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上からの目線

駐車場に車を停めて降りようとした時、スカートの上にだんご虫が居るのに気付いた。
一体どこから??
スカートを軽く摘んで、だんご虫を乗せたまま車から降りた。

駐車場のすぐ後ろの小道にポトリと落とす。
ああ!しまった!仰向けに落ちてしまった。
だんご虫はうつ伏せになろうと懸命にもがいている。
ごめん、と思うものの直接触るのは無理。
かといって引っくり返すための物が思い付かない。
必死にもがくだんご虫。
どうしようもなくて、かといってそのままにして立ち去ることも出来ずに見ていた。

もがいてもがいて疲れたのかピタッと動きが止まる。
がんばれー。
ちょっとの間をおいて、またもがき始めた。
小道は少し傾斜になっていて、もがくだんご虫が少しずつずり落ち始めた。
もがいてもがいて、じわりとずり落ちて、休憩して。

傾斜の先には平らな部分がある。
ここまでずり落ちたら角度が変わって、きっとうつ伏せになれるはず。
ともかくここまでずり落ちて来い。
事の発端は私だが、それは棚上げして心の中でだんご虫を励ます。

まただんご虫の動きが止まる。
それこそ必死であがいているのだ、消耗も激しいだろう。
でも諦めるなよ、もう少しで角度が変わるぞ、きっとうつ伏せに戻れるぞ。
あと少し、あと少し。
じわじわずりずりと移動してついに平坦な所まで来た。

さあ、どうなる?
よっ、
ジタバタするだんご虫が横向きにまでなった、もうあと少し!
こら、しょっ、
ああ、やった!ついにうつ伏せに。
だんご虫は何事もなかったかのように去っていった。

やれやれ、よかったよかった、無事に到達出来た。
安心してその場を離れようとして、ふと思った。
私達も同じかもしれない。
なにか不測の事態が起きた時、何とか打破しようともがく、あがく。
あぁだめかも、と諦めかけて、やはりもう一度と奮起して何とかしようともがくあがく。
そしてじわじわと解決に近付いていく。

尺が違うだけで、視点をぐいっと上げて私達を見下ろしたら、だんご虫と同じかもしれない。
がんばれー諦めるなー、もがけ、あがけ、解決に近付きつつあるぞー!と手は出せないけれど、誰かが見守り応援してくれていたりして。