見出し画像

未来の誰かが綴った日記

「今日は良い日」


今日はシェルター内の空気を入れ替える日
外のわずかに残った使用できる空気を第2層に溜め込んで
それを内部の空気と入れ替える
1週間に1度のこの時、新鮮な空気がシェルター内部に充満する
昔は、こんな新鮮な空気をいつでも感じることが出来たという
父と母がまだ私と同じぐらいの年の頃と言っていた

私が生まれてからは、そんなこと想像したこともない
生まれた時すでに1週間に1度のサイクルだったから

外の新鮮な空気が取り込まれる時、淀んでいたシェルター内部の空気が入れ替わり
清々しい気持ちになる
私はこの日が好きだ。

多分このシェルター内部にわずかに生存する動物や植物たちも同じことを考えているだろう
物々しい音がするけどその音がするとみんな仕事の手を休めて笑みが溢れる
みんなにとっても良い日なのだろう

昔の人たちは、こんなに美味しい空気を毎日感じることができたのに
その存在さえも当たり前になり、いつしか空気を汚し続けた
当たり前の存在を永遠のものと勘違いした
人間は見えないものに対してもっと敬意を払うべきだと思う
敬意を払って大切にしていたら今のような世界になっていなかった

今は、わずかに残った使用できる空気を第2層に1週間溜め続けなければいけない
きっと今は1週間で溜まるけどそのうち1ヶ月になってしまうだろう
そうしたら1ヶ月の間、ずっと淀んだ空気の中で生活しなければいけない

人間は、こんなことを何度繰り返すのだろう
自分たちの生命が永遠にあると勘違いしている
今ある尊いものを感じて大切にしなければいけない
なんでもっと早く気づかなかったのだろう

昔の人は、お金をたくさん持つことが成功だと勘違いしていたのだろうか?
産業をどんどん活性化させて工場は空気を汚し、水を汚した
しまいには、奪い合いが起き戦争が起きた
武器で空気をどんどん汚し、汚れていくことも気づかずに
大切なものを破壊していった

私は昔の人が憎い
残された私たちは、昔のような当たり前の幸せを感じることができない
いつか昔のような空気の綺麗な空間で動物や植物が生き生きとしている世界を感じたい
それが私の夢

残念ながら地球は大きいけど生物が住めるのはこのシェルターだけになった
とっても小さな世界
この限られた空間で私の夢をどうやって実現させたらいいの?

でも1週間に1度のシェルター内の空気を換気する日は、そんな夢を1日だけ実現させてくれているような気がする
だから今日は私にとってとても良い日だ


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?