本当に雨って冷たいんだ!
雨は冷たい
って
知ってるんだけど、
知らなかった。
星野源を聴きながら、踊りながら、歌いながら、着る服選んじゃった。
気づいたら5曲くらいノリノリで、最後の1曲はもう間に合わないって分かってるけど、歌いながら舞う。(途中でブチっと曲止めるのができない。ちょっとずつ音量落として「セルフフェードアウト」させればその苦しみがちょっと緩和する。)
時計を見て、「ですよね!」と思いながら、ちょ
い小走りで玄関へ。
すると、
「雨降るらしいよ。折りたたみ傘持っていきな」
とおばあちゃんが言ってくれた。
「わかったありがとー」
急いで傘をバックに入れて外に出た。
急いで自転車乗って、慣れた駅までの道を進む。
いや、自分カーブ曲がるのうま!って思った。なめらかすぎ。
競輪選手な気分で漕いでたら、駅に着いた。
行きは雨に濡れずに済んだ。
そして帰り。
駅の屋根の最終地点、外と中の境目のところにたくさんの人が呆然と立ち尽くしている。
みんなの目線の先には、
雨。
ザーーーーーーーーー
地面には水溜りができて、そこに跳ね返る水滴が雪印メグミルク牛乳のCMみたいになっている。
わあ、どうしよ!
自転車ーーーー。
ガッツリ両手でハンドルを握ってないと運転できないので、傘を差しながらチャリという選択肢はない。競輪魂的にも。(競輪は見たことないが、魂だけお借り)
よし。歩きだ。
その時の自分の頭の中には自転車を押して帰る選択肢はなかった。
(85%の確率でスネをぶつけるから)
どうにか濡れずに駅を出る手段を模索しているであろう人々の前で、かっこよく折りたたみ傘を開く。
「ありがとうおばあちゃん」の気持ちを胸に、歩き出した。
それにしてもすごい雨。
一歩踏み出すたびに容赦無く雨がズボンを濡らす。
雨のたびに、ちょっとびしょっとなるくらいなら、全身びしょにしょになりたいなと思う。
極端なんだな、自分。途中で曲止めるのも気持ち悪いし。中途半端なのが気になっちゃうんだよな、自分って。
ちょっとズボンが濡れてきもちわるい。
傘の角度を変える。
それにしても、なんで傘を使い始めたんだろ。
まだヒトが服を着てなかった頃って傘さしてたのかな。
現代を生きるヒトたちに「なんで傘さしてるんですか?」って聞いて回ったら大半の人が「濡れたくないからです」って答えるだろうな。
スマホも、パソコンも、大事な資料も、お気に入りの洋服も、面白い本も、雨にあたると、壊れるか、読めなくなるか、乾くのに時間がかかる。
じゃあ、スマホも、パソコンも、大事な資料も、お気に入りの洋服も、面白い本も持ってなかったら、みんな傘なんてささないのかな。
植物は雨が降ると育つけど、ヒトは雨が降っても変わらないから?
傘をさしてるから育たないだけで、ヒトも雨に濡れたら背が高くなるかも。
それとも傘をさす他の理由が、、、、
ちょっと気になってきたから、傘を一瞬外してみた。
冷たい。
すぐ傘をさす。
でもちょっと濡れるくらいなら、、
あとは帰るだけ、、、、
もう一回恐る恐る外す
傘に跳ね返る音がなくなり、静かに感じる。
目に水が入ったので、遠くを見るような手の位置で目だけ守る。
今まで必死に濡れないように小さい傘で守ってきたTシャツとバックに冷たい水が染み込んでくる。
蛇口をひねったわけじゃないのに、すごく高くて見えないところからシャワーが降ってくる不思議。
気づいたら笑っちゃってた。
通りすがる人も自分が濡れないことに必死で、
「大雨の中、傘を持ってるのにささないで、笑ってる変な人」に見向きもしない。
最高だ!
面倒なくらいに考えすぎちゃう自分がだんだん遠くなって、雨の感覚に全ての神経を使っている。
いつもどうゆう状態になってるか気にしちゃう前髪も、びしょびしょになってどっかに行ってしまった。頬は冷え切って、半袖から下の腕には雨一粒一粒の感覚がある。Tシャツとズボンは着てるのか着てないのかわからなくなるほど肌に張り付いている。
最高だ!
気づいたら、家に着いていた。
寒くて鼻水が止まらない。
寒くて鼻水が止まらないことが初めてな気がした。
シャワーがあったかい。
いつも以上に感謝の気持ちが湧いてくる。
雨の日は傘をさす。
この事になんの疑問も持たないで生きてきた。
「濡れたらあとあとめんどくさい。」
それは確かにそう。あと寒い。
でも、雨に打たれることを避けていた自分が言うもんじゃなかった。
雨に打たれてからじゃないと、あの「生きてる」っていう感覚と、「シャワーの温かさ」、現代を生きるからこその「雨の本当のめんどくささ」は分からなかった。
どうせそうなんだろう、と言う決めつけは「固定概念の傘」を閉じて、実際に雨に打たれて、初めて自分のものになる。
自分はこれからも傘をさすと思う。
本当に雨は冷たかったし、乾くのに時間がかかる。
でもたまに傘を閉じて、雨の音に耳を澄ませることに、今決めました。