入れものがない両手で受ける:尾崎放哉
「両手で」ということは、ほんのわずかの間であることが分かる。両手が使えない状態で人間は長く過ごせないのである。たとえば、雨漏りの雨垂れを「両手で受ける」と、雨が止むまで何もできない。「両手で」何を受けるのか、と考えると、雨漏りのようなものとは考えにくい。
「入れものがない」とあるから、両手は「入れもの」の代わりの「両手」である。ほんのひととき両手で受け、何か他の物に移すのである。では、他の入れものを彼は持っていなかったのだろうか。持っていなかったとしたら、入れもののあるとこ