アメリカアリゾナ州KyokofromTokyo#11 ナバホ族のカフェの Father and Son
Blue Coffee Pot Restaurant
モニュメントバレーへの分岐、カエンタの町に到着する頃、何やらおなかの調子が悪くなってきた。
ダニーの車のタバコのにおいか、毎回時速120キロ近いスピードの慣れないロングドライブの車酔いか、暑さか乾燥か、ルート66でアイスクリーム2つも食べてお腹が冷えたか?
「温かいスープが飲みたい」
カフェを探して、カエンタの町の交差点にあるカフェの駐車場に入った。McDonaldの黄色のM字看板が大きくあったが、ナバホネイションまで来て、マックになど入りたくない。
だだっぴろく質の悪い、ひび割れたアスファルトの道路の交差点にガスステーションとカフェがあった。道路は車もほとんど通っていなかったが、カフェの中は意外にも混んでいた。
カウンターもテーブルも、地元のナバホの人達と思われる人でいっぱいだった。
空いている席に座って、メニューにスープを探す。昼は過ぎていたが、ダニーも私もお腹は空いていない。ダニーはコーヒーを注文。
スープは、小さなティーカップにコンソメスープ、クラッカーがついている。お湯でキューブを溶かしただけみたいなものだったが、温かい飲み物が欲しかったのでお腹にしみわたっておいしい。メニューの値段はどれもとても安かった。スープも1.5ドル。
簡素なカップスープとコーヒーが出てくるまでに、だいぶ待つ時間があった。
カフェはとてもローカルで、ナバホの人たちの居場所になっているようだった。店に入った途端、自分がよそ者的な雰囲気をすごく感じて、あまり店内を好奇心でぐるりと見回したり、写真を撮るような感じではないなと思った。なるべく平静を装って慣れてる風にテーブルに着く。
いわゆるアメリカ風のオープンな雰囲気のカフェとはまったく違う、どこか張り詰めた感じで、陽気でリラックスできる感じはなかった。
Father and Son
席に着くときに目に入ったのが、後ろのテーブルに座っているつば付きハットと浅黒い大きな顔の男性、横に同じたたずまいのティーンエイジャーの若い男の子。並んでこちらをじっと凝視していた。
白人男性と東洋人の子供のような女性が珍しいのか、奇妙に見えたかもしれなかった。目の端に焼きついたその姿。
テーブルに両肘をついて、夕陽を背にフリンジのついたキャメル色のジャケットをはおって、じっと身じろぎもしない。親子で会話をするわけでもなくただ座ってそこにいた。映画のワンシーンみたいだった。時代を超えたネイティブアメリカンに遭遇したような気持ちだった。
かっこいい・・・・♡
振り返ってもう一度彼らを見たかったが、勇気がなかった。写真を撮りたいけどそれはできない。内心ミーハーに興奮しつつ、平静を装っていた。
破格のチップ
「チップは5ドルは渡さないとね」と私のチップ指導に手きびしいダニー。
「えー?1.5ドルのスープに5ドルのチップ?」
「こういう地域に住んでいるナバホの人たちは生活が大変なんだよ。Kyokoは5ドル払うくらい、どうってことないでしょ」
「まあ、そうだけど、、」
食事代のみ支払う日本の習慣しかない私にとって、食事をするたびに食事代以上の出費があることに、どんどん出費がかさむイメージがあって、正直、節約旅行の旅費がチップでなくなっちゃうんじゃないかとさえ思って、またかという気分になる。
食事代が安ければ、それはそれで得した、それ以上払いたくない、みたいなケチな考えになる。ダニーに言われて、なんだか自分の隠れたケチくさ根性が明るみになったような気がして、恥ずかしくなる。
ダニーはウェイトレスに極上のリップサービス。
でも、コーヒーとスープの注文だけで、結構待ったけどなあ。
日本のサービスに慣れきった私によぎった、またケチな感想をよそに、ダニーはそこまで言う?というくらい、君はすばらしいと、ウェイトレスを褒めまくっている。
支払いの時の私とダニーのチップとスープとコーヒー代を合わせた金額は、ウエイトレスも「多いわ」と言っていた。
でもそこはダニー、極上のリップサービス上乗せで返していた。レジをしながら、ウェイトレスも笑って照れている。
お店のスタッフと交流を大事にして、それを楽しむ、それがダニー流らしかった。
そして、ダニーもきっと、私以上に独特の雰囲気にとても気を遣っていたに違いなかった。
夕陽を背にした堂々たる佇まいのナバホ族の親子と思われる強い眼差しの姿に、このナバホネイションの土地で代々生活してきた、彼らの気概とプライドのようなものを感じたような気がした。