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まあまあ最近を追憶しながら~ウェーベルン 弦楽四重奏のための緩徐楽章

Irisシリーズ、第2弾はウェーベルンの弦楽四重奏のための緩徐楽章にまつわる話です。



好きじゃない作曲家の好きな部分

 ウェーベルンといえば、シェーンベルクが発明(?)した十二音技法を一層進化(というより退化)させた作曲家としてよく知られていますね。実はウェーベルンの音楽は個人的に近代音楽の中でも一番好きになれないジャンルでした。(そもそも十二音技法の音楽自体が好きでは無いのですが)あんなに無表情ですっからかんな音の散乱をどう解釈したらいいのか、僕には理解出来ませんでした。(今でも理解できません笑)
 
じゃあそんなに好きになれない作曲家のものを演奏会に入れてしまって大丈夫だったのかよって疑問が出たり出なかったりするかと思われますが…この曲との出会いは、3年前、当時自主企画で組んでいた弦カルのメンバーが、プログラムの真ん中で取り上げる曲としておすすめしてくれた事でした。もちろん最初は、ウェーベルン?大丈夫かよ…と思いました。しかし聴いてみると、なんと素敵な音楽であろうか!十二音技法などは一切無く、一音一音に魂が凝縮されているような響き、今まで聴いた曲には無いレベルの各場面の表情の豊かさ、結局その3年前の演奏会でもこの曲がプログラムに入れられる事になったのですが、もちろんこの曲は僕にとっても大丈夫だったどころか、ぜひ演奏したいという気持ちにまでなりました。作曲者の隠れていた部分をここまでこの曲で見せつけられては……ね……

3年前の復習

 ということは、個人的にはこの曲を演奏するは9/3の演奏会で2度目ということになります。合わせをする度に、3年前に合わせでやったことやレッスンで教わったことなどがたくさんよみがえってきました。(もちろんこの場合はいい意味で)そのため、あの時の復習をしているかのような感覚でした。なにせこの曲は構造が複雑で、今回も合わせに苦労したりとかしたのですが、そうなると、あーそういえば前も同じところで訳分からなくなって笑ってたりとかしてたなーとか、ここは昔レッスンで見ていただいた時こんな風に言われたんだったなとか。3年前の記憶などとうに失くしたかと思っていたのですが、意外と思い出そうとすれば思い出せるものですね。

 特にクライマックスのロングトーンなどはとても気持ちよく弾いていました。こうやって過去の事を思い出していると、自然と身体が開けてくるこの現象はなんなんでしょうね。まだ出会って3年の月日でこのような気分を味わう事になるとは。やはり心のどこかで、あの時はとても充実していた、楽しかったと、懐かしく感じてしまっているのでしょうか。いや、もしこの曲をまたいつか演奏する機会ができたとするなら、今回の演奏会もまた、思い出のネタとしてよみがえってきてそれを懐かしく思えてきて、より一層開けた演奏ができるようになっているかもしれません。

(次回に続く)

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