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エナジーバンパイヤ


「はぁー」

「はーぁ」

「はーーーぁぁあ」

”はい、吸ってくださーい”

私は、ため息回収係だ。

「ちょ、違うよ、腰たいして、の”はぁー”よ」

”審議ですね”

”んー、判定負けです”

”あなたは、今15年分のhappyを放出致しました、残念です”

毎日、こんなことを繰り返している。

「eriちゃん、最近厳しくない?」
そう、私は最近周りに厳しい。

ビシビシと、
ため息を取り締まる、
ため息回収がかりである。


最近、中途入職の男性職員が入った。
院内は、その職員が入ってから、
ピリついている。

何かと、はぁ、それは私の仕事でしょうか?
と、口をつく逆ギレ男なのだ。

彼を指導する職員は、みんな撃沈していく。
とうとう優しさ溢れる職員の1人が退職したいと、申し出た。

そう、彼はエナジーバンパイヤなのだ。

職員のため息で、負の元気玉ができてしまう。
私は、ため息回収がかりを買って出た。

そして、そのエナジーバンパイヤを
育て上げる決意をする。

彼が、職場に馴染むこと。
確かに、気が遠くなるくらい、大変な仕事が医療業界には転がっている。
彼が士気を失う気持ちも、わかる。


この職員、田所の良いところを探そう月間をしている。

何かしてもらったら、
「ありがとうございます、
仕事が丁寧で、ありがたいです」

「そこを気づいてくださり、
視点が素敵だと思います」

「今日も、出勤大変ですよね、
雨の中お疲れ様です」

そんなふうに声をかけ続ける。
田所には響かない。

「はぁ、来たくて来てるわけじゃないです」
そんな言葉を返される。
シュン。とする。

ある日、彼は患者様に早くしてくださいと、強めの語気で、話す。

私は彼にゆっくりと話す。

「仕事は忙しいのはわかります。でも、それを支えるのが私たちの仕事です、少し気持ちを大きく持ちましょう」

患者様にも、フォローに入る。
「彼は入りたてで、気持ちのゆとりがないようです。申し訳ありません」

患者様は、「いいのよ、eriちゃん、大丈夫よ」と、言ってくださる。申し訳がない。


ため息が、増える職員の気持ちがわかる。

私たちの仕事。
疾患を持ちながら人生を歩む患者様に
優しさを提供すること。
根本が彼には欠落している。

私も疲弊してしまった。
昨日の帰り際、
「eriさんは、男を手玉にとろうとする節がありますよね?」

田所に、言われた。
私は、女を売っていると思われていた。
背中から、グレムリンが出てきそうだ。


ナースステーションで
「はーーーーー!!、、」

と、大きなため息が出てしまう。

「eri、100年分くらいのhappyを放出しているよ」

普段私が、ため息を回収してる
ツルピカ管理職がニヤニヤしている。


エナジーバンパイヤ。
あなたの職場にも、潜んではいないだろうか。

どうか、私には水をかけないでほしい。
背中からグレムリンが暴れ出す、ギリギリの境地である。

でも、モスキートeriは、決して諦めない。

泣き言モスキート、すまねぇ。


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