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2-6 PMIの極意⑥

~積極的に同じ空間を共有する~

普通にある警戒心

 売却された側は買収サイドに期待感を持つと同時に警戒心を持つことが普通だ。買収サイドの発言や行動を過剰に意識する。統合推進者が「安心してください」「私たちはあなたたちの味方です」というような発言を繰り返しても、売却サイドはそこに何か裏があるのではないか?と勘繰るのが普通である。そこで、まずは本音を話せる関係を作ることが大切である。私がPMIにおいて重要視したことは、とにかく様々な現場の責任者と顔を合わせ続けるということである。東京のオフィスで働いていた私は、買収した会社の本社がある名古屋に頻繁に出向き、とにかく日々のミーティング含めて夜の会食などにも積極的に顔を出していった。会食においても会社の話や仕事の話をするのでなく、たわいも無い話、自分自身の失敗談や馬鹿話なども含めて積極的にその関わっていった。最初は当然ながら、現場の方々は私に気を使ってくる。その時私は30代も前半だったので、年上の先輩も多く、私の存在に対して違和感もあったであろう。ひと月ほどそのような場に顔を出し続けると、だんだんと私に対する警戒心も薄れてきたことが実感できた。その頃から現場の方々から、「自分の会社の課題はどう思うのか」など、仕事の話も積極的にしてくれるようになってきた。そうなって初めて、今回のM&Aで実現していきたいことや、そこに込めた私のまじめな想い、また親会社の考え方やポリシーを話すとすんなりと受け入れてくれるようになっていたように感じる。

警戒心を解くための仕掛け

 ある会社の話だが、M&A直後に買収サイドが売却サイドに対して、自分たちの考え方や制度に「染める」ことを急いでしまったため、首脳陣を中心に親会社に心理的抵抗を感じている状態の時があった。そこで、私は研修を開催することを提案した。その内容は、自分の歴史を紐解き組織に所属する意味を再確認する研修であるが、チーム編成において買収サイドと売却サイドのキーパーソン同士でグルーピングすることで、今までの警戒心が溶解していき、その後の仕事では妙な一体感が生まれたのである。とにかくお互いの警戒心を解くための仕掛けを重視することが、当たり前の話ではあるが重要であると感じる。その前提は同じ空間を積極的に共有することが遠回りのようで一番近道である。

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