かつて夫が推しだった私へ~無職の夫と私の記録~ #2
「推しは夫だ」
そう思っていた私の結婚生活は、おそらく常識を逸脱していた。
アラフォー女性に分かりやすく例えるならば「キムタクがずっと自宅にいる」状態だ。
だから夫が寝るまで寝たくない、メイクを落とした顔を見せたくない…
今考えると苦痛そのものな生活(笑)
しかし自宅にいる時間ずっとドキドキさせてくれていた夫の存在は、私の全てだった。
夫が少し不機嫌そうな表情をすると「何か気に障ることしたかな…」と不安になる…
夫の言った言葉が聞き取れないと「ごめん、何て?」と1回しか聞き返せない…
とにかく私の心は夫といる間、ずっと忙しかった。
そのことを話すと「信じられない!」と友人たちには呆れられ馬鹿にされていたが、「キムタクだよ?緊張せずにいられる?」と聞くと「キムタクならねぇ…」という回答。
「いやだから『キムタクなら…』じゃなくて、何ならキムタク以上なんだよ、うちの夫は!」
と本気で言い返していた。
救いようがない推しへの崇拝のように、私は(冗談抜きで)キムタク以上の夫と生活していたのだ。
…これが私の『夫推し』の振り返りである。
そんな推し活に少しずつかげりが見えはじめたのは、コロナを機に夫が働かなくなったときである。
飲食店オーナーだった夫は「もう飲食業界はダメだ」と言い放ち、あっさりお店を手放した。
それから4年…今現在も夫は無職である。
ここから私は無職の夫に対して「仕事をしなくなる」=「推しポイントが減る」という方程式を嫌というほど思い知ることになる。
なぜなら夫は仕事がとてもできる人だったからだ。
店で調理している夫を見て「かっこいい」とつぶやく女性客たちに、私は心の中で優越感を感じていた。
つまり、そんな夫の「かっこいい」ポイントが減点したのである。
例えると「バラエティー番組の企画でスポーツをさせても完璧」だったキムタクが「運動オンチになった」くらいのポイント減。
正直、夫が無収入になるよりも『推しポイント』が減ってしまったほうが、私にとっては辛かった。
#3 へ続く
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