優しさを安売りしない人
初対面の印象は最悪
柄の悪い関西弁と意味のないでかい声
怒っているのか笑っているのか
判別できないしゃべり方
どう見てもミナミの帝王に出てくる
チンピラにしか見えない外見
そんな店主のヤバそうな店で
突如働くことになった
30代の頃のお話
行くあてもないなら
ここで働きな
店長はダミ声で初対面の私にそう言った
その頃私は家出をしていて
他に行くところもなかったから
正直、怖さよりありがたさの方が勝った
しかし
いざ働いてみると
こんなチンピラみたいな(何度もすみません💦)
料理人の店なのに
謎の大繁盛👀
ひっきりなしに客が押し寄せてくるものだから
休憩も昼食さえも取れない😢
食べていいよと言われても
食べられる訳ないでしょ!ってこっちも
意地になって働いた
この店長
ただ者ではなかった
お客の好みに合わせてメニューを
その都度勝手に変えてしまうのだ
たとえばこの客はシューマイが嫌いだから
春巻きに変更。こっちの客は唐揚げ好きだから
餃子を減らして唐揚げ増量!
あっちの客は… って覚えられないって!
店長は全ての常連の好みを把握していた
少しでも間違えようものなら
どアホッ💢
迫力ある関西弁が飛んでくる
明日こそ辞めてやる~
毎日思いながら…1か月
ようやく店長の関西弁にも免疫ができ
仕事も楽しくなってきた矢先に
私は此処を離れなければならなくなった
不義理なことをして本当に申し訳ないと
私は真夜中の電話BOXの中で
ひたすら謝ることしかできなかった
金はあるか? 行くとこはあるか?
初めて聴く店長の低い声
明日からあの忙しい店は大丈夫だろうか
店長は一言も責めないばかりか
私のこれからを心配してくれた
その優しさに
涙が溢れて止まらなかった
後日談
その時私の通帳に
バイト代とは別に
10万円が振り込まれていたことを
何日も後になって
知りました。