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Wisp / Pandora (2024)

マイブラ直系。わずか19歳のナタリー・ルーが作り上げたこの世界観に驚嘆する。TikTokやInstagramでカルト的な人気を博し、ついにはNMEにも取り上げられるようになったシューゲイザー界の超新星。


ディスコやポップパンクが、現代の音響領域に注入されて以来、それらのサウンドスケープに惚れ込み、その影響を新たな成功に持ち込もうとする新世代の音楽愛好家たちによって、過去のサウンドをリメイクする風潮がみられるようになった。


その挑戦は時として、本来望んだものと異なる方向に帰結する可能性もある。しかし、そのノスタルジックな流れは止まらず、一般的なオルタナティブロックシーン、特にZ世代の美学への熱狂を後押ししたグランジやシューゲイザーに対する熱狂的な関心を高めている。この”Pandora”はその最たる例だ。

横たわる天使が目をひくジャケ写


甘美なメロディと透き通る声、それと対極に位置する轟音ギターのコントラストが奇跡的な化学反応を引き起こす。シューゲイザーの魅力はそこにある。Nu-Gazeを再定義したその才に、ただただ脱帽する。


EP内の陽にあたる“Luna”と”Mimi”が秀逸。”Luna”は、地球最後の日に、真っ赤に染まった空から巨大な隕石が降ってくるのを見ているような光景を想起する。そう、この曲は聴き手の想像力を最大限にまで高める。このような音楽は極めて稀有である。最後の”Mimi”に達する頃には、完全にWispの虜となる。


それにしてもナタリーって一体何者なんだ?ぱっと見はキティやスヌーピー好きの普通の女の子なのに、どうしてこんなにも独創性に富んだ音楽を作れるのか。Grimesとは異なるベクトルの才能の持ち主であることは間違いない。これから先どんな音楽を届けてくれるのか、待ち遠しくてたまらない。


宇宙空間を漂う心地の極上のサウンドトラック。

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