あなたの声はとびっきり
「お母さん、私の声ロボットみたい?」
ある日、娘がこう尋ねる。
「全然!ロボットじゃないよ」
「お母さん、私の声ガラガラ?」
別の日、娘が尋ねる。
「全然!ガラガラじゃないよ」
「なんで?」
今度はたぬきちが娘に尋ねる。
娘は答えないが、誰かが娘にそう言ったことは明らかだ。普段はひょうきんな彼女の表情は強ばっていた。
娘の声は、低くて少しかすれ気味。これは生まれた時からで、ハスキーな泣き声の赤ちゃんだった。
ハスキーボイスは、8歳の少女には少々不釣り合いかもしれない。そして、8歳のクラスメイト達には、不思議な印象を与えているのだろう。
娘にはまだ分からない。
「個性的」であることが、どんなに財産なことか。
世界中の声を武器にするアーティスト達がどれだけ自分の「声」に個性を求めていることか。
澄んだ
明るい
愛らしい
声ももちろん魅力的だが、
かすれた
低い
かっこいい
声だって、同じくらい魅力的だ。
いや、より一層の魅力となることがある。
たぬきちは、大好きなSia のChandelierを検索して娘に聞かせた。
少女に聞かせるにはふさわしくない(!)が、アルコールと薬でぶっ壊れた女、Sia自身を、喉を絞り上げて、叫ぶように歌い上げる。
心が揺さぶられ、鷲掴みにされるのは、メロディと歌唱力だけではダメで、Siaのこの声だからだと思うのは、たぬきちだけではないはずだ。その証拠にこの曲はとんでもないスーパーヒット曲。
娘は黙って最後まで聞いている。
「世界で活躍するアーティストの声は、みんな個性的なんやよ。むしろ個性の無い声のアーティストなんておらん」
娘は理解できたかどうかは分からない。でも、たぬきちは言い続けるつもりだ。
誰かがあなたの声を「ロボットみたいだ」「ガラガラだ」という度に、そんな声より大きな声で「あなたの声はとびっきりだ」と。
先日、参加した懇談で、「実は、、、」と担任が切り出した。
「授業での娘さんの発表を聞いた感想に、ある生徒が、『ロボットみたいな声だけど、上手だった』と言ったことがありました。また、別の生徒が娘さんの声を、『ガラガラだ』と言い、娘さんが泣いたことがありました。それについて、発言した生徒には、ともだちの涙を見てどう思うのかと話をさせて頂きました」と伝えられた。
なるほど、そういうことだったか。
「娘さんからお聞きでしょうか?」先生が尋ねる。娘が詳細を話さないので、知らなかったが、声のことで何か言われたであろう事は感じていたことを伝えた。
「ご心配をお掛けしました。今後もクラスの様子に気をつけます。ただ、言った生徒も、いじめようとか、悪口で言ったのではないんです」そう続ける。
そんなことだろうと、凡そ予想していたし、8歳、9歳の子どもが口にしたことに悪意があるとはこちらも考えたくない。それに、たぬきち自身の思いはそこにはない。
「心配はしていません。娘には海外のアーティストの曲を紹介し、自分の個性に自信を持つべきだと話しました」
それを聞いて、先生は驚いたように会話に間が開いたが、
「私もあなたの声か好きだと伝えました」と言った。
今はまだ8歳、9歳の幼いクラスメイト達もいつか気づくだろう。
「彼女の声はとびっきりかっこいい」って。
だから、どうか、自分の声を個性を愛し、大事にできますように。
あれから、時々娘が「シャンデリア〰️」と口ずさんでいる。
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今回のお題は「こえ」