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主語と述語subject and predicate

幽霊保育士になってから、たくさんの人と話す機会が増えた。

初めて出会う人だから、私はどんな人か、何をやっていたかを丁寧に伝えた。

大抵の人の感想は、
ほーほー色々やってきたのね!
そんな感じ。

確かに振り返ってみても色々やっていた。

色々やり過ぎて、自分が何者かを見失っていた。

そんな時に出会った人が、こんなことを言った。

過去のあなたではなく、今のあなたと話をしている!
過去の自分と比べて、勝手に凹むな!!
それは間違ってる。
そもそも、誰とも、何とも比べる必要なんてない。
あなたは今どこにいて、誰と話してるの??
言い訳ばっかりするな!!

そう言った。
私はそんな自分が嫌いだった。
だから、そんなのわかってる…
わかってるけど、私を心から理解してくれる人がいない…
だからいつも不協和音を奏でてしまう。
そう言って半べそかいた。

私には主語がない!
そう言われたことがある。
あれ!とかそれ!で会話が終わることがたくさん。

でも、たいていそれで通じる。
あれしか言ってないね〜って笑って…
たいてい通じるから、
通じない人が現れると怒り出す……
直接怒るのが苦手だから、溜め込んでいく。
溜め込みすぎて爆発する…
それの繰り返し。

久しぶりに英語で文章を書いた。
英語には必ず主語がある。
誰がどこで何をどんなふうにした。
それが文法の基本。

帰国子女で日本語が苦手な女の子が
話していた言葉を思い出す。
自分の気持ちを伝えるのは、英語の方が楽。
日本語で話すと怖がられる…
そう言っていた。

なるほど!
英語はいつも私は〜から始まる。
それを直訳すると、やたら自己主張が強くなる。

私が話す内容は
誰が何を言っていて、それを誰がやるのか
それが伝わりにくいんだとわかった。

え??
全部私がやるんだよ!と伝えると
あなたは1人でしょ?全部できるわけない!!
そう言われる。

でも、保育士って全部1人でやる。
ピアノを弾いて、絵を描いて、本を読んで
子どもに教えて、子どもと遊んで
ミルクを作るのは食事を作るのと変わらないし
保護者への手紙を作るし、研修もする
地域の人とコミュニケーションもとる
クレームが入ればクレーム対応…
これが1番大変。
でも、それも全部やる
行事の企画も準備もするし発表会では脚本も作る。
セリフを考えて、子どもと練習する。
それってもはや演出家。

1人担任はそれを全部1人でやる。
年長児の担任は、小学校への引き継ぎ書類を
クラスの園児分書く。
毎日の日誌に加えて、週案、月案。
毎日の製作の準備。
会議の議事録。
日々歌う歌のピアノ伴奏の練習。

全部1人でやるから
1人の負担がやたらと大きい。
クラスの子どもが怪我でもしたら
病院にだって一緒に行く。
保護者との電話のやり取りもする。

そんなこんなでいろんな職種の方と話す機会が多い。
やたらとコミュニケーション能力が高くなる。

全部1人で担任をしながらやっていた。
だから、全部私が主語。

でも、世間的にはそれは普通ではないらしい。
そのことを私は知らなかった。
それが当たり前の世界にいたから…

主語を省略してはいけなかった。
口に出して、言葉を形に変える前に
私はこれとこれとこれができる!
時間的に難しければ、私はこれだけやる!
あとは任せたい!
そう伝えればよかったのだとわかった。

私の主語を省略して良いのは
私のことを昔から知っている人にだけ。
あれとそれだけで会話できる家族や友だちだけ。

初めましての人に主語を省略してはいけない。
主語がないと伝わらない。
今を生きるとはそういうこと。

今ここにいるあなたと話をしている。
過去でも未来でもなく、今のあなたに
私はこのことを伝えている。
そういう想いで伝えることが
ちゃんと伝わる!ということ。

私の目を見て、そんな話をしてくれた人がいた。
大人になってから、
本気で私を叱ってくれたのは
その人だけだった。

あとの人は感情的に怒ってた。
私が適応障害の人間だから
社会不適合者だと思われてるんだと
勝手に凹んでいた。

でも、たぶん同じことを伝えようとしていた。
私には伝わらなかった。。
そして、私の想いも伝わらないと
決めつけて凹んでいた。

怒ると叱るは違うと言われる。
私がガミガミ怒っていると
ちゃんと叱ってくれて偉いとか言われていた。
そう言ってくれた人は
怒ると叱るの違いを理解している人だったんだと思う。

何と比べて凹むの??
私を叱った人はそうも言った。
過去の自分と比べて凹むなら、比べなければ良い。
他人とあなたを比べる必要がある??

ない…と半べそで答えた。

凹むことを自分で選んでいるのだよ。
凹むことなんてひとつもない!
そう言っていた。
確かに…比べるから苦しくなる。

相手は相手。
生まれながらに悪人はいない。
育ってきた環境と、
浴びてきた言葉のシャワーで
人間は形成される。
だから1人も同じ人間はいない。

この絵本にはそんなことが書いてあった。

みんなちがってみんないい!!

保育の世界ではよく耳にする言葉。
みんな違うから、みんな感じ方も違う。

これが好きな人もいれば、これが嫌いな人もいる。
体調や気候によって気分は変わるから
今日は違う気分の日もある。

だから、今のあなたはどんな気分?
それを目を見て聞けば良い。

今のわかった?と聞いて、
わかっていなければもう一度伝える。
伝わるまで伝えれば良い。
でも、伝わることを望まない相手には
相手が望むまで待てば良い。

私はとても生き急いでいた。。

日曜日の朝
のびのびと楽しそうに
大好きなコーヒーを売る若者を見ながら、
そんなことを教った。

無理はしない。
必要ないことは大丈夫です!と言って断る。
はっきりしていてとても気持ちが良かった!

そしてとても美味しいコーヒーを淹れてもらって
幸せな時間を共有して
私も私らしくのびのび元気に帰ってきた。

幽霊保育士に今を教えてくれるのは
子ども、そして、今をのびのびと生きる若者たち。
それと、自由に生き続けてきたおじさんたち。
経験豊富なおじいちゃんとおばあちゃん。

組織の括りで考えるのではなく、
その人個人を見れば良い。
大きな組織になれば必ず良い人も悪い人もいる。
悪い人がいるから、悪い組織!
と決めつけてしまうと戦争になる。

私は戦争して歩いていた。
ボーダーレスと言いながら、
私がボーダーを勝手に作っていた。

悪い人ばかりではない。
そして、良い人ばかりでもない。
良い人ばかりに出会うから
わざわざ悪い人を探しに旅に出たおじさんもいたらしい。。。
すぐに帰ってきて
悪い人は相変わらずたくさんいた…
そう言ったらしい。

悪い人もいるから、
良い人に出会うとほっこり嬉しい。
悪い人だと思い込んで話しかけないと
一生関わることはない。
それは自分で勝手にボーダーを作っているということ。

狭い世界を好んで生きている。
それが好きな人もいる。

組織の枠組みは必ずあるから
組織として見るのではなく、
その人個人の今を見ると良い。
悪い人ばかりの組織ならば、関わる必要などない。

でも、たぶんそんな組織はない。
必ず良い人が中にいる。
そこを自分の判断で選ぶ。

決めるのは自分自身。

それがこれからの時代の生き方なのかもしれない。

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