【詩】 信じられていた人々
私たちは確かに約束されていた
見渡す限りの猛炎の中
天の底が抜けたような雨の中
それは紡がれる糸のように
つづれ織りからなる眼下の光景に結ばれる
海は覚えている
深く神秘に満ちた水
あらゆる秘密に満ちた胎動
大きな揺り籠の中の揺らめき
望まれた極めて有機的な原初の煌めき
霊気に満ちた息吹きが織りなす
すべてはあるがままに抱かれる
森は見ている
赤褐色に熟れた無花果がなる季節
木陰の下で古の箴言家との口づけ
目の前に拡がる地上に投げだされ
万物は自由の荒野で試される
契約は不安と恐怖を引き換えに
後世へ饒舌な皮肉を残す仮面被りの風刺画家
土は記憶する
燃えさかる硫黄の火
降り注がれる死の灰
これまで幾億の血を
むせぶほどに飲みほした
気をつけてに気をつけて
なぜに近視の我らは眼鏡を買わない
おしなべて
良き機会を与える世界の息づかい
恐れることなく
自然は生存の意志を唄う
いたずらに
住めない土地にした地にも花は咲く
海は、森は、土は真意を汲む
地上の民は恐れ、忘れ、繰り返す
信じられていることにも気づかずに
つづれ織りからなる眼下の光景
すべてはあるがままに抱かれる
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