#20 ぼったくりにご注意ください
先日、大阪のとある商店街がぼったくりの批判を受けているとのオンラインメディアの記事を目にしました。どうも外国からの観光客の増加によるインバウンド需要に乗っかるかたちで、カニやエビ、和牛などの食品の値段を高く設定しているようで、地元の方々のみならず、記事につけられたコメントから察するに、日本中から批判を受けているようでありました。
なるほど、記事に書かれたそれら食品の値段を見るに、かなりの強気の値段であり、私自身まず買わないだろうなという値段です。しかし、ちょっと気になり調べてみると、それらの値段は隠されているわけではなく、きちんと明示されており、お客さんは納得の上で購入されているようでありました。
当然、その記事もそれら店舗を『ぼったくり店』と表現はしておらず、『ぼったくり』との批判を受けていると記されております。
私の認識において、ぼったくりとは店と客側に金額に関する合意がない状況での高額請求、または客側に実際の金額よりも安い値段であるかのように誤認させる行為でありますので、この場合はぼったくりにはあたらないと考えております。
ではなぜそのような批判が集中しているかと再び調べるのですが、どうもこの問題は店側による値付けだけではなく、さまざまな要因があるようでして、いろいろと考えさせられることとなりました。
さて、ぼったくりといえば海外旅行などの際について回る言葉のように語られることが多いと思いますが、当地、ベトナムはホーチミン市においてもよく耳にする言葉でございます。
空港からのタクシーに始まり、市中での買い物、女性が客席に付き接待をしてくれるお店など、旅行や出張で来られた方々に限らず、当地で生活をされている方においてもその被害に遭ったとの話しを聞き及ぶことがしばしばございます。
幸いにも私の解釈において、私はその被害に遭ったことはございませんので、あくまで聞き伝えの話しではありますが、その手口をご紹介させていただき、当地を訪問される方々への注意喚起になればと願います。
まず、最もよく耳にし、また在ホーチミン日本国総領事館からの注意喚起のメールにも頻繁に記載されているのが、タクシーに関するぼったくりになります。
その多くは空港から乗車したタクシーによるものとなり、その多くが大手タクシー会社以外のタクシーに乗車した際に起きるそうですが、当地の桁数の多い金額に慣れていない方々に一桁多い金額を請求したり、メーターに表示された金額は当地の通貨であるベトナムドンではなく、アメリカドルの金額であるとして高額な料金を請求したりするそうです。また、料金メーターが異常な速さで上がっていき、通常の十倍以上の料金を請求されるといった直截的な手口もよく耳にします。
そして、こちらはぼったくりではないのですが、当地の紙幣を見慣れておらず、さらに前述の通り桁数が多い紙幣に戸惑っていると、運転手から財布を渡すように促され、現金を掏られるという犯罪もあるそうです。
では、大手タクシー会社であれば安心かというと一概にそうとは言えず、大手タクシー会社の車両に偽装した悪質なタクシーがあり、慣れないと間違えて乗車してしまったり、また、最近では配車サービスなどの台頭により客数が減ったためか、日本料理店が多くある地区で客待ちをしている大手タクシー会社のドライバーとのトラブルなども耳にします。
配車サービスや大手タクシー会社ですと、専用の配車アプリケーションがあり、それらを利用すれば、あらかじめ料金が提示されます。いまのところ、これらを利用すれば、ぼったくりの被害に遭う可能性は低くなると思いますので、流しのタクシーなどは極力利用されない方がいいと思います。
そして、こちらは関係がない方もいらっしゃるかとは思いますが、女性が客席に付き接待をしてくれるガールズバーやカラオケでの被害となります。こちらもタクシーの被害と同様に、クレジットカード払いにした際に一桁多い金額を入力されたり、また、スキミングの被害に遭ったなども耳にします。
スキミングの被害は何もこれらの業種に限った被害ではなく、その他の店舗などでも起きているようで、したがって私は当地においてクレジットカード払いをすることはほとんどなく、いつもニコニコ現金払いにしております。
話しはガールズバーやカラオケでのぼったくり被害に戻りまして、そのほか耳にする事例としては、お客さんが女性に提供するガールズドリンクが缶入りの清涼飲料水だったりするのですが、このガールズドリンクの値段が一缶の値段だと思っていたら、グラスに注いだ分、つまり一缶で三、四杯分請求されていたなどがございます。
また、なぜかこれらのお店ではメニューの値段が米ドル表記だったりします。しかし、当地においての支払いは現地通貨であるベトナムドンでの支払いが義務付けられており、当然お会計時にはベトナムドンでの請求書が提示されるのですが、この際、お店独自の為替レートで換算し、予想以上の金額が請求されるといった事例もあると聞いたことがございます。
これらはぼったくりではなく、あくまでお店のルールだと思いますし、また、ごく一部のお店での話しだと思いますので、はじめてのお店ではこれらを確認すれば避けられることだと思いますが、悪質なぼったくり店があることもまた事実のようであります。
そして、最後に買い物におけるぼったくりについてですが、ホーチミン市の数少ない観光名所の一つであるベンタン市場での買い物における事例は、多くの方に膾炙しているのではないかと思います。
ホーチミン市の中心部に位置し、旅行で当地を訪れるのであれば必ず観光先として選ばれる場所だと思いますが、同時に観光ガイド情報を見ても、必ずといっていいほどに『ぼったくり』の枕詞がついてしまう観光地でもあります。
人がすれ違うのが困難なほどに店舗が密集した通路を進み、ベトナム旅行のお土産としてウケそうなデザインのパロディTシャツや、有名ブランドのコピー商品などを販売する店舗を巡るのは大変興味深いものだと思いますが、いざ何かを購入しようと値段をたずねると、高額な金額を提示されることになります。
この提示される金額が悪意があるのではないかと思うほど高額な故に、ぼったくりとの評判になってしまうことは想像に難くないのですが、とはいえ、最初から値段が提示されているわけではないうえに、その金額に関して誤認をさせるような悪質な行為があるわけではないので、私としては、前述のぼったくりの定義には当たらないと考えております。
また、当然その提示された金額で購入するはずもなく、値段交渉の末、お互いに納得した金額で購入するわけで、その値下げ交渉をする行為自体がこの市場における観光の一環のようなものであるとも思えます。
そんなベンタン市場でありますが、多くの日本人のYouTuber の方が撮影に来られているようで、たまに動画を見かけるのですが、その動画の一つが話題となった事件がございました。
私がいくつかのニュースを目にしたところによりますと、あるYouTuber の方が靴下を三足買おうとしたら、70万ドン(2024年9月時点のレートで約4,000円)の代金を提示され驚いた、といった内容の動画であったようですが、これは当地でも大変話題となり、事態を重く見た市場の管理委員会が、その店舗に一週間の営業停止処分を下しました。
一見すると、ぼったくり店が処分されて溜飲が下がる内容であり、多くのメディアにおいてもそのような論調であったと思いますが、個人的には釈然としない気分であったことを覚えております。
確かに動画の題材として、市場での買い物で高額な料金を提示されるという内容は興味を惹くものではあると思います。私は動画のすべてを観たわけではなく、本当に靴下を購入するつもりだったのか、または冷やかしであったのかはわかりませんが、そこで働く方々にも生活がありますので、動画などで一般に公開するのであれば、配慮が必要なのではないかと考えております。
さて、私はぼったくりの被害に遭ったことはないと前述しましたが、これは私の認識でのことで、実際には不当な金銭を支払わされているかもしれませんが、納得のいかない支払いをしたことはございません。
もちろん詐欺やそれに類する行為のぼったくりは許されるものではないと思いますが、いわゆる外国人価格や観光客向けの価格については、本人が納得の上であれば問題なく、たとえ多少高額な支払いであったとしても、それも経験や思い出と思うことができれば問題ないのではないかと考えておりますが、いかがでしょうか?
ところで、以前にぼったくりに過敏な方が当地で起こしたトラブルの話しもございますが、これはまたいずれ記したいと思います。