夏目漱石「坊っちゃん」番外 松山市の小ネタ
写真は、「道後りらっくまの湯」のグッズです。
https://rilakkumasabo.jp/goods?category=dogo
©2017 San-X Co., Ltd. All Rights Reserved.
「坊っちゃん」についての小ネタです。
この作品の舞台は「四国」「中学校」とだけされていて、具体的な地名はありません。
作者の夏目漱石は小説家としてデビューする前に、愛媛県松山市の松山中学で英語教師をしていました。そのため作者自身の体験がモデル・参考になっているのは間違いないでしょう(なお坊ちゃんは数学教師で、漱石と同じ英語教師は、婚約者マドンナからフラれてしまう「うらなり」です)。
これについてメディアでたまに「 ~夏目漱石の小説『坊っちゃん』の舞台である愛媛県松山市で~ 」などと語られることもあります。
しかし厳密にいえば「舞台」ではありません。モデルや参考にはしているでしょうが、作中には「四国」以上には実在の地名はあらわれません。
しかも、作品中でこの「四国」の地は、坊っちゃんから
・「猫の額ほどの町内」
・「そんなえらい人が月給四十円で遥々こんな田舎にくるもんか」
・「こんな田舎に居るのは堕落しに来ているようなものだ」
などと散々批判され、終盤でも
・「不浄の地」
とまで言われています。
(※ 著作権切れにより引用自由です)
ところが松山市や同地の商店は、松山が舞台との明示はないことや作中で坊っちゃんからこき下ろされていることもなんのその、堂々と松山が坊っちゃんの舞台だとの前提で、観光アピールに注力しています。
電車は「坊っちゃん列車」、野球場は「坊っちゃんスタジアム」に「マドンナスタジアム」、前にふれたように市内には坊っちゃんとマドンナの銅像が立ちっています。
(夏目漱石「坊っちゃん」⑥)
さらにお団子は「坊っちゃん団子」に「マドンナ団子」、お店は「喫茶マドンナ」、観光大使は「マドンナ観光大使」といった具合です。
ここまで頑張られると、「作中には舞台が松山市との明示まではー」などと言う私のほうが野暮であり、もう松山市の勝ちだという気がします。
なお、松山市や商店を批判する意図はありません。松山市が「坊ちゃん」についてアピールできる唯一の自治体であることは事実ですし、夏目漱石ゆかりの地であることも間違いありません。また市内の施設・店舗では「坊っちゃん」や漱石について詳細に説明してくれています。
余談ついでに、愛媛県松山市は、「道後(どうご)温泉」という温泉でも有名です(「坊っちゃん」でも主人公が人のいない温泉で泳ぎ、後に注意書きをされてしまう場面があります)。
この道後温泉が、キャラクター「リラックマ」の会社とタイアップしています。道後温泉ご当地限定で、リラックマ達が坊っちゃんやマドンナをイメージしたであろう明治時代の服を着たイラスト入りグッズも販売されています。
私の妻が四国を旅行したお土産に、「キイロイトリ」というリラックマの仲間のキャラクターが、マドンナらしき服装をしてパラソルを抱えたイラスト入りのハンドタオルを買ってきてくれました。
(冒頭の写真)
なお、私も仕事で松山市を訪れたことはあるのですが、当時は「坊っちゃん」を読んだこともありませんでした。またいつか、もう一度松山にいって今度は温泉で泳いだり団子を食べたい。