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#14 果物の思い出

前回、一時帰国のことについて投稿をいたしましたが、ちょうど先日まで出張で日本に滞在しており、空き時間を利用して数年ぶりに高校野球の神奈川大会の決勝戦を視聴することができました。
今回の一時帰国では仕事関係の会食はほぼなかったものの、仕事で滞在していたわけですから、毎日のように忙しなく勤労に追われる数日間を過ごしておりました。そして、日中は仕事に忙殺され、夜に予定がないとなるとどうなるかともうしますと、自ずと足は繁華街へ向き、夜な夜な酒肴を嗜むこととなります。
やはり日本の食事は大変に美味しく、ましてやそれが酒の場ともなれば格別にそのことを実感するわけで、毎夜のように普段以上の酒量を消費するのでありました。
そして現在は、当地、ホーチミン市に戻っているのですが、仕事の忙しさからなのか、日本の夏の厳しさからなのか、はたまた夜な夜な消費した酒類によるものなのか、その原因は定かではございませんが、とにかく体調が芳しくない状態に陥っております。

日本の食事と酒は格別でございました

おそらくは、それら全てが原因となり体調不良となっていると思われるのですが、食事に関しては体調不良のみならず、体重の増加も引き起こしていると考えられます。これは毎度のことなのですが、一時帰国後は明らかに毎日問題なく履いていたズボンを窮屈に感じるのであります。
原因は日本での飲酒を含む、普段以上の量の食事にあることは明白なのですが、それに加え、食後のコンビニエンスストアでの買い物もその要因の一つであると思われます。

コンビニエンスストアでの買い物は、私にとって日本に帰国した際の楽しみの一つであり、毎度訪れるたびに新商品が並ぶ陳列棚を見ては、何を購入しようかと悩み、ついつい余分なものまで買い物かごに放り込んでしまいます。
そして、日本からのお土産として、当地の方からコンビニエンスストアの商品を所望されることもしばしばあるため、必要以上に通ってしまうという事情もございます。その際、よく依頼を受けるのが、ファミリーマート社の『海鮮スティック 博多明太入りマヨネーズ』と、セブン‐イレブン・ジャパン社の『金のハンバーグ』であり、このいずれも日本で人気の商品と思しいのですが、これはベトナムの方々にとっても同様のようであります。
今回の一時帰国においても何度もコンビニエンスストアに足を運んだのですが、特に一献傾けた後などは、やはりついつい余分なものまで買い込んでしまい、ホテルで夜な夜な深酒とそのお供となった次第でございます。

日本のコンビニエンスストアは世界に誇れる店舗のうちの一つだと思います

居酒屋などで一杯やった後のホテルや自宅での追い酒は、私にとっての習慣でもありますので、一時帰国の際の日本におけるコンビニエンスストアでの買い物に限らず、当地においても同様の営みとなっております。ただし、当地においてはコンビニエンスストアではなく、その対象の店舗は果物屋であり、当然購入するのは果物となります。
そのような酒を嗜む時間に果物屋が開いているのか、と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、当地では市場付近や交通量の多い通りなどにおいて、結構遅い時間まで営業をしておます。これは日常的に果物を口にする、ベトナムならではの慣習の一つと思われ、遅い時間までお客さんもそこそこいらっしゃいます。

お店によってですが、深夜まで開いている店舗もございます

ベトナムでは日常的に果物を口にするとお伝えしましたが、これは日本と同様に、スムージーとして飲まれたり、間食として、食後のデザートとして食されております。前者のスムージーですが、当地ではシントーSinh Tốと呼ばれ、お洒落なカフェから露店に至るまで、その場で生の果実をミキサーにかけて作られており、また果物に限らず、トマトやニンジンのスムージも人気の消費のようであります。

スムージーもいいですが、搾りたてのジュースも大変美味しいです

そして、果物を直接食す際に塩唐辛子が用いられるのが、日本と異なる点となります。ちょうど塩を少しつけて食べる日本のスイカのようでありますが、当地ではスイカに限らず、マンゴーやグァバを食べる際にも塩唐辛子をつけます。私も果物を食べる際はそれに倣って塩唐辛子をつけるのですが、特にマンゴーをいただく際にはこの塩唐辛子は必須となります。というのも当地でいただくマンゴーは熟しておらず、そのままだと酸っぱいのです。
その理由は分かりませんが、日本のマンゴーと種類が異なるのか、習慣からなのか、当地で熟した柔らかいマンゴーを口にしたことがございません。露店やコンビニエンスストアなどでは小さくカットをしてプラスチックの容器に入れて売られているのですが、こちらも硬くカリカリとした食感の熟す前の状態です。しかし、それゆえに塩唐辛子とよく合い、酒の肴としていただくこともございます。

マンゴーはおやつとしても、酒のつまみとしてもよく食べています

さて次に、当地ではどのような果物が一般的に売られているかともうしますと、すでにお伝えしたマンゴー(ソアイXoài)やグァバ(オイổi)、日本でも先日目にしたドラゴンフルーツ(タンロンThanh long)、香りと食感がクセになり食べ応えのあるジャックフルーツ(ミットMít)、甘酸っぱく美味しいですが、その汁が服につくとなかなか落ちないマンゴスチン(マンコットMăng cụt)、見た目はいびつですが、値段が安いランブータン(チョムチョムChôm chôm)やバナナ(チュオイChuối)、柑橘系の代表のザボン(ブオイBưởi)、私の好物の龍眼(ニャンNhãn)など、思いつく限りを上げたらまだまだ足りないのですが、とにかく豊富な種類の果物がございます。
ですので、一杯やった後の帰り道で、これら豊富な果物が店先に並べられておりましたら、帰宅後に塩唐辛子をつけた果物でもう一杯と思い至り、欲してしまうのは必然で、ついつい買い過ぎてしまうのは道理であります。

龍眼(ニャンNhãn)売りの女性

そして何より雨季の時期は果物の王様、ドリアン(サウリンsầu riêng)の時期でもあります。
その独特の香りにより苦手な方が多いとの話しをしばしば耳にしますが、私はこの時期になると散歩中、バイクで走行中などに漂ってくるその香りに気づけばあたりを見回し、どこで売られているのか確認してしまいます。そして、値段とサイズなどを確認し、こちらもついつい買ってしまうのですが、その多くはまだ熟す前で、二、三日後が食べ頃と告げられてしまい、しばし我慢となるのであります。
なんでもドリアンの食べ頃は "お尻" の辺りが割れてきた頃だそうで、確かにその状態になるとあのごつごつとした皮も比較的容易に割ることができます。そしてこの頃になるとさらに香りが強くなり、その実はねっとりと柔らかく、比類なき味となります。

この時買ったのは当たりでした

そのほかにも当地でもあまり見かけない果物として、サボチェーXa pô chêという干し柿の味のする果物、こちらは私の好物でもあるのですが、おそらくは西部で栽培されている、蛇の鱗のような皮に覆われたマイMâyがございます。これらはおそらくですが、日本の市場に出回ったことがなく、日本でなんと呼ばれるのか調べたのですが不明でした。
以前やはり海鮮料理とビールで気持ち良くなった帰り道でこの両者を見かけた時は思わず興奮して大量に買って帰った記憶がございます。
なお、ちょっと調べたところによりますと、サボチェーXa pô chêはベトナムどころか東南アジア原産の果物ではなく、中央アメリカ原産の果物とのことで、スペイン占領時のフィリピンにメキシコから持ち込まれ、その後タイへと渡り、ベトナムでも栽培されるようになったとのことでした。

左がサボチェーXa pô chê、右がマイMây

そしてあまり見かけない果物として、もう一つ水晶柿(スター アップル)がございます。これには紫色のものと緑色の二種類があるようで、こちらも原産国はベトナムではないようですが、ベトナムで流通しているのは緑色の種類のようです。そして、ベトナムでこの緑色の果物はヴースァVú sữaと呼ばれており、日本語に訳すと『おっぱい牛乳』となります。
その名前の通り乳白色の甘い果汁の果物で、さらに食す前に揉むという行為が発生します。なんでも揉んで柔らかくすると甘さが増すとのことですが、寡聞にして私は揉んでいない状態のものを食べたことがございませんゆえ、その効果のほどはわかりません。

以前にホーチミン市内を、ある仕事関係の男性と女性を案内していた折にその果物を目にし、その名前と味について説明したところ、その方々が食べてみたいとおっしゃいました。そこで購入し、近所のカフェに入り果物ナイフを借りて、さっそく試食となるわけですが、迂闊にもその名称の由来について果汁の件は説明したのですが、食べ方についての説明は失念しておりました。
私は美味しく召し上がっていただこうという思いから、せっせとその果物を揉むわけなのですが、その行為を目にされたその女性は、私の勘違いなのか、はたまた勘違いなどではなく、私の意に反した想像をされたゆえなのか、私のその行為を蔑むような目つきで凝視されておりました。
私は慌ててその旨も説明するのですが、その女性が果物を口にするのを躊躇されていたことがいまだに気がかりであります。

ベトナムではライチ(ヴァイVải)も有名ですが、こちらは北部の果物になります(南部にも出回ります)

ところで、これら以外にも最近では多くの輸入果物を目にするようになりました。
以前は日系のスーパーマーケットでしか目にしなかったりんごも、最近では多くの地場のスーパーマーケットで目にするようになりましたし、その値段もだいぶ下がってきたように思い、すっかり定着した果物となったように思います。
その一方で、一時期は専門店までできていたアメリカンチェリーなどはあまり見かけることが少なくなった気がします。

最近では様々な種類のリンゴを買うことができるようになりました

アメリカンチェリーといえば、最近ではなかなかテレビやラジオでの視聴はできなくはなりましたが、私はかつて高校野球のファンで、よく視聴しておりました。そして、以前はその応援でブラスバンドの演奏による大塚愛嬢の『さくらんぼ』を耳にすることがあり、その影響からその曲は大変好きな曲でありました。
そして先日、近所のカフェで涼をとっていた際に、この曲が流れてきて大変驚きました。私が通うようなカフェでは大抵はベトナムの演歌のような曲が流れており、日本の曲が流れることはほぼございません。
ついうれしくなり、思わずその歌詞を口ずさんでしまったのですが、どうもその様子を店員の若い女性に見られ、そして、その曲を覚えられたらしく、私がそのカフェに行くたびにこの曲が流れるようになってしまいました。
当地で生活をはじめて以降、しばらく高校野球の視聴から遠ざかっておりましたが、2024年の夏の甲子園は8月7日から開催されるとのことですので、そのカフェに出向いて観戦し、休日を満喫しようと思います。

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