ムルマンスク紀行~世界最北の鉄道駅がある街へ~②
■2日目
早い時間に寝たせいか起きるのも早かった。まだ外は薄暗い。時計を見ると朝の6時。スマホで地図を確認するとコラ半島の真ん中あたりということだった。
うとうとしながらしばらくは少しずつ明るくなる外を眺めていた。
が、見えるのは架線柱と森くらいである。
目が冴えてきたので本日一杯目の紅茶を入れる。周りの乗客も目が覚めてきたようだ。みんなベットに座りながら車窓を眺めている。
私も現地の人も同じな行動をしていると思うと、その土地の空気に自分が馴染んだような気がして少し嬉しく思ってしまう。
しばらくすると車窓の風景が急にひらけた。
太陽が顔を出す前のボヤっとした高く淡い空と深まりゆく秋を告げるカラフルな森が広大な湖に反射している。
その風景は今まで見たことない不思議な景色だった。
しばらく見惚れてしまってシャッターを切るのを忘れてしまうくらいには。
言葉を失うような絶景ってこのことを言うのかと思った。
しばらくすると湖は車窓から消え、列車は森の中を駆け抜けていった。
山と呼べるようなものは全く見当たらず、あっても丘レベルである。
お昼にはムルマンスクへ到着する予定なので朝食は食べなかった。
結局ムルマンスク手前20㎞ほどまで高低差のない森が続いていた。
列車は定刻でムルマンスク駅のホームへと滑り込んだ。
荷物を持って他の乗客に続いて列車を降りる。
すると降りたドアのまさに目の前で屈強そうな男が二人立っていた。典型的な筋肉モリモリマッチョマンのロシア人だ。
するとその二人組は他の乗客には目もくれず、私に流暢な英語で話しかけてきた。
明らかに怪しいので警戒しながら話を聞いてみると、どうやら国境警備隊的な組織の人らしく私のムルマンスクでの滞在先や目的などを聞きにきたというのだ。
それらしい手帳や身なりだったので正直に話したところ5分ほどで解放された。
どこから組織に情報が漏れた……
これは鉄道会社からきっちり公安側に「どの列車のどの号車に外国人が乗っているぞ」という情報が流れてるということなのか…
ムルマンスクの近くには原子力潜水艦の基地などがあるロシア極北部の要衝ということもあり街へ入ってくる外国人へのチェックが厳しいみたいだ。
ちょっとだけ肝を冷やしたが無事にムルマンスク到着ということになる。
お腹も空いたのでとりあえず駅の近くのカフェへと入りピザをもぐもぐ。
腹ごしらえを済ませたらホテルへチェックインすることにした。
その3へと続く
※この旅行記は2018年9月のものです。