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かつて夫が推しだった私へ~無職の夫と私の記録~ #5

過去「推しを卒業した」ことがあるか?

―私は「NO」だった。

「推しを卒業」とは、例を挙げるなら「福山雅治を推していたけど彼の結婚を機に、ファンをやめた…」といった経験である。

そもそも私は過去に、芸能人やアイドルやアニメキャラや声優といった「推し」がいたことがない。

ずっと夫だけ。
夫だけを推していた。

なので推し活が終わるとどうなるのか、全く未知の世界だった。

さらに、ここでの問題は、私自身が推し活を終わらせたいなんて1ミリも思っていなかった点である。

なぜなら、無職の夫と生活している今の環境は、私の夫への「推し心」のみで成立していたからだ。

つまり推し活の終焉は、夫婦関係や家族関係の破綻につながる。

「私が夫を推せなくなったら、きっと家族がバラバラになる…」
その恐怖心である。


もしアイドルの推し活をやめても、自分以外のその他大勢のファンが、そのアイドルを支えてくれる。

しかし夫の推し活をしているのは、今や妻の「私」しかいない。

そして「4年無職・顔立ちは良いが肥満体型」に進化(!)した夫を推してくれる他の女性が、すぐ見つかるとも思えない。

「私が夫の推しを辞めたら、ダメ、絶対。」
こんな冗談めいたスローガンのような言葉が私を支配するようになった。

しかし、心は正直なものである。
擦り減っていく「推し心」と比例して、私は夫の言葉に心から笑えなくなってしまった。

むしろそれを通り越して、夫の行動や言葉1つ1つに、心で反発するようになってしまったのである。

もともと私より数万倍も繊細な夫は、私の異変にすぐ気づいた。

そして夫が出した答えは「妻が浮気をしている」だったのである。

浮気を疑われた私は、正直心の中で笑ってしまった。

「ちがうの、浮気じゃなくてあなたを推せなくなったの」
と必死に説明している自分を想像して。

#5 に続く

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