小市民であることに気づく
カタカタと 初夏に鳴くのは 窓ガラス
染まってく そよ風 グリーングリーンに
5月。青山キャンパスには緑が溢れる。色相環だと、緑の補色はたしか赤だ。ならば、赤色のツナギなんか着ていたら、キャンパスで一番目立つんだろうか。そんなことを考えていると、
「あなたは、ヒトの目を気にするときってある?」
先生から、不意の問いかけ。あんまりないです、僕は答える。
今は哲学の講義中でした。先生はくるっと黒板に向き直って板書を続けます。
本日のテーマは「あなたにとって一番大切なものとは?」
なんだろう。モラトリアム期間かな。
窓の外に視線を戻す。
そういえば、「ヒト」と言われたとき、僕は反射的に「他人(僕の人生にほとんど影響力を持たない人)」という漢字を当てていた。でも、もし「人(自分に対して大きな影響力を持つ人も含む)」という漢字だった場合、話は変わってくる。
結構気にする方です。
僕を実際に大切にすることができるのは、「僕に対して少なくない影響を与える人」だから。(もちろんその中には僕自身も含まれる)
影響を与えるということは、つまり、その責任を負うということになる。親友や妹、両親、祖父母、元恋人、飼い猫、そして僕自身は、 ㈱僕の人生 の株主なのだ。だから、筆頭株主兼社長(?)の僕は、経営方針や経営自体に影響力を持つ人たちを当然気にかける。
一方、株主総会において、株を持たない他人はそもそも出席する権利を持たない。また、1株や2株持っている他人も、残念ながらそれほどの影響力は持たない。だから、そもそも「他人」は滅多に視界に入ってこない。
どうやら僕にとって大切なものは、「僕に対して影響力をもつ人たち」のようだ。
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