Sho Yamanaka (VC)

VC投資や協業推進に従事。テーマはAI、SaaS、フィンテック、コマース、エンタメ、広…

Sho Yamanaka (VC)

VC投資や協業推進に従事。テーマはAI、SaaS、フィンテック、コマース、エンタメ、広告、宇宙、新興国など。社会学修士、CPA(ワシントン州)。外資金融を経てLondon Business School金融学修士。

最近の記事

"The Venture Mindset"解説

今回は米のビジネス界でよく読まれ話題になっている一冊"The Venture Mindset"について解説していきたいと思います。 本書はスタンフォード大ビジネススクールの教授であるイリヤ・ストレブラエフ教授と、アマゾンやマッキンゼーで勤めたアレックス・ ダン氏によって執筆され、2024年5月に出版されました。 本書は米トップVC各社の行動様式や意思決定方法を研究、分析し、様々な点で既存の企業活動と異なるということを示し、そしてそれらが昨今の企業活動において非常に示唆に富

    • Cloud 100 2024 List解説

      BessemerよりCloud 100リストのレポートが発表されたので解説致します。 Cloud 100リストは、毎年Forbes、Bessemer、Salesforce Venturesが作成のランキングで、市場でのリーダーシップ、推定評価額、経営指標、カルチャーなどの基準に基づいて評価された企業のリストです。 本年度の一つ目の特徴は100社の企業価値の合計が8,200億ドルと過去最高を記録したことです。これはAI企業の貢献だけでなく、IPO市場の停滞により大規模な企業

      • Bessemer "State of Cloud 2024" 解説

        米大手VCのBessemer Venture PartnersがSaaSとAIに関する包括的な見通しレポートを6月末に発表しています。クラウド領域もAI中心にシフトするとの内容で、従来のSaaSは終了しAI SaaSの時代が始まるとの大胆な副題が添えられ、5つのトレンドを軸に展開されています。以下解説を進めていきたいと思います。本文はこちらですので原文の確認にお使い下さい。 まず、2024年のAIクラウドの5つのトレンドは以下と示されています。 1.LLMは石油の役割。新産

        • CB Insights「生成AIバイブル」解説

          スタートアップやVC投資に関する最新動向を提供する米CBインサイツ社より、「Generative AI Bible」との名前で生成AIに関する包括的なレポートが出ました。生成AI関連の動向を網羅的に学べる良い内容なので、以下解説していきたいと思います。 ■生成AI発展の歴史 まずは生成AIの発展に関してです。チャートからわかるように、2015年頃から急速にAIによるコンピューターリソースの使用量が上昇しています。これはモデルが大きくなっていること、つまりAIが急速により高度

        "The Venture Mindset"解説

          生成AI海外事例2(法務関連)

          今回は生成AIの実際の活用に関して、幾つか海外での最新事例を紹介できればと思います。まずは法務関連に関して5つのスタートアップを取り上げます。 まず一社目はHarvey社です。こちらは前回のレポートで紹介した会社となりますが、これまでに$26M調達し、23年4月のシリーズAではOpen AIやセコイア等から$21M調達しました。ChatGPTの技術をベースに、契約内容の分析、デューデリジェンス、訴訟、規制対応、コンプライアンス等の法務業務全般に関するサービスを提供します。今

          生成AI海外事例2(法務関連)

          生成AI関連領域の今後の発展について

          生成AIに関しては今年は様々なサービスの誕生や巨額の投資など、色々な動きがありました。今後、どのような発展を辿るのか、スタートアップ投資としてはどのような領域が良いのか、セコイアキャピタルの議論を参照しながら説明したいと思います。 セコイアのプレゼンテーションでは、生成AI領域の発展が三段階に分けて説明されています。第一段階の現在では、半導体に関してはNvidiaのGPUシェアが90%以上となり、入荷に1年待ちなど、供給に制約がある状況となっています。同時に、OpenAIに

          生成AI関連領域の今後の発展について

          生成AIがもたらす産業革新

          今回は引き続き生成AIに関して、なぜ産業全体を大きく変えるかもしれないとこれほど言われているのか、米VCのアンドリーセン・ホロウィッツの議論より説明したいと思います。 アンドリーセン・ホロウィッツのゼネラルパートナー、マーティン・カサド氏によると、技術の発展のカギとなるポイントの一つに、マージナルコスト(限界費用)という概念があります。これは一般的な経済学の概念で、一つのサービスを追加提供する際にかかるコストのことです。例えばインターネットやソフトウェアのサービスでは、一旦

          生成AIがもたらす産業革新

          生成AI海外事例1

          今後、生成AI関連の領域ではいわゆるバーティカル型の特有の業界に特化したサービスの普及が進むと言われています。 ポイントとなるのはデータとワークフローという二つの概念です。データに関してはこれまでのインターネットサービスの領域と同様に、ユーザーが利用するとデータが蓄積され、その活用によりより良いサービスを提供できるという点で重要な要素の一つとなります。とりわけ、医療など、データへのアクセスが難しい領域では、AIサービス展開における一つの強い優位性になると言われています。

          生成AI海外事例1

          AIが人間を超えるとき

          先週は日本のVC、スタートアップ業界の発展にとって象徴的な週でした。米著名VCのアンドリーセン・ホロウィッツやその投資先企業、セコイアキャピタルなどその他トップVCが来日し、カンファレンスやイベントが開催されました。これまででは考えられなかった豪華メンバーの来日に、政府の力の入れようや各ファンドの日本への関心の高まりが感じられます(画像はQuinn氏のTwitterより)。 さてここでも注目トピックはAIで、その中でも最も興味深かったセッションの一つがAIによるプログラミン

          AIが人間を超えるとき

          生成AIとスタートアップ

          セコイアキャピタルの生成AI領域の動向に関するレポートでは、幾つかの示唆に富む論点が提示されていました。今回は生成AIスタートアップがMoat構築、つまり差別化の点でどの領域で発展可能性が大きいかという点を考察できればと思います。 まず一つ目はサービスや製品に関してです。ChatGPTやGoogle Bardを試してみると、非常に多くの新規事業や業務効率化に関するアイデアが湧いてくると思います。実際、ソフトバンクは社内ビジネスコンテストを毎月実施し、3000万円との大金を賞

          生成AIとスタートアップ

          生成AIの社会的インパクトについて

          ソフトバンクの孫さんの金魚の話など、AIの話題が尽きない日々が続いていますが、今回はどのように生成AIが社会的に良い影響をもたらすのかという点に注目したいと思います。 元の情報は生成AIは消費者の生活をどのように変えていくか、というアンドリーセン・ホロウィッツの記事からで、重要なキーワードはカスタマイズ、テーラーメイドです。つまり、生成AIの発展によって、個々人のニーズに応じて、よりきめ細かなカスタマイズされたサービスの提供が可能になるということです。具体的な事例で説明でき

          生成AIの社会的インパクトについて

          IPO市場回復の歴史

          9月はArm、インスタカート、クラビヨと上場が続き、21年12月のサムサラ上場以降、1年8カ月の長い冬の時代を経て、いよいよIPO市場の回復かと期待が高まっています。引き続き好調な米景気指標を受けて、金利が高い状況が続きグロース株には厳しい状況が続くと言われていますが、今回はこれまでの金融危機ではIPOがどのように回復してきたか解説できればと思います。 まずは9月の上場です。Armは長い冬の後の初の大型上場ということもあり、期待と不安で8月から色々な事が言われてきましたが、

          IPO市場回復の歴史

          NvidiaとArm

          8月のNvidia決算、先週のArmの上場があり、半導体業界に意識を向ける機会が何かと普段より多かったかもしれません。今回はまだまだ概要ですが、この2社はいったい何をしていて、何が凄いのかを説明できればと思います。 まずはNvidiaから。昨年秋にOpen AIがChatGPTを公開して以降、生成AIを中心にAIが市場、テック業界で最も注目を集める領域となっています。Nvidiaの株価は年初来約3倍で、8月の決算も年間2倍の売上、純利益は昨年度より9倍という、驚異的な数字を

          生成AIの業界構造と活用領域の概要

          初回の投稿は生成AIに関してです。この業界は直近では各企業が導入を進めたり、米スタートアップが巨額調達したりと話題になっています。しかしまだまだ情報が少なく、意外に全体像は掴みにくいのではないかと思います。今回は業界を俯瞰的に見ることで、今後の投資検討や事業推進の際の背景情報としてお役に立てばと思います。 まずは全体像です。この理解にはa16zの図解が役に立ちます。 まず上層の水色のアプリケーションのレイヤーがきます。これは各企業やスタートアップ等が様々なサービスを提供し

          生成AIの業界構造と活用領域の概要