七福神日誌50

六時起床。
京都二日目。
今日は着物をきて祇園で写真を撮ってもらう。
ウェディングフォトといって、撮った写真は結婚式の招待状やウェルカムボードに使うとのこと。
七福神バルチカ店は、本日イノゲート大阪ビルが何かの工事で閉館のためお休み。
第四ビルの本店は通常営業だが、そっちはシロさん、ミツさんにお任せし、俺と社長、サワチーフは休みを頂くことになった。
七時から、着付けの店にいってまずは衣装を選ぶ。
妻は白無垢や色打掛が棚にずらりと、何十着もある
中から、しばらく悩んで白無垢の、特別もこもこした生地に桃やカブの実の柄がたくさん描かれたものを選ぶ。
一方俺は選ぶといっても、俺の身長にあわせた紋付き袴の上下セットがひとつ出てきてお兄さんはこれでいいですかと聞かれ、はいそれでいいですと答えてそれに決まる。
別にすねないが、こういうのはやはり花嫁のための行事なのか、扱いの熱量も男女でくっきりと差がある。
その後、俺の着付けはものの五分で終わり、妻の用意には女性スタッフが二、三人がかりで二時間ほどかかった。
その間、控え室にストーブをつけてもらい本を読んで過ごす。
妻はおしろいに口紅を塗って、髪には花や水引などあれこれ飾ってもらい、着物の下にはタオルを八枚も詰めたとのこと。
では、と両側からカーテンが開かれ、まん丸の妻が現れて思わず笑ってしまった。
小物もすべて白で揃えたので上から下まで真っ白で、ただ口紅の赤だけが喋るたび火みたいにくるくると閃く。
綺麗だと思った。
では行きましょうと待合室に通されて、十分ほどタクシーを待つ。
すっかり上機嫌で、外は寒いからとバッグから次々カイロをだしてよこす妻を、見慣れてくると鏡餅みたいだなと思い、そう伝えると誰がおモチのオバケですかといって怒られる。
九時過ぎに出発。
祇園といっても意外と広いが、今回いったのは祇園白川というエリアで、昔うっかり三味線修行の真似事をしていた時期によくお師匠につれられてここで保護ネコ活動をしていた。
つくと、既に両親がきて辰巳神社の回りをうろうろしている。あらかじめ時間を伝えていてみにきてくれたのだが、挨拶もそこそこに、どうもすぐ側の茶店が気になって仕方ない様子。
たしかに団子の焼けるいい匂いがして、店の前にたくさん人が並んでいる。
町には今もネコが多く、川沿いの梅の並木の隙間にちょこちょこ体を丸めていた。
梅は二分咲き。
ちょっと梅がみれたなと喜んでいると雪が降り始める。
本降りで、これは吹雪といってよい。
しかし空は不思議と端っこまですこんと晴れて青く、「関西ではこれをタヌキの嫁入りといいます」と妻が教えてくれる。
ネコ顔、イヌ顔、キツネ顔と、人相にも色々あるが、たれ目に愛嬌、タヌキ寝入りに腹太鼓がわが家のたしなみで、やはり俺と妻は属性としてはタヌキ夫妻ということになるか。
大雪のなか、カメラマンのお兄さんが渡してくれた紅白の傘をさして、梅もみれたし雪もみれたと変にはしゃいで撮影をはじめる。
寒さはどんどん過酷になる。
切れ切れの息が綿ぼこみたいに白い。
袖に隠したカイロをたえず握りしめ、凍った脚を引きずって、並木の下や小橋の上、通りの中へと、あちこち移動する。
どんどん写真を撮る。
すぐ後ろから父と母がついてきて、なぜかふたりで俺たちが撮ってもらった場所に毎回同じようなポーズで立って、カメラのお兄さんに再度写真を撮らせている。
途中、両親は団子休憩で離脱。
かわりに通りがかった旅行の一行か、外国の方がわらわらと集まってきて拍手され、しばらく一緒に記念撮影したり、おめでとうございますといわれてサンキューベリーマッチと返したりした。
昼前に撮影が終わり、一度両親と別れて着付けの店に戻る。
もとの服に着替え、店をあとにする。
疲れたが、思いのほか早く終わったのでもうひと観光するかと、京阪三条駅でまた両親と合流して四人で伏見稲荷にむかう。
千本鳥居を少し拝むくらいのつもりだったが、参道の飯屋でうどんといなり寿司を食べてうっかり体力を回復。
いまだ激しい雪も降り続けるなか、けっきょく山をぐるりと一周、全部の鳥居をかけぬける羽目になった。
夕方、西宮に戻る。
くたくたで、順番に風呂に入って早々に寝る。

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