第12回俳句四季新人賞応募作

本村早紀です。以前応募した第12回俳句四季新人賞の30句「尾骨」を掲載します。今見てもちゃんと面白い作品もある一方、これはないだろ、みたいな句も多く、この時より多かれ少なかれ成長した部分はあるのだろうと思えます。

※【】内はルビ
水打つて魂二十一グラム
棚のうへ綿埃みな朝焼す
聖画に蠅マネキン滅ぶ雨の午後
殄滅を選ぶ神がみ巴旦杏
トピアなるからすのゑんどうがこはい
あめつちに押しつぶされし野外劇
滴りや崖路【ほきじ】に道祖神あまた
レモン熟る獣使ひの青き痣
鳥渡る国境といふ自傷痕
末枯やみな嵌め殺し窓の塔
いちじくや岐【ちまた】に立つて泣いてゐる
月面は胎児のかたち石榴割る
シーソーの空へ近づく九月尽
幽天を炎【も】える機体の無音かな
この街に万の注射器クリスマス
北風や透明人間の訃報
冬の虹遺骨に焼け残る銀歯
狼やひとりに蠟燭の匂ふ
天秤をこはしてまはる神の旅
冬の丘冬の車輪の自転せり
ふくろふや星を食ふ星に食はれる
英文の甃【いしだたみ】めく木の芽時
朧かな無頭の人とすれ違ふ
めかりどき時計の螺子の二つ三つ
ロボットに尾骨を探す日永かな
ホームドア固く鎖【とざ】して飛花落花
使い切る電池の軽さ水温む
しびれつつおたまじやくしの霽れてゐる
常闇や棺を泳ぐつきひがひ
鳥飢ゑぬ蛍光色の弾丸で

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