夜の公園で、ひとりの人物が、腹筋をしていた。 鋭く、苦しそうな息づかいが、深夜の静寂のなか響いている。 腹筋の主は、美しい――少年、であろうか。 一見して性別のわからない、不思議な顔立ちをしていた。 さらりとした金髪。あばた一つない、なめらかな肌。 街灯の乏しい明かりの下でさえ、息を呑むような美貌である。 全身に、華美な貴族風の衣装をまとっている。 運動にはいかにも不向きな格好だ。 しかし、柳眉を苦しそうにひそめながらも、端正な顔には一粒の汗も浮かんでいない
少し前、PS4で『The Surge』(ザ・サージ)というゲームを遊んでいた際のことだが、思いがけず突然、女と女の強い殺伐関係に遭遇して驚愕したので書き残しておきたい。 『The Surge』は麻酔なしの人体改造によって人間重機と化したウォーレンくんというおっさんが、次々と襲ってくる発狂したおっさんどもを重機パワーでぎったぎたに損壊したり、容赦なく襲ってくるガチの重機に接触して全身を強く打ったりする近未来ガテン系アクションゲームで、発売当時にはSF版ダークソウルとも呼ばれ
「ねえリゼぇ、やっぱりうまくやれる気がしないよぉ」 ハンドルを握ったアンジュが今日何度目かの泣きごとを言い始めたので、助手席のリゼは呆れて天を仰いだ。 「前みたいに肝心なところでやらかしそう。リゼの足引っ張るの嫌だよぉ。死ぬんだぁ……」 「大丈夫だって。二人でたっぷり反省会したじゃない」 「でもぉ……」 灰色の空の下、山肌に沿ってうねうねと続く道には、前にもうしろにも二人の乗る車一台きりしか見当たらない。道路の左側、ガードレールの向こうは崖となって鋭く落ち込んでいる