早紀

書けることを書きます。こちらで書くことは基本孤独に書かれます。

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最近の記事

第12回俳句四季新人賞応募作

本村早紀です。以前応募した第12回俳句四季新人賞の30句「尾骨」を掲載します。今見てもちゃんと面白い作品もある一方、これはないだろ、みたいな句も多く、この時より多かれ少なかれ成長した部分はあるのだろうと思えます。 ※【】内はルビ 水打つて魂二十一グラム 棚のうへ綿埃みな朝焼す 聖画に蠅マネキン滅ぶ雨の午後 殄滅を選ぶ神がみ巴旦杏 トピアなるからすのゑんどうがこはい あめつちに押しつぶされし野外劇 滴りや崖路【ほきじ】に道祖神あまた レモン熟る獣使ひの青き痣 鳥渡る国境といふ

    • 俳句連作「ならびかえ」

      連作「ならびかえ」を公開いたします。他でもない自分のための連作です。 絶念の水は顱頂にそそぐ雲間より 彫刻室へ廊永ければみな濡れる 疎水の舟 調律の気配は赤 紀伝より丸呑みの㶜(おくぶか)き音 ならびかえ環形動物そこびかり ピカイアの愛撫してドアノブの肉 権現(ていくおーばー)海に溶け出す胡瓜(きゅーかんばー) ぱらいそに春の直角 画家の自死 宇宙は字母に塗れず街に塔多く 五色唐辛子 階下の汝よ、 来るな

      • 短歌『みずいろ』

        仔山羊は貴方を 滑稽と思うこともないから 思う存分に泣きなさい 雷鳴は湖をあざむき 人は口あけたまま 山巓へ直立(すぐた)つ みずいろのZ軸から君は来る 異星語は喃語めいて聞こえて 岸の火を見遣る瞑目熱(あつ)かへば あなたはすでに隠喩であった 蛹化とは星の忘却 喉渇きつつ笑うことなくて、 鱗粉 生き延びてしまった、 生き延びてしまった、 まだこんなにも言葉があって、

        • 自由詩『シロサイが燃える』

          自由詩を公開いたします。発せられるべき声を焼却する歪んだ大きな力をそのままにしたくない。 シロサイが燃える シロサイが燃える うめきが軋む 氷河が壊れたらしい 太古のバクテリアの 小さな音楽が 開陳される そのシベリアの便りを 聞いた旅行家の 旅行を諦めた手記 歯車の錆のような色の 古びた羊皮紙は 屠りの記憶 うめきが軋む シロサイが燃えている シロサイが燃える 体内に巣食う 寄生虫のうごめきに耐えられず 森の湖に落ちる 確かな不協和音を 聞いた祈祷師の 深き嘔吐 跪拝

          曝露

          はじめまして。本村早紀と申します。自分の思考の過程として俳句を掲載したいと思います。ご笑覧ください。 曝露 死に曝露しけり 海市をぶつ壊す muscle(筋肉)のmaschile(男性系)の一月かな 眼のなき法の烏わらひて港開く 肉(しし)の花浮きて運河に酔うてゐる 王の墳(はか)狂犬の肺くづれゆく 柘榴転がす音の正しさ井戸に競ふ 司祭は針を擲つ 焼野は渦を孕み 楽師の丘眼窩に莧(ひゆ)の集まり来 偽船に人か船に偽人か星腐る 涅槃西風銀河を焼べる船大工