①思いがけない便りまだ私が新聞記者だった3年ほど前の話。記者時代には、恐ろしい事も色々と経験した。 殺人事件の取材や、夜な夜なかかってくる無言電話、身の危険を感じた水害現場の取材などなど。 だが、これらを差し置いて、ぶっちぎりで一番恐ろしかったのが、 「自宅に突然、訴状が届く」という出来事だった。 仕事柄、真っ先によぎるのは自分が執筆してきた記事のことだ。「名誉毀損」に当たるような表現を書いていないか。事実誤認があったのではないか。 だが、思い当たるフシはない。恐る恐
県営住宅の一室。こんもりと積もった人糞を紙袋に詰めていく。 防毒マスク(※注 業界では「面体マスク」「めんたい」と呼ぶ)を突き抜ける臭気が、涙腺を刺激する。全身を覆う防護服は体温を密閉し、噴き出る汗を逃さない。 クサい、暑い、クサすぎる、、、。 つい1ヶ月半前まで首相官邸にいた俺が、一体何をしているんだろう。 ”総理番”の記者自分が勤めていた新聞社では、東京で新人記者研修(2ヶ月)→各都道府県への地方配属(5年半)→本社配属(その後ずっと)というコースで、記者人生が流れ