見出し画像

フェイクニュースについて(インドと牛)

誤情報や偽情報(フェイクニュース)は社会的にも大きな話題となっている。
医療情報や災害時の対応に関するフェイクニュースの拡散は多くの人の生命・健康を脅かす可能性が高く、SNS(主にX)で拡散されているのが実情と思う。
日本でも大きな問題となっているが他国での事例から学ぶことも多い。今回、インドでの牛に関するフェイクニュースで興味深い事例があったため紹介する。
(雑記:もともとスマートフォンで文字入力を行っていたが、長文はきついので今回の記事ではPCを引っ張り出してきた。ただしばらく使用していなかったPCなので反応性が鈍い)

インドはヒンドゥー教徒が多く、牛は神聖な動物とされ愛着も強い。当然、殺してしまう牛肉は食べないが、一方で動物性たんぱく質は摂取する必要がある。14億人を超える人口を誇る大国であるがゆえに食料の課題は常につきまとう。
そのため、インドであっても牛を殺さない牛乳、乳製品は食べてよいことになっている。
下記の記事が詳しい。

このインドの牛で大きな感染症が2022年に発生した。
ランピースキン病(lumpy skin disease)という動物の病気である。lumpyとはごつごつした、skinは皮という英語。つまり、直訳すると「牛の皮膚がごつごつしてしまう病気」ということ。泌乳量の減少や発熱(+元気がなくなる)も見られる。特にインドでの発生時は致死率の高いウイルス株であったこともあり、10万頭以上が死亡したという。

(参考)なお、日本でも今年11月に福岡県、熊本県の牛で初発生(日本ではこれまで発生がなかった)し話題となった。現在も防疫対策が行われている。
https://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/lsd.html

この病気は牛の見た目がかなり皮膚が盛り上がり、痛々しい見た目になる。牛を神聖視するインド人たちにとっての衝撃・ショックは想像に難くない。

このインドでのランピースキン病についてフェイクニュースが拡散した。この件についてはBBCのニュースが詳細に報じている。
※思うに、道端で牛が寝転がっている国である。インドでぱっと見で皮膚がごつごつして明らかに異常な牛が発生し、苦しんだり、いくらかは死亡していく状況の中で社会的なインパクトは日本とは比較にならないと考えられる。インド人の友人ができたら感覚を聞いてみたいものだ。

BBCニュースは主にランピースキン病について、3点のフェイクニュースが拡散したと報じている。
1.ミルクから人に感染するというフェイクニュース
2.パキスタンから侵入したというフェイクニュース
3.ワクチンを打った牛が即死したという動画のフェイクニュース
(↑長ったらしいが変に切り取られたらまずいので最後にフェイクニュースといれました)

BBCは1から3について下記のように説明している。
1.について、ランピースキン病は人に感染しない(また牛乳、乳製品はは加熱されるので含まれるウイルスは死ぬ)。
2.について、本病はザンビアで初めて発生しサハラ以南地域で拡大、その後、インドに侵入しておりインドでの初発(2019年)以降パキスタンで発生(2021年)している。
※なお、パキスタンは建国以来、領土紛争、宗教対立をインドと起こしており、対立を煽るような内容であることに留意したい。
3.(ワクチン接種ではない)違う動画の拡散である。

なお、日本の食品安全委員会でもこの病気の情報発信を行っており、「ランピースキン病は、牛や水牛の病気であり、人には伝播しない」こと、「ランピースキン病ウイルスは、高い宿主特異性があり、牛や水牛に感染するウイルス」と記載している。

新型コロナウイルスの時と同様、危険情報や日々の生活に影響が出る身近なニュースには拡散しやすく、人々の恐怖心が拍車をかける。なお、政治的な対立が混ざってきている(インドとパキスタンの対立)点もきちんと押さえておきたいところ。

インドでは当時、牛乳を飲むことを躊躇う人が現れたり、牛のワクチン接種に反対する動きが発生した。フェイクニュースの拡散は大きな社会的損失を生み出していることがこの事例からわかるが、インドと日本ではバックグラウンドが違うので(牛の社会でのかかわり方など)一つの参考として知見を持っておきたいところである。

なお国際的な動物の病気の対策を実施する(人でいうWHOの動物版)国際獣疫事務局(WOAH)もこの事例を含めた misinformation and disinformation(誤情報、偽情報)の拡散が動物衛生上の脅威であると記載しており興味深い。

動物衛生というあまりフェイクニュースとはかかわりがなさそうな分野でも、国際機関がフェイクニュース対策が重要であることを発表してきている。なお、WOAHはICPOとともにフェイクニュースに対するガイドラインを発表しておりHP上からも読むことができる。

今後はフェイクニュースとの向き合い方が様々な分野で求められることになるだろう。正確な情報を正しく得る、得られる環境はとても重要である。日本でも昨今、様々なフェイクニュースが問題、課題として挙げられており、フェイクニュースを淘汰(必要なら発信者を処罰)していくことがとても重要なのではないかと考えている。




いいなと思ったら応援しよう!