常識と非常識のはざまで〜人生のギフトを探す旅・7

「あの人」は32歳の中学校教師だった。


初めての中学校。

初めての教室。

初めてのともだち。


目に映るものすべてが真新しい場所で


私は


私のことをだれも知らない

私の姉のことをだれも知らない

あの古くて汚いアパート住んでいた
怖がりで一人ぼっちの孤独な私を知らない



そのことが心から嬉しくて

まるで生まれ変われるような気がしていた。



そこで「あの人」に出会った。



でも、私は
やっぱり「普通」ではなかったみたい。


「普通」の感覚を知らなかった私は


中学校に毎朝「フツー」に
遅刻することが多く


私の中学校は開校したばかりで
校舎が保育園のように
ピンクと水色の建物だったけど


制服も同じく


丸襟にえんじ色のリボンがついた
保育園の子が着るような
可愛らしいものだった。



それは、


制服のスカートの丈を
地面まで伸ばして


学ランの背中に
刺繍を華やかに入れて歩いた
「女番長」の姉が見たら、


きっと同じ中学生だとは
思えないだろうくらいの幼稚さを


漂わせたものだった。


もしかして学校側は、
「不良」を出さない為に
あの校舎や制服にしたのかな。


と今、ふと考えてしまった。


あんな保育園児のような制服だと
粋がっても、粋がれないからな(苦笑)。



そんな学校だったのに、



私の家には、


その可愛らしい丸襟の制服の
洗い替えがなくて



いつもかわりに
丸襟ではない姉のカッターシャツを
「フツー」に着て行くような子どもだった。


いや、着て行くしかなかった。


「普通」を知らない子どもが
なんとも思わずに
「フツー」に校則を破って平気な顔をしていたわけだ。


今ならわかる。


それがどんなに先生たちを困惑せたか。



ツンとすまして
口数が少ない転校生の私が


丸襟の制服の学校なのに
角襟のカッターシャツを着てくるとか、


どんな性格かもわからない転校生が
入学してくるやいなや

平気で遅刻ばかり、校則違反をしていたら?

そして、妙に大人びていたら??


先生業界で

もしかしたら姉の素行は
すでに伝わっていたとしたら?


きっと、妹の私は
要チェックされてたはず・・・。だな。



今ならわかるけど、

その当時の私は、自分が悪いことをしている
という自覚すらなかった。


「普通」の感覚=「常識」


から、自由に生きていたんだなぁ。


今の私なら、厳しい家庭環境の裏にあった
この「自由」というギフトにも気づける。



でも、当時の私は
そうするしかない環境で
そうしていただけだった。


できるなら、
丸襟のシャツの替えが欲しかったし
朝、ちゃんと起こしてもらいたかった。


「普通」の家庭だったら
まだ子どもとして振る舞える歳だもんな。


そんな私に



あったかい「普通」を持ち込んでくれたのが
「あの人」だったんだ。


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