フィリップ・トルシエが語る①
2024年 2月27日(火)
今日の景色…
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〈フィリップ・トルシエが語る①…〉
「南野拓実を外して堂安律…戦略自体は変わらない」トルシエがホンネで語る“日本代表・失敗の本質”「アジア杯まではよく機能していたが」
(記事全文…)
ベトナム代表監督としてアジアカップに参加し、大会初戦で日本と対戦したフィリップ・トルシエは、優勝候補ナンバーワンとの高い前評判を得ながら準々決勝で敗退した日本代表をどう見たのか。何が敗因で、森保一監督が率いる日本が2026年の北中米W杯でベスト8以上を目指すには何が足りないのか。
カタールがヨルダンを下してアジアカップ連覇を成し遂げた日の3日後、モロッコの自宅で束の間の休日を過ごすトルシエに電話で話を聞いた。トルシエが見た日本代表の問題点とは。単独インタビュー、まずは第1回から。
森保もクリンスマンも、コレクティブさではさほど…
―日本代表の戦いぶりをどう見ていましたか?
「サッカーにはふたつの戦略がある。ひとつは選手の個の能力に依拠した戦略だ。選手は自分の役割を担う。それぞれにポジションを与えられるが、目的は選手が自己を表現すること――最大限の力を発揮して個の能力を表現することだ。
もうひとつの戦略は、選手にコレクティブな役割に従うことを求める。攻守においてパートナーとの連係を築きながら、連動性と流動性のある組織的な仕事だ。ひとつの例をあげれば、私に関しては個の能力に依拠した戦略では不十分だ。というのも、ベトナムの選手は能力、経験やフィジカルの欠如などで他よりもレベルが劣っているから。だから私はコレクティブな戦略を実践し、選手にコレクティブな仕事を要求した。
監督が重要なのは、第一に心理的な側面においてだ。森保やクリンスマン(韓国代表前監督)のように、ビッグクラブに所属する選手を抱えている監督は、個の力に依拠した戦略を持っている。選手が監督を信頼できる雰囲気を作り出し、選手に信頼を寄せ、与えた役割のなかで個々に力を尽くすよう求める。
だが森保もクリンスマンも、コレクティブな面では選手にさほど要求はしないだろう。というのも日本や韓国のようなアジアの大国では、選手のステイタスはとても高い。ときに監督は偉大な選手のステイタスの虜になり、選手にコレクティブな要求を求め難くなる。
私は違う。君は私のやり方をよく知っていると思うが、私は高いステイタスを持った選手と仕事をする際にはそのステイタスを無化し、裸の状態にしようとする。彼らにもコレクティブな仕事をするように求める。私にとってコレクティブな仕事は、選手個々の価値よりもずっと大切だ」
〈筆者註:コレクティブという言葉を日本で最初に用いたのは、筆者の知る限り名古屋グランパス監督時代のアーセン・ベンゲルである。ACミランのビデオを選手たちに見せたベンゲルは、選手たちが同じ理念のもとに連動性を保ちながら組織的かつ流動的にプレーするスタイルをコレクティブなスタイルと呼んだ〉
カタールやヨルダン、日本と韓国で何が違う?
―しかしアジアカップで活躍が目立った国々……決勝に残ったカタールにしろヨルダンにしろ、とりわけ攻撃に関しては個に依拠した戦略を実践していませんでしたか?
「そうだが、理解すべきはヨルダンもカタールも新しい監督で大会に臨んだことだ。カタールの監督(バルトロメ・マルケス)が就任したのは大会の3週間前で、ヨルダンの監督(フセイン・アムータ)は6カ月前に仕事に就いた。時間的な制約がある上に、ふたりはともに外国人だ(アムータはモロッコ、マルケスはスペイン)。彼らは選手の声をよく聞き、適切な規律をチームに与えたが、コレクティブな戦略を実践するまでには至らなかった。
もうひとつの重要な要素は、どちらも選手のほとんどが地元クラブに所属していたことだ。カタールは地元の選手ばかりだし、ヨルダンにしても国外はサウジアラビアやカタールなどアラブ諸国ばかりでほぼ地元といえる。ひとつのアドバンテージでチームの統一感は保たれており、内部に軋轢が生じることがない。
ところが日本や韓国は、選手の大半がヨーロッパのクラブに所属している。だから、クラブの利益との間に軋轢が生じる。ヨーロッパのリーグは大会期間中も中断しないので、利害の対立は常に生じている。そのうえ監督のマネジメントも個の力に依拠するから、しばしばチームの統一感や戦略、方向性を損なう。
だが、いわゆる小国には確たる統一感がある。新しい監督のもとに戦略や方向性がある。それが大国との違いだ」
日本がベトナムと対戦する時に“懸念”となるものとは
―モチベーションの問題もそこから生じているのでしょうか?
「そうだ。チーム内に軋轢がなければモチベーションは……そこには競争がある。チームのなかでベストな選手がプレーし、グループには100%の力を出し尽くすことを求められる。そこには内部における競争があり、この競争が自動的にモチベーションを生む。
日本や韓国のような国では、モチベーションを作り出す必要がある。日本がベトナムと対戦するとき、あるいは韓国がヨルダンと対戦するとき、そこにモチベーションは存在しない。何故ならモチベーションは難しい相手と対戦する際に生じるものであり、結果が確実ではない戦いの際に生じるものだからだ。
勝利への意欲、チームへの献身を恣意的に作り出すことはできるが、日本がベトナムと対戦する際の唯一の懸念が、この献身だ。果たして選手は、100%の力を試合で発揮するのか。いわゆる小国と対戦するとき、大国の側にはまず負けないという余裕がある。だからこそ監督のチーム内部に対するマネジメントが、チームとしてのチャレンジを作り出すためにとても重要になる」
その戦略は、“アジアカップまでは”機能していた
―森保もドーハでは、選手の集中力とモチベーションを高めることの難しさを漏らしていたようです。
「それに関して私は何も言えないが、森保は日本人の監督であり、日本の文化をよく理解している。選手に信頼も置いている。
ただ、日本の戦略が選手の個の能力に依拠しているのは明らかだ。選手はそれぞれが役割を担い、それぞれのポジションを占めている。目的はコレクティブな戦略を構築することではなく、選手を適切なポジションに配置すること。そして選手は、その状況で少なくとも能力の80%を発揮する。それが森保の戦略であり、選手を信頼して彼らを適切なポジションに配置する。
彼らに『仕事をしろ、走れ、選手同士のコミュニケーションを取れ、そして素晴らしい試合を実現しろ』と、語り聞かせるための心理状態を作り出す。すべてはそれをできるかどうかという選手の心理とモチベーション、意志に依拠している。
その戦略は、アジアカップまではよく機能していた。
森保は選手に参加することを求め、選手との関係において多くを変えた。それが成功したが、失敗したときに森保は選手を罰した。『南野(拓実)は出来が悪かった。だから外す』、『君の代わりには別の選手を起用する』という具合だ。しかし南野を外して堂安(律)を起用しても戦略自体は変わらない。代わりに起用した選手に同じ献身を求めるからだ。そこにはコレクティブな方向性は存在せず、戦略は個に依拠したままだ」
👉トルシエさんは語る…。
いまの日本代表…。
そしてその森保監督の戦略というのは…
「選手の個の能力に依拠」した戦略…。
そしてその戦略の目的は…
「選手を適切なポジションに配置」するといった戦略…。
「選手を信頼して彼らを適切なポジションに配置」して、「その状況で少なくとも能力の80%を発揮する」というところを期待する戦略…。
そして彼らに『仕事をしろ、走れ、選手同士のコミュニケーションを取れ、そして素晴らしい試合を実現しろ』と語り聞かせて、各選手たちの心理とモチベーション、意志を高めてその力を発揮させること…。
その戦略そのやり方がアジアカップまではうまく機能し成功していたが、このアジアカップでうまく機能せずに失敗した…。
そして…
そこでトルシエさんはこのような言葉で表現しました…。
「失敗したときに森保は選手を罰した」
『その選手の出来が悪かったから、外す…』
『君の代わりに次はこの選手を使う…』
そういうカタチで…。
ただ…
それではその肝心なチームとしての“戦術”が何も変わる訳ではなく、その選手の“良し悪し”の違いだけでしかない…。
そうトルシエさんは仰っています…。
ブログの方で取り挙げた守田選手のコメントというのは、まさしくこの事を指しています…。
(※守田選手の過去記事…)
また…
他にもイラン戦に負けた後の久保選手のコメントにもこうありました…。
「今の僕の能力で出来る限界…」
「これ以上は自分個人でどうすることも出来ない…」
その言葉は…
今の選手たちに出来得る最大限のモティベーションと集中を限界まで使い、その力を発揮しているという選手側の自己PRです…。
もういっぱいいっぱいだと…
では…
そこで…
この今の日本代表チームはどのような方向でどのようにして行かなければならないのか…。
そのポイントとなるのが…
「コレクティブ」
というキーワード…。
そんなトルシエさんが最も重要視している「コレクティブ」という言葉…。
この記事の筆者の方が次のように説明してくれています…。
〈選手たちが同じ理念のもとに連動性を保ちながら組織的かつ流動的にプレーするスタイルをコレクティブなスタイルと呼んだ〉
その今の日本代表チームに必要と思われる「コレクティブ」とはいったいどのようなものなのでしょうか…。
その続きは…
明日また〈フィリップ・トルシエが語る②〉にて…
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