継者もおらず会社を清算することになったのよ。
先月末日で解雇通知が来て、私は年の瀬に、障碍者の夫を抱えて路頭に迷うハメになってしまった。
とはいえ、両親の遺した家がある事が幸いして、雨露はしのげそうだ。この寒空にホームレスはつらい。
夫の通院があるから、市役所に行って健康保険を国民健康保険に切り替えてきた。
昭和37年生まれの女に都合の良い就職先はない。ところがもう一人の社員のMが「おれたちで会社を作ろうぜ」と誘ってきた。なるほど、それもわるくないわね。
幸い、自社製品があって、私がほとんど製造をしていたものだから、そこそこ顧客もついて、月に二十万円ぐらいの売上もあったのだ。材料費が、ここだけの話、だいぶ低く抑えられているので、利益率は良いのである。精密機械の分野の人にしか用のない工具なので、万人に受けない品物であるのが、弱点なだけだ。まず「大化け」はしないし、しているなら今までにしていたはずだから。
機械設計と組立が本業の会社だったから、Mは設計者として腕が立った。顧客の信頼も得ていたし、新事業を始めてもやれぬことはなかろう。
会社を興すとなると、資本金だの、登記だの、定款だのが必要になってくる。私はかつて司法書士事務所にアルバイトに出ていたので、だいたい知っている。あの先生に頼めばなんとかしてもらえるかもしれない。株式会社でも合同会社でもいいから、とにかく、年内にやってしまわないとこっちが干上がってしまう。
清算した会社が持っていた特許権とかが、弁護士の手元にあって、社長遺族が破産したために、管財人の判断を待たねばならない。事業承継は私たちも負債を抱え込みたくないので望まないのだけれど、この自社製品の実施だけは勝ち取りたいのである。
こんなとき博士号など、何の役にも立たないのである。特許権には発明者として名を連ねてはいるけれど、私の発明はその一部に過ぎない。ほかにも数点、出願したことがあるが、カネを惜しんで放置してしまったから公知になってしまっている。実用新案が二件ほどあったかな。いずれも二束三文だ。
あまりにむしゃくしゃするので、インドのダンスでも見て楽しもう。
上手にシンクロさせているね。しかし、良く動くなぁ。
江南(カンナム)スタイルも流行ったね。あの頃は良かった。
こういう「すっとんきょう」なものが好きなのよ。
エロ小説では稼げないからね。やっぱりモノづくりしかないやね。ITで食っていこうという気などさらさら起こらないわ。時代遅れでけっこう。餅屋は餅屋でホームページが必要なら、稼いでお金払って頼みますよ。零細企業はそうやって生き延びてきました。広告は地元の印刷屋に頼み、旋盤は旋盤屋に頼み、板金は板金屋があるし、塗装は専門の工房もあり、しょんべん臭い貸工場でみんな必死でやってるもんね。事情を話したら「助けちゃる」と言うてくれる親方もいるんだ。故人の社長がいい人だったからね。ただ商才がなかったんだなぁ。