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6-2 モテない売り手企業②

自虐マインドの会社

 付き合っている相手に「アジア料理を食べよう!」と提案して、相手は賛同してくれたにも関わらず、料理が机に並ぶとほとんど手を付けない人がいた。体調が悪いのか聞いてもそうでもない様子。後日、他の人から実はパクチーが嫌いだったと聞かされた。「それならそう言ってよ!」と思わず叫んでしまった。「自分には選ぶ権利がないから」と言われるがままに従属する姿勢は、謙虚を通り越してもはや自虐マインドに満ちている。自虐マインドで行動するする人はモテない。

 M&Aは経営権の売買である。売り手企業は相手に経営権を委ねたという構図になるが、買い手企業が要求することすべてにイエスマンとなり、言われるがままに活動する売り手企業は、買い手企業からする不気味でしかない。買い手企業にとって売り手企業の事業領域は詳細部分まではわからないことが多い。それでも買い手企業はシナジーを作っていかなければならない。自分たちの考えが合っているかどうか不安なこともある。だから、事業シナジーを考えて提案したことに対して、売り手企業側が言われるがままにすべて受け入れられていては不安が募る。本当はどう思っているのか?自分たちが要求していることは本当にシナジーにつながるのか?買い手企業が提案した内容は、芯をくっていない内容であったためにシナジーは失敗に終わってしまった時、売り手企業は「言われたとおりにやりました」と言うしかない。

 売り手企業においては、資本の論理にのっとって従順になることが大切だと思い込んでいるのかもしれない。自分たちの失敗が原因で事業を売却した時などは、もともと自信喪失状態にあるため買い手企業の提案にすがろうとしているのかもしれない。しかし、買い手企業も不安なのである。売り手企業はこれまで経営をしてきたなかで、外してはならないビジネスの勘所のようなものがあるはずだ。それは商品サービスの中にあるのかもしれないし、人事制度の中にあるのかもしれない。その勘所に買い手企業が手を入れようとした場合は、売り手企業の役割としてしっかりと抵抗を示すべきである。なにも頑固に拒否せよと言っているわけではない。リスクを提示して解決策を共に考える対話姿勢が必要なのだ。

 買い手企業は立場上、売り手企業に対して強く要求することもあるだろう。その時に売り手企業が向くべき目線は、買い手企業ではなく、共にどのようなシナジーを生み出していくかという未来の会社の姿だ。自虐精神の中では新しい価値は生み出せない。対話精神で未来を創っていく事である。それは売り手企業の経営ボードのみならず、すべての階層で求められる精神である。理不尽な要求、的外れな指示に対しては勇気をもって否定する強さも必要だ。そのやりとりの中で本当の信頼関係が構築される。M&Aは企業同士の衝突でもある。衝突を価値あるものに変えるのは本音で対話することである。

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