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焼ける

商店街を歩いていたら
向こうから男の人が怒鳴りながら歩いてきた。
あまり人のいない夜のアーケードに怒鳴り声が響く。
思わず笑ってしまった。
人が激しく怒っている場面に出くわすと
だんだん笑けてくる癖がある。
「何で笑ってるんですか!」と
怒りに油を注ぐ結果になったこともある。
 
私もよく怒る。
かつて激しく腹が立ったことがあった。
目の前にいる人の物言いと態度に
腹が立って腹が立って手が震えて字が書けなかった。
ぶるぶると震える手で書いたら
いつも以上に判読不可能な文字となった。
あまりにも震えが止まらないのを見ていたら
だんだんと笑けてきた。
私は何をそこまで激しく怒っているのだ?
それ以降、あまりに激しく怒っている人を見ると
笑えて来てしまう。
 
そういえば昔、知り合いが夜の商店街を歩いていたら
突然、見ず知らずのおばさんに
「地獄へ落ちやがれ!このクソ野郎!」と
吠えられたことがある、と話していた。
夜のアーケードに吠え声は大きく響いたことだろう。
一体何があったのだろうか?
しかしその状況を想像するとまた笑えて来る。
 
「怒りは焼ける」と言った人がいた。
怒りは時に起爆剤や推進力ともなるが
激しい怒りを抱え続けることは
自分自身の身を焼いてしまうのだろう。
怒りを力に変えたら
あとは笑いへと転化していけたら、と思う。
人の怒りに油を注ぐことになってしまってはいけない
とは思うが。