My essay④「No color」
ヤドカリ
少しの間だけ、ヤドカリのような生活をしていたことがあった
会社からのお願いで、とあるお店の販促部隊でお手伝いをしていた
くーたん
ヤドカリ先で、私は定年前のおじさんとペアでお仕事をすることに
私はおじさんのことを、密かに『くーたん』と呼んでいた
くーたんはクマさんみたいに体が大きくていつも歩くのしんどそうだった
くーたんの好きなところ
声がめちゃめちゃでかい!!!!!
奥さんのことを「かあちゃん」と呼ぶ♡
同じ会社の人にはめちゃめちゃ厳しいのに、私にやさしい
パソコンとかうといけど、複合機を直すのが好きー
あの時はこうだった話を何回もしてくれる♪
一度くーたんの会社の方ともめたことがあった
だけど、その時も私をかばいにわざわざくーたんは
子分を連れて加勢しにきてくれたのだ!スーパーマンか!と思ったくらい
かっこよかったし、大好きだと思った
ピンクの箪笥
くーたんから何回も教えてもらった大好きな話がある
「俺が第一線でまだ働いてた時にはさー
インテリアの売り場にディスプレイするものは
めちゃめちゃ派手なものに決めてたの!
例えば、ピンクの箪笥!かわいいし目立つんだよー
皆ピンクの箪笥に惹かれて『これいいですね』って
きてくれるんだよ
『でも実際に置くには派手だから他の色ありますか』
って聞かれて、白とか茶色とか無難な色が売れていくの
でもピンクの箪笥がなきゃ、白も茶色もお嫁にいかなかったんだぜ
物売りをする時に人の目をひくことっていうのは忘れちゃいけないよ」
NOW
くーたんはとっくの昔に引退して田舎へと帰っていった
今じゃ複合機が壊れても業者がすぐ見に来てくれる
今じゃピンクの箪笥なんて珍しくなくなってしまった
だけど私は新参者に対して、何かアドバイスやお話をするときには
いつもくーたんの事と、ピンクの箪笥のおはなしが脳裏をよぎるんだ
「そこの部分だけど、皆に見てもらうためにどうするかって話でしょ?
そもそも、そこに色は必要なのかな」
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