見出し画像

The Rolling Stones / Their Satanic Majesties Request (1967)

サタニックを、ストーンズの作品という先入観で聴くから作品の評価を見誤るのであろう。たしかに彼らの長い歴史の中で異質なのは明らかである。しかしサイケデリック全盛期においてこのアルバムから溢れ出す万華鏡の如き音の世界は唯一無二である。

ドラッグに溺れメンバー3人が逮捕される中、8ヶ月にも及んだレコーディングの果てに完成した本作は、まごうことなき努力の賜物。色眼鏡を外し、サイケ期の一枚として聴けば、非常に純度の高い名作だ。そこで初めてサタニックの凄さを痛感させられる。ストーンズ特有の疾走感はここでも健在。こんなにも面白みに満ち溢れたサイケロックは他に例を見ない。フロイドの”夜明け前の口笛吹き”の方がよっぽど難解である。

サイケ感に溢れたUKオリジナル盤3Dジャケット

次作”Beggars Banquet”以降のスタジオ4作が最強であるのは言わずもがな。しかしブルースカバーからスウィンギングロンドン期を経てストーンズのオリジナリティを確立していくまでの大転換期に産み落とされたこの問題作を僕は評価したい。まとまりに欠けていようが構わない。他に例を見ない混沌とした雰囲気が、最高にカッコいい。ビートルズの”SGT. Pepper’s Lonely Hearts Club Band”は、サイケデリックロックの金字塔だが、”She’s A Rainbow”ほど時代を反映したアンセムは存在しない。(トータルコンセプトアルバムという観点では間違った解釈かもしれない) 何よりBrian Jonesの貢献が嬉しい。このレコードを供物としてCheltenhamにある彼の墓へ持参したほど好きだ。


ブライアンの墓にはたくさんの花が手向けられていた


名作がずらりと並ぶ彼らのディスコグラフィーで本作は”Beggars Banquet”を僅差で抜き第4位。ラウドミックスMono盤の持つパワーは凄まじいが、Stereo盤の音の広がりも捨て難し。”Gomper”で聴かれる混沌としてオリエンタルな雰囲気に満ちたトリップ感はStereo盤に分がある。


UKテストプレス ステレオ盤


そして極め付けは3Dジャケット。ここは絶対にオリジナルに拘りたい。文句なしに世界一カッコいいアルバムジャケットだ。マイケルクーパーは彼らの要求に対し見事に応えてみせた。制作中に付けられた仮タイトルは”Cosmic Christmas”。どちらも甲乙つけ難いが僅差でサタニックかな。どこまでもチャーミングで、時に牧歌的なとこもまた素晴らしい。好きにならない理由が見当たらないサイケ期の超名盤。

US Mono アセテート盤

いいなと思ったら応援しよう!