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#大切にしている教え
私の父は「けったいな」人物である。
この「けったいな」というのは関西の方言で、「めったにない変なさま」を表すことば。
「うちのお父さん、けったいな人でさ」と友人や同僚に今まで何度か話す機会があったが、だいたい「いや、うちのお父さんの方がけったいやで」と返される。
どこの家でも「父」はけったいな存在なのかもしれない。
そんなけったいな父とつきあう上で、1番困ることが会話だ。
出番がくると、一通り自分の持ちギャグを連発する芸人のように、父には決まったフレーズがあって、顔を合わせば、それをひたすら言い続ける。
その口上が終わり、こちらから話しかけるのだが、それには答えてもらえない。
コミュニケーションに重大な問題を抱えているように思われるかも知れないが、細々とではあるが自分で事業をし、娘3人を養ってきた人である。
家の外では会話できているに違いない。少なくとも母とは会話できていると思う。多分。
私の「大切にしている教え」はそんな父からの言葉。それは、苦労の末やっと就職が決まった20年も昔に遡る。
初めての社会人生活に不安で押し潰されそうになっていた私を見て、父がぽつりと話してくれた。
「仕事は上手くやろうとしなくていい。一生懸命やればいい。」
あれから、転職もし、結婚を経て、子どもを2人産み育てている。
「上手くやらなければ」と思うと全身が緊張するようなシチュエーションに何度も遭遇してきたが、その度に「あ、そうだ。上手くやろうとしなくていいんだ。一生懸命やればいいんだ。」と思うと、ふっと肩の力が抜けた。
人生で困った時、悲しい時、いつも父が励ましてくれた。なんて事は全くなけったいな父がたった一度、私にかけてくれた意味のある言葉。
それが私の大切にしている教え。
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