3-1 組織風土・組織文化・社風
はじめに
ネットでタイトルのワードを検索すると「組織風土は性格、組織文化は価値観、社風は人柄」と書かれている記事が多い。なんとなくわかる気もするが、私なりにしっくりする考え方もありそうだったので検証してみる。
組織風土とは
風土とは、読んで字のごとく「風」や「土」などの自然から影響を受ける慣習と受け取れる。英語で言えば「natural feature」である。国内でも盆地や平地、山中や海辺など、住環境によって生きるための習慣は異なってくる。まさに生き死に関わってくるからである。そう考えると風土とは所与の環境条件から築き上げられる慣習や特性と言える。ビジネスの世界でいうならば、競争が激しい産業なのか安定している産業なのか、広告代理店のような短期成果を求められるモデルなのか、資源投資のような長期成果を目論むモデルなのかなどのビジネス環境によって形成される行動慣習に近いであろう。見据える時間観や捉える空間観、行動の自由度などに影響を及ぼす。銀行業や自治体、クリエイティブ産業やハイテク産業など同業界でも組織風土は似通ることが多くなるだろう。スポーツに例えるならば、野球とサッカーはルールもゴールも異なるがゆえに求められる規律や行動の自由度などにおいても違いが出てくる。それぞれ共通の目的が異なっているからである。ビジネスモデルにおける目的は変わることは少ない。ビジネス環境はそう簡単に変わることはない。ゆえに組織風土は変えづらいと言える。
組織文化とは
一方で組織文化とは、読んで字のごとく「文」と「化」したものである。暗黙的な慣習が明示されたものであり、その表出の仕方は神話などその地域独自のエピソードで表現され継承されてきたものが多い。それは、組織として日々活動する中での成功体験(失敗体験)によって深耕されて共有価値として根付いていったものである。英語で言えば「Culture」であり、語源は「Cultivate」(耕す)という動詞からきている。状況を表す風土よりは、もう少し動的な活動であり、経験的に積み重ねられていくものである。そう考えると同じ業界であったとしても組織文化が異なってくる場合がある。銀行業において、ある時期に強烈な営業力を持ったリーダーが組織を拡大させていき、それが英雄列伝になっていれば、営業推進力を中心に据えた文化ができやすくなる。また、同じ銀行業であったとしても、大型の業界再編などを推進してきたことで社外からも高く評価されてきたような組織であれば、社会的影響力を中心に据えた組織文化が形成されていく。スポーツの世界で言うならば、同じ野球であってもこれまでの成功パターンによって攻撃重視なのか守備重視なのか走塁重視なのか点の取り方アプローチ方法、連携方法が変わっていく。勝つためのコミュニケーションの在り方が異なるといっても良いであろう。組織文化も長い経験の中で蓄積され強化されてきた慣習なので変えることは難しい。また組織文化を変えることはその組織が持つ「勝ちパターン」を壊すことにも繋がりかねない。ゆえにM&Aなどによって事業統合する場合など組織文化の変容を迫られた時には、既存の文化の資産価値を見据えて展開していくことが求められる。
社風とは
最後に社風であるが、これは文字から読み取るに「風土」と同じ「風」が入っているが、風土のような自然の風物としての「風」ではなく、日常に感じる「風」(雰囲気)に近いと捉えられる。英語で言えば「atmosphere」であろう。“温かい”“冷たい”“活気がある”“寂れている”など、旅行者がその土地に入ったときに感じるものである。風土や文化をベースに築き上げられた雰囲気であり、そこに居心地の良さを感じるかどうかは人それぞれである。また季節によっても感じ取り方は変わり、同じ土地でも入る店によっては異なる雰囲気もあるであろう。「風土」や「文化」にも影響を受けるが、主にはその組織のオフィスのデザイン、リーダーの雰囲気や、社員の服装などによって醸し出されるものである。ビジネスの世界では、採用シーンなどで「わが社の社風は…」などと語られることも多い。これはつまり、その組織が醸し出す雰囲気という感性が個人の感性に合うかどうかの判断軸になっていることが想定される。社風が合わなければ、社員は辞めてしまうであろう。
DXと組織変革
上記を基にすると、最近はDXというテーマに付随して組織変革が要求されているが、DXのトランスフォーメーションポイントによって組織風土にアプローチするのか、組織文化にアプローチするのか、社風にアプローチするのかが異なってくる。
DXの本来の意味はテクノロジーを軸にしたビジネスモデルの変化である。具体的にはレンタルビデオ屋が動画配信屋に変わるなど事業の根幹価値の変化である。事業のゲームルールそのものが変わるため、組織変革は「風土」側面まで変わっていかなければならない。具体的には経営のガバナンスの在り方、求める人材の在り方などの変化である。経営ボードの入れ替えなども必要になるかもしれない。この変化難易度は極めて高い。完全なる別組織でまずは小さく推進して、成功パターンをいく方が成功確率が高い場合もあるだろう。
一方で営業の進め方や事務処理の方法などをテクノロジーを使って効率化していく、いわゆる業務プロセスのDXなどは、組織間や個人間のコミュニケーションのあり方変化である。事業そのものは大きく変わらないが、個々人の動きがデータを軸に変わってくる。これまで勘と経験で暗黙的に意思決定されてきたことを、データで裏打ちされたエビデンスをベースに判断していく事である。その場合の組織変革は「組織文化」にアプローチしていく必要がある。業務の中での過去慣性に引きずられずに、新しい勝ちパターンに組織全体が慣れなければならない。
最後に社風であるが、これは組織全体の雰囲気がテクノロジーを使って事業変革しているという事実により、古めかしい空気から時流に沿った空気へと自然に変わっていくものである。社風へのアプローチとは、これらの空気の変化に合わせて、ロゴや広報物や社員の服装などから変化させていく事で、社内の雰囲気も変わり、顧客や採用応募者への新しい印象を作り出していく事であろう。テックカンパニー風に服装をカジュアル化することも社風を変化させる有効な手となるのであろう。
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