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朝ドラに見る「きょうだい」の確執

NHKの朝ドラを観るのが日課になって久しいが、始まりは『エール』だった。そして『おちょやん』、『おかえりモネ』、『カムカムエヴリバディ』と続いている。

そこで気になったのが、どのドラマでも「きょうだい」(性別がいろいろあるのでかながきします)の確執が描かれていることだ。

古い時代背景の場合、長男が家を継ぐことが当たり前であり、次男坊は冷や飯を食うことになる。

ところが朝ドラではその長男が、自分の好きな道を追い求めて出て行ってしまうことで次男(次女)との確執が生まれる。

『エール』では作曲家を目指す呉服商の長男古山裕一が、家を出て、次男浩二が家をしぶしぶ継ぐ。浩二は兄の自由気ままを恨みつつ、慣れない商売に手を焼きながら、結局、店をたたむことになってしまった。一方で、戦時歌謡のヒットで兄は売れっ子になっていく。浩二は、兄の犠牲になったことを諦観しつつ役所で働くようになり、福島県でリンゴ農家を増やす事業支援を立ち上げる際に、兄の名声を図らずも利用することになり、忸怩たる思いに悩むのだった。最後には兄弟の確執は解消されてハッピーエンドとなるのだった。

『おちょやん』では少し趣が違うが、極貧の生活から主人公の「おちょやん」こと竹井千代と弟ヨシヲの運命のいたずらを描く。千代は父の放蕩の犠牲に「おかやす」という芝居茶屋に奉公に出される。父と後妻とヨシヲの行方は千代が年頃になるまで知れなかった。どうやら、ヨシヲも父の無茶から逃げるように家を出てグレて、よこしまな商売に身を置いていたらしい。そして姉弟の再開…しかし、弟の心は変りはてて、念願の舞台女優になった姉をカネのために利用しようとするまで落ちぶれていた。そこにも弟の境遇からくる歪んだ怒りの矛先を、まっすぐに生きる姉に向けられている。そしてヨシヲが、外地満州で客死したことで、二人の仲が永遠に修復されることはなくなってしまった。

『おかえりモネ』では、姉妹の確執が「東日本大震災」の津波被害で生じてしまう。姉の「モネ」は震災の当日、仙台に父と一緒に高校の合格発表を見に行っており、津波に遭わなかった。しかしモネの妹、「ミーちゃん」や幼馴染の「りょーちん」らは気仙沼で津波に逃げ惑い、命からがら助かった。その後、モネは気仙沼を離れ登米市の山林組合に働きにでる。一方で妹は地元の水産高校で学び、祖父のカキ養殖を手伝うかたわら、稚貝の自家養殖の研究に勤しむ。そしてそのままカキ養殖の専門家になるらしいが、姉が地元を捨てて都会で飛躍するありさまにわだかまりを禁じえない。事実、モネは気象予報に目覚め、気象予報士試験にパスし、気象予報の東京の会社に就職し、テレビ出演までとんとん拍子に進んでいく。しかし、ミーちゃんやモネに恋心を抱くりょーちんは地元で地味にがんばっている。りょーちんは特に先の津波で母を亡くし、腕利きの漁師だった父は酒に溺れ、二度と漁船に乗らないと荒れているのを見ながら、父と再び漁に出ることを夢見て漁師の道を歩んでいる。この境遇の差がモネとミーちゃん、りょーちんたちとの間に見えない溝を深めているのだった。自分のやりたいことのために故郷を簡単に出られる立場と、そうでなく置いてきぼりを食ったように感じる立場である。最後まで姉と妹との溝は埋まらなかったのではないかと私は思っている。

『カムカムエヴリバディ』も始まったばかりで、すでにヒロイン橘安子(たちばなやすこ)の初恋の相手雉真稔(きじまみのる)とその弟勇(いさむ)の三角関係が勃発。戦争の影が三人に忍び寄り、勇は兄のために安子を諦めて東京の大学に進む。勇には得意の野球があり、それがせめてもの救いだったが…雉真家は地元岡山で学生服などのメーカーであり、いまは軍需に沸いて大きく成長していた。稔は長男として会社を継ぐことが当たり前とされており、下町の和菓子屋の娘安子と添い遂げることなど望むべくもなかった。じゃあ勇が継げるかというと、当時の商家では次男坊に帝王教育を授けることはなく、ある意味放任で、だから勇も野球三昧の生活を許されていたため、とうてい無理な話だった。勇は兄が安子と添い遂げる(家を継ぐかどうかは別にして)ことのみを希望していたから身を引いたのである。この兄弟の確執は今後どうなるのであろうか?日本の戦況は悪化しつつあるなか、悲しい結末になりそうで不安である。

かようにして、「きょうだい」の立場の違いで、年少者が割を食うようにドラマでは描かれがちだ。現代でもそうなのだろうか?『おかえりモネ』は現代のドラマだから、姉妹の確執といっても、いささか趣が異なるだろう。

とはいえ、継ぐべき家業のある家に生まれた姉妹ということで、「家を継がねば」という気持ちを、娘たちのいずれかが持ったとしても不思議ではない。モネたちの家も祖父の代からのカキ養殖業で、モネたちの父がそれを嫌がって継がなかったから、祖父自身も自分一代で辞めようと決心していたわけだ。

私は一人っ子で、継ぐべき家業も持たずに生まれたので、こういう「問題」にシンパシーを感じないわけではないが、わがことのようには、なかなか考えられないものだ。

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