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フィギュアスケートおじいさんに勝手に涙する奇跡
正月休み、我がたぬきち家は初めて「ひらパー」こと、ひらかたパークに行った。
「どこに行こうか?」と考えながら、ふと「こだぬきずにアイススケートを経験させておくのはいいかもしれない」と思った。
たぬきちが子どもの頃は、よくスケート場に連れて行ってもらった記憶がある。
生まれて初めてスケート靴を履いて、氷上に立ったこだぬきずは、、、
ブチ切れていた
なぜか、恐怖からブチ切れている。しかし、流石の小学生。ブチ切れつつ、スケートリンクを囲む塀にもたれかかりながらでも、何周かする間には、ブチ切れ恐怖は、「面白さ」に変化していった。
「スケート行きたい!」
2024年までは知らなかったスケートを知った新生娘こだぬきの2025年。事あるごとに、スケートに行きたいと言うようになった。
そして、再び訪れたたぬきちが在宅の土曜日。「どこ行きたい?」と尋ねると、娘こだぬきは、待ってましたと、「スケート!」と答えた。
「そうだろうと思ってましたよ」
どうやら、ひらパーまで行かずとも、スケートリンクがあるらしい。
今回出向いたスケートリンクは、市の施設で、ひらパーのスケートリンクとは違い、上手というかそれ以上の上級者たちがちらりほらり。
むしろ、ちょうど我が家が行った時間が昼飯時で、遊びに来ている人より、練習している人が多い。
ひらパーの、大体の人が壁にしがみついたり、すっ転んだりしている光景を想像していた、こだぬきずはすっかり怖気付いてしまった。
しかし、のらりくらりスケート靴を探している間に、遊びに来た人たちも、ゾロゾロと増え出した。
靴を履き終えて、氷上に立つ頃には、初心者の姿が溢れ、2人もホッとした様子で、滑走し始めた。
ひらパーでは30年ぶりに、たぬきちも氷上の人となったが、今回は遠慮させて頂いた⭐︎
「怖いんだもん(●´ω`●)」
今回はカメラマンをしながら、リンクの外で、スケートに興じる人々を眺める。
老若男女さまざま。
そう、ひらパーの時より、高齢の人が結構いる。そして、そういう方々は、当然、足?!に覚えのある方達で、姿勢よく、氷の上でも立ち姿が美しい。
練習中の人も多く、TVでしか見たことのない回転技を見せてもらったり、ガタイのいい男性がすごいスピードで、ごった返す人の間を縫っては、急ブレーキで止まる様子に、「あの人はアイスホッケー経験者かな」なんて考えるのもまた楽しい。
そんな中、リンクの中心部分にいる、高齢の男性と中年の女性の二人組が目についた。
初心者はスケートの円周側にいて、中心にいるのは経験者。身体のラインが出やすいピタッとした運動着で、高齢の男性が優雅に両手を広げて、円を描いて滑っている。
ロングのダウンコートを着た中年の女性は、笑顔で手を叩いたり、親指を立てたりして、男性を称賛していた。
滑っているのは、男性ばかりで、女性が嬉しそうに見ている。会話まではリンクの外のたぬきちには聞こえない。
男性が自分の得意分野に女性を引き込んだデートかしら?なんて思って見ていた。
何度か回ってくるこだぬきずを見送って、再びリンクの中央に目をやると、ロングダウンを着た中年女性が、男性よりももっと優雅に滑っている。
伸ばした手は美しく広げられ、指先まで意識しているのがわかる。両足は180°外側に向けられ、男性よりもずっと余裕がある。
「そっか。女性が先生で、高齢の男性が生徒なんだ」
マンツーマンのフィギュアスケートのレッスン。女性の演技のあと、男性はその同じ動作を繰り返している。
「元経験者が、時間ができたからもう一度やってみよう」というよりは、なんだか「時間とお金ができたから、昔からやってみたかったフィギュアスケートに挑戦した」って感じ。
勝手にそう思った。
そんな勝手な思い込みで、勝手に感動して、涙が出てきた。
っていうか、事実はなんだっていい。本当は当初の見込み通りカップルかもしれない。男性はフィギュアの経験者かもしれない。
ただ、これはハズしていないと思うことが一つ。
「彼は、やりたいからやっている」
しばらく彼らから目が離せずいたが、「まもなく氷上整備を行います」のアナウンスで、我に帰った。
氷上整備の自動車がリンク内に入り、スケート場にいる子ども達は釘付けになっていた。
20分ほどの整備が終わり、再びリンクに沢山の人が戻った時にはもう、2人の姿はなかった。
「帰ったのかな」
そう思っていると例の男性が、たぬきちの目の前をスーッと通り抜けて行った。女性の姿はない。
「レッスン終わったんだな」
そう思って、またドキッとした。
「レッスン風景を見たのは奇跡だった」と思ったから。
上手に滑っている高齢の方は案外たくさんいる。レッスン風景を見ていなければ、彼の滑走もただの風景でしかなかなかった。
勝手に泣くなんてことはなかった(はず)し、記憶にも記事にもならなかった。
この奇跡が何を意味してるかは、わからないけど。とりあえず、記事になってよかった。
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