七福神日誌44
五時起床。
ガジュマルに水をやる。顔を洗って出発。
今日は早番で、六時から十七時までの勤務。
年末年始のラッシュも徐々に落ち着き、ようやく朝も、仕込みの皆さんとコーヒーを飲みながら作業できるくらいの余裕ができてきた。
八時にスギさん、ムラさんが合流。
店内清掃の後、二人で肉と野菜、シーフードの分担に別れて串を刺しつつ、とにかく野菜が高すぎると口々にぼやいている。
と、そこへ出入りの八百屋の若旦那が現れて、注文の品とは別に間違えてりんごを持ってきましたという。
りんごは一玉三百六十円。
野菜も高いが果物も馬鹿にならない。
こういったものは全て時価売りで、うちは野菜も魚も毎朝中央市場に卸されたものを直接届けてもらっている。
野菜、果物は昨年の猛暑の影響で値段の高騰しているものが多く、りんごもその一つだが、とにかくでかくて重いやつを持ってきましてん、頼まれてないけど。どうぞお願いします、七福神さんのために俺、頑張ってチャリ漕いで来ましたやんか。
という若旦那は短パンにサンダル履きで、上だけ厚いダウンを二枚重ねで着こんでいる。手には黒い指ぬき手袋。
これはこの冬の彼の一貫したスタイルで、人それぞれだし別にいいのだけど、横からスギさんに「あんたそれ変やで、もっとちゃんとしなさい」と注意されて今日も嬉しそうにしている。
とりあえずりんごは貰っておいた。
夕方、社長に引き継いであがる。
妻にこれから帰りますと連絡すると、東通りの鳥皮で飲んでますと返信がある。
ムラさんも誘って顔を出すと、鳥皮二階のテーブル席で妻、姉さん、ユウさん、サワチーフのお義母さんなどが集まって、すっかり出来上がっている。
聞くと昼前から梅田ではしごしていたらしく、最初がカニで、次がベトナム料理、中華、ヒレ酒にサイゴン、マッコリも飲んで、昼間のことはもうよく覚えていません、しかし楽しかったですと妻がいって、よくいった偉い、それでこそ弁財天、と姉さん。
焼き鳥にビールや焼酎を頂いて、二十時頃まで滞在する。
その後、姉さんたちを梅田駅で見送り、俺たちも阪急電車に乗ってわが町に帰る。
風呂に入るとすぐに寝てしまった。
翌朝は十時に起きる。
社長から急な知らせで、これから七福神本店に雑誌の取材が来ますと電話があり、立ち会いのため急いで準備して出かけていく妻を玄関で見送って俺は近所のドコモショップへ。
このところケータイの調子が悪く、具体的には本体の背中がはげて常時機械の中身が見え、とてもパンクな見た目なのでそろそろ買い替えたいのだが、一人で行っても店員さんから何を説明されているのかわからず、帰って妻と相談しますといって早々に退散する。
夕方まで家で映画を見て過ごす。
十七時に妻と駅で待ち合わせ、電車で今津駅まで行く。
今日は西宮神社の祭事、十日えびす初日の宵えびす。
こういうのはちょっと歩いたほうが有難味があるかなという話し合いで、今津で降りて一駅ぶん妻と歩きはじめたが、なかなかたどり着かない。
途中で調べると約二キロもあった。
大変腹が空く。
ついに阪神西宮駅から神社まで続く屋台の列にさしかかると俺はイカ焼き、からあげ、べっこう飴などを買い食い、妻は箸巻き、カステラ、焼き芋などを買い食いし、各自にごり酒の熱燗、ホットサングリアなども飲んで、ほろ酔いで神社にたどり着く。
参拝をすませ、お店に飾る福笹を購入。
おみくじを引くと俺は末吉で妻は吉だった。
俺はこのあいだ清荒神で大吉を引いているので、今回のはなかったことにして柵に結んで帰る。
妻は前回も吉で、今回ので足して大吉になったといって喜んでいた。
帰り道では甘酒を飲んだ。