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日々のお仕事、ご安全に。

「信頼」とは何か。
それは人それぞれの答えがあると思うが、製造業に勤務する身としては「安全」こそその答えの一つではないかと私は考える。

派遣社員時代とある自動車企業で働いていたが、安全には神経質な会社だった。
自動車という、人の命を乗せて走る製品。
その反面、扱いを一歩誤れば凶器にすらなりかねないものを扱うのだから最もだ。

では時代を遡り、東京タワーの建設の話をしてみたい。
作業効率化のために命綱なしは当たり前。
さらには地上から100m以上離れた上空で800℃まで加熱された鋲
(びょう:鉄骨同士を接合するためのピン)
をキャッチボールのように投げ渡していたという。
通称「死のキャッチボール」だ。
御存知の通り、当然ながら命を落とした作業員もいる。
かくして東京タワーは完成当時は世界一の高さを誇る電波塔として名をはせたが、ある意味では天を突く供養塔に見えなくも無い。

それから時代は進み、劣悪な労働環境が当たり前だった時代も終わった。
このまま労働者にも利用者にもより安全な環境が整っていけば良かった。
しかし今日、とある解体現場で惨劇は起きてしまった。
その記事がこれだ。

お昼のテレビの速報で知ったニュースだが、私が勤める会社の副社長がおっしゃるには、10年ほど前までは考えられなかった事故だったという。

だが、その時私の頭に蘇ったのは国内初とされるジェットコースターの事故だった。
2007年頃の出来事だが、皆さんは覚えているだろうか。
大阪の遊園地、エキスポランドの風神雷神Ⅱという名称のジェットコースターで起こった惨劇だ。

事故の詳しい内容はこの記事に書かれているが、
脱輪により2両目に乗っていた女性が車体と手すりに頭部を挟まれて死亡したというものだ。安全装置が働かなかったのだ。
メディアでは事故の状況は詳しくは語られないが、かなりのスピードが出ていたわけだから挟まれた程度では済まないはずだ。
即死はもちろんのこと、頭部の損傷も激しかったに違いない。
事故原因の追及により明らかになったのは、ずさんな安全管理だった。
売上が芳(かんば)しく無かったこともあり、コスト削減のために安全管理がいい加減になっていったのだ。
その後は営業の再開こそあったものの、繰り返される事故からエキスポランドは程なくして閉園となった。

今にして思えば、安全の揺らぎとはこの時に始まったように私には思える。
それからは至るテーマパークでジェットコースターの事故は引き起こされているからだ。
事故によって未来を断たれた被害者たち、「運が悪い」なんかで済まされるだろうか・・・。

皆様ご存知、「安全第一」あれには「品質第二、出荷第三」という続きがある。
しかし、目先の利益だけを追求するようになると「出荷第一」になってしまっているように思えてしまう。
むろん利益を出さない分には企業としてはやっていけない。
しかし、そのために安全や品質を損ねては本末転倒ではないだろうか。
自身の安全を第一に考えてこそ、顧客の安全を守れるのではないかと私は考えている。
現代の日本の安全、製造現場で働く身としても、少しでもいいので皆様にもぜひとも考えていただけたらと思う。

日々のお仕事、お疲れ様でございます。
そして明日も、ご安全に。


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