不安の高さはセキュリティの高さ
仕事柄、不安を抱える人の相談、対応、支援が多い。
そして私自身、不安の高いタイプである。
子どもの頃から「気にしすぎ」「ウジウジするな」とよく怒られた。特に中学生の時は複数の先生から、「気にしたってしょうがない」「それだからお前はだめなんだ」「だからいじめられるんだ」「もっと自信を持て」と怒られ、不安の高いところを直そうと働きかけられた。
私はこれを言われたりやられたりするのが、本当に嫌だった。だから、相談する立場になった時(そうでなくても)「気にするな」「しょうがない」は絶対言わない。
しかし、世の中、一般的な、メジャーな励まし、アドバイスは「気にするな」「しょうがない」なんだよね。だから、不安の高い人が減らないのではないかと思ってしまう。
太田光さん、光代さんのインタビュー
そんなある時、タイタン社長で爆笑問題の太田光さんの妻である光代さんの半生のインタビュー記事だったか、番組だったか(どちらかは忘れた)を見た。
光代さんは生い立ちにも苦労があり、小さい時に入院したこともあり、とにかく不安が高く、ネガティブな考えの持ち主だそうな。学生時代にはその性格でまた苦労したけど、芸能界に入ってそのネガティブさが芸に活かされて少し報われた。更に社長になったら、それがめちゃくちゃ長所として活かされ、夫の光さんがびっくりするくらい、社長に向いてると思ったらしい。
不安の高さとネガティブな考えから、会社に起こるありとあらゆる悪いことを想定し、それが起こらないように社長として働くので、会社が上手く回るらしい。
不安の高さとネガティブな考え→危機管理の高さ
に繋がったわけである。
だから社長に向いている性格とは不安が高くてネガティブな考えの持ち主と思ったらしい。
私はこの考えが非常に腑に落ちた。
世の中では、トップに立つ人は勿論、活躍できる社会人、出来る人好かれる人の条件に、リーダーシップやポジティブな考え、ピンチを乗り越える力など、とにかくエネルギッシュで前に進もうとする力が重視される(これらも大切なことであるのは否定しない)。後ろ向きな側面は否定されやすい(大学卒業時の就活では、やたらこれを主張する「出来る大学生」に出会った。私は大学卒業後、一般企業など複数の業界で7年働いてから心理系の大学院に入り直し、臨床心理士を取得した)が、危機管理の高さ、心配やネガティブな側面に注目出来ることはどの社会、立場で働いても、大事なことではないかと思う。
臨床の現場でも
不安の高い人に対する心理療法には傾聴のカウンセリングだけでなく、認知に焦点を当てる方法も有効に用いられる。
私は、太田光代さんの話をアレンジして、不安をなくすのではなく、不安を活かすことを支援に取り入れている。
湧き上がる不安や心配を自分の内面に向けてしまうと苦しさになるが、それは自分自身へのセキュリティでもあり、他人や社会に対して使えるようになると、利益さえ生むこともある。
短所に見えることは長所になり得ることは多々あるし、逆も然りである。ならば無くすよりも活かすように出来たらいいのではないかと思う。